17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

これアニメ化しないんだ?#1『初恋ゾンビ』

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新カテゴリー「これアニメ化しないんだ?」です。コンセプトはそのまんま。ライティング業の気晴らしで読んだマンガや本で「原作が枯渇していると噂されているのに、この作品が企画に上ることはないんだな」と思ったタイトルを取り上げる書き散らしです。

一発目は週刊少年サンデーで連載され、最近完結した峰浪りょうさんの『初恋ゾンビ』です。

おもしろいアニメートに向いたラブコメディ

初恋ゾンビ』は萌えもデザインも良いことに加えて、なによりもアニメートさせるのにすごくいい設定や絵柄だと思うんですよ。

中学生の主人公があるときから、自分が幼い時、初めて恋した女の子の幻覚が見えるようになる、それだけではなく、同じ男性が初恋した女の子の幻覚まで見えるようになります。

その幻覚は男性の欲望に合わせた姿をしており、さらに女の子本人の人格とは別の、幻覚自身の人格を持っています。主人公は、幻覚を「初恋ゾンビ」と名付けました。自分の初恋の人は一体どうなったのか?現実の初恋の人は、なんと男性であることがわかるのでした。いったい主人公の恋はどうなる? そしてこの幻覚はどうなる?

この「初恋の幻覚が男性の欲望で出来ていて、しかも可変する」設定自体が、ある意味ではアニメートで物語を進めるのに合ってると思われます。ゾンビの設定も、すべてが可愛い女の子じゃないのも なので、アニメートに自信のあるスタジオであれば、生き生きと動かせると考えております。

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ぼくが想像したのはWIT STUDIOBONESのように、商業ラインの中でアニメートを追えるところであったり、現Pie in the sky所属のアニメーター、植草航さんのアニメ―ションです。キャラクターのフォーマットを描きながらも、アニメートの可能性を追うことができるスタジオやクリエイターが関わったものが、本作には合うのではないでしょうか。『ゾンビランドサガ』のMAPPAみたいなのがよいのかもしれません。

作者・峰浪りょうさんの冷めた目線

さらにさかのぼって、作者の峰浪りょうさんの作風が「萌えやエロの見た目を良いと思いながら、本質的にはその欲望に対して冷たく見つめている」間合いがあるとおもいます。

かつてウェブ上の青年マンガで連載していた『ヒメゴト。』では、その欲望について冷たい目線に満ちています。男性のふりをした女性、19歳を過ぎた女子がわざと制服を着て、中学生のふりをして売春をするなど、描いているモチーフ自体はどこか共通している。『初恋ゾンビ』も萌えやエロで溢れながら、要所で欲望に冷めたシーンがありますからね。というより、『初恋ゾンビ』というタイトル自体がそうかもしれません。

こうした青年マンガと少年マンガでもあまり境目なく描き、ポップでありながらどこかで間合いを置くことや、さらに男性や女性の境界とか踏み越えたコメディとか、ある種、高橋留美子に近しい才覚があるのではないでしょうか。

ぼくがなんとなく、『初恋ゾンビ』がアニメートに向いたと考えるのは、設定だけではなくて、原作のキャラクターや萌えやエロに耽溺しすぎない距離感もあります。日本の商業アニメって、本当はアニメートはそこまで期待されておらず、アニメートを作りたいところって、商業アニメの欲望と少し距離があったりするんですよね。 

また忘れるためにアニメが用意されます。培った技術とモードから見定めて、次回にお会いしましょう。

 参考:峰浪りょうさんインタビュー