91Days 視聴フル
またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。
「デュラララ!」の制作で有名な朱夏のオリジナルアニメーション。一見女性客向けの耽美な作品かよとか思ってましたが、なんとアメリカ禁酒法時代が舞台。
アニメーションの文法や文脈をいじり直すとか、上のレイヤーからメタに捉え直すというタイプのデザインではなく、実写映画のように構成し、ドラマの設定やリアリティを生かすように作り上げるタイプです。「甘々と稲妻」と同じくくそまじめ系ですね。ひどい言い回しですね。
そんな旧来の実写系のリアリズムで演出構成された本作ですが、なんと意外にも海外ドラマを見ているかのような ふつうこういうのって前に書き散らしたみたいなおしゃれバカアニメになりそうなところなんですが、そうではありません。
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構成の巧みさがもしかしたらそう思わせなかったのかもしれません。特に感心したのは冒頭のろうそくを指で消すというシークエンスから、何度も火をつける・消すというシークエンスを繰り返した果てに、最後の銃撃戦シークエンスで爆炎をあげるのに繋げていたことです。
朱夏がなぜオリジナルアニメーションで丹念に禁酒法時代を描くんだろう?誰を相手に考えてるんだろうと思いましたが、ここはマジでアメリカの客を取りに行ったということでしょうか。マーティン・スコセッシのプロデュースによる禁酒法時代のドラマ「ボードウォーク・エンパイア」をも思わせる海外ドラマ的な構成や脚本の緻密さに日本のアニメっぽいケレン味あるキャラクターデザインが混ざり合った、かなり質の高い1話となっています。
よく考えたら朱夏が地味ながら質の高いマフィアねたを作ったのも伏線があったのかもしれません、なにせ「デュラララ!」の時点でもどこかですっころび陳腐になりかねないところを、ライトノベルできっちりノワールをやるというのを実行していたのですから。
こんな実写作品演出系のくそまじめ系な作りのアニメですが、意外に商業アニメーションで見ないのはその暴力描写です。特に音がよい。ゴア系ではなく、先にあげたスコセッシ作品の「グッドフェローズ」とか、最近なら「ブラック・スキャンダル」に出てきたみたいな冷たい路上の暴力ですね。その銃声の音から殴打の音はなかなか聴けないそれじゃないでしょうか。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。
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