電通がアニメをマーケティングとしてどのように見ているか?という記事を挙げてます。「京騒戯画」、「血界戦線」の松本理恵の最新作が広告アニメーションだというのを振り返ると腑に落ちる記事ですね。
ここの書き散らしでやり始めた、広告アニメーションの世界というのは年々存在感を増しているように感じます。そこで電通が関わるというのはちょっとどうかなーと感じなくもないです。
だけどよく考えてみると、たいていの商業アニメーションは昔から広告的なものじゃないのか?メディアミックスやタイアップといった絡み方を見ても。と思いもしますね。
電通まで参入し、本格的に拡大するであろう広告アニメーションの世界
電通は今年10月に「Dentsu Japanimation Studio(DJS)」を 設立を発表しました。サンライズといった大手はともかくとして、MAPPAやコロリドといったスタジオと連携しているのが面白いですね。「広告を作るのではなく、作品を創ることにこだわる」と語っているのはそれなりに本気なのでしょう。
以前からガイナックスが国産車の広告アニメーションを制作していましたが、近年は活発化している気がします。日清のアオハルかよシリーズからマルイのOLシリーズなどなど、すでにTVで放映されるレベルで広く実践されています。そこでインターネットでの話題を狙う広告のアニメーションとして、松本理恵監督が出てくるというのは興味深いですよね。
松本理恵『ベイビーアイラブユーだぜ』はそんな構成の下で、まさに監督の表現力が凝縮されております。商業アニメーションの十八番であるバンクシステム等を利用した、シークエンスやアニメートの繰り返しによる妙味は『ビューティフルドリーマー』や細田『時をかける少女』から、進歩したものを見せているともいえるでしょう。
それは少年が何度も繰り返し通う、お店の壁に掛けられた看板の変化や、ロッテのお菓子をモデルにしたキャラクターたちが溢れるシークエンスが続いた末に、後半に現れる校舎の屋上で彼らが集合する。そして広告が並ぶ道端でのラストシーンに繋げるまで、繰り返し、重ねていくという。
このあたりのドラマチックさとロッテ広告仕事を両立させつつ、やっぱりお菓子もどこかで繰り返し買うもんですから繰り返しによる変化や積み重ねがあるよねっていう感じを作れているのがよかったです。キャラとストーリー中心である業界のひとによる、尺が短い中でこそできる抽象的な部分も踏んだ一作になっているといえるでしょう。
ビジネスモデルの違いから、逆に新たな可能性を見出す
こんなふうに3分だろうがやれる人はやれてるわけですし、シャフトも池袋PRアニメーションに着手することが発表されていますし、いよいよ広告アニメーションというフィールドでもそれなりのことが起きているのか?とは思いますよ。
というわけで商業アニメーションを取り巻く背景は、ちょっと変わりつつあるようです。とりあえずここの書き散らしとしては広告アニメのビジネスモデルどうこうは置いておきます。
まずは「商業アニメのモードの変化を見る」ってことでやっておりますし、ビジネスモデルが違うことによる構成の変化ってバカにならないくらい大きいものというのは書き残しておきたいですね。
尺が3分、ときにはシリーズ化してキャラとシナリオを推すという構成は必然的にビジュアルでストーリーを伝えることに特化するかたちになります。そして特定の客層によるシェアを狙いながら、同時に広い客層につなげようとすることは、ある意味で硬直化していた客層から少し解き放たれる効果もあると思います。
それを高いクリエイティビティを持つスタジオが担当していくことは大きいのではないでしょうか。そして3~5分しか見ずに語るここのブログに、書き散らしをやるにも適したフォーマットなのでよいです。ワンクール見る才能のないやつがなんかいってるとか言われることもないでしょうし。
広告アニメーションという試みが日本アニメ(-ター)見本市のような試みと合致したり、アート短編アニメーションと絡んでいくと本当にすごいことになるなとも思うので、DJSさんいかがでしょうか。観たアニメは忘れましょう。でも培ったプロモーションとデザインはそのままに、来年にお会いしましょう。*1
*1:あとはDJSが「アニメ業界で制作会社にお金が落ちない」という問題を解決するようなことがあったとしたらすごいんですけど、そのあたりは専門外なので詳しい方、よろしくお願いします。