『あの日の心をとらえて』 視聴フル
ひさしぶりに1シーズンを書き散らそうと、2019年秋アニメ一覧を見て思うところがあります。もはや4,5年前に推していた京アニ、シャフト、そしてトリガーも劇場版寄りになり、UHFのシーンからはやや距離を置き、作風が方向を変えるかしており、WITやBONESといった野心的なスタジオも手堅い原作を取り扱っているな、と感じています。
加えてUHFアニメゆえの、ほとんど偶発的なミックスだけでできてる作品を観ることが少なくなりましたね。『ローリング☆ガールズ』みたいな作品がなかなか出てこないよな、と。
UHFがクリエイティブなシーンではそんなになくなってきてるのかも、と感じる中、サンライズ製作の『あの日の心をとらえて』を観ていると、いよいよこっち側にウェイトは移行しているんじゃないか、と思えます。
退屈な日常にある未来
『センコロール コネクト』の宇木敦哉さんがキャラクター原案、『ラブライブ!』や『宝石の国』の京極尚彦さんが監督というのはなかなか思うところありますよ。宇木さんの作風もあり、関わる作品は少し距離を作っていることが多いです。
『宝石の国』の作者である、漫画家の市川春子さんとおなじ研究室にいたという経歴も見逃せないですね。キャラクターやケレン味を信じていなくて、そしてがちがちなリアル描写の持つリミットもわかっているからあえてシンプルに描いてきたあたり、ふたりは近い気がします。個人作品から『デジモンアドベンチャー』のキャラデザなど、彼の関わるアニメはもうひとつ引いた位置から世界観を構築する傾向があると思います。
その引いた位置がどんな効果をもたらすか?それは非日常をさも当たり前の、退屈な日常に描いて見せることではないかと。ここに日野自動車のFlatFormerという自動車が日常に浸透した世界を、ささやかなボーイミーツガールに載せて描いています。
近未来の車を大それたものとして描くこともないし、未来技術を退屈な日常の一部として描くことがぼくには良かった。観た人も、あまりにさらりと自動車が登場するため、どこをPRしているかすぐにはわからないのではないでしょうか。これを京極監督がまとめているのも凄い話で、なんだかんだで彼がラブライブをやってた功績は大きかったんだなあとしみじみしました。
広告アニメからさらなる展開はあるのか
さらには内田真礼と内田雄馬の姉弟が主人公たちを演じているみたいなフックも含めて、相当におもしろさが含まれた作品になっていることは確かですよ。
思えば広告アニメでは新海誠さんからスタジオコロリドまで、野心的な作家が牙を研いでいる過程がじっくりと見れるもので、ここのところは特にその傾向が強まっているフィールドなのではないかと思います。
日清CMから日野自動車、渋谷の街頭広告に至るまで、今年はぴりぴりとクリエイティブを研いでいる感じがあるのは広告方面ですね。劇場版の多くが映画を目指すゆえの、ある種のつまらなさ(絶対的に具体的にせねばならず、抽象やコンセプチュアルが入る隙がないような)があるのに対し、広告は比較的そうでもないアプローチが可能なのでは、と思います。『あの日の心をとらえて』みたいな作品が出ているわけで、確かだといっていいかもしれません。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。