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葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

意外に異色な『鬼平』。アニメで劇画の禍々しさを蘇らせる

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鬼平 視聴フル

 

 またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 いまのデザインの観点での劇画の適切なアニメ化ではないでしょうか。トレーラーの段階では実写的な方向を追いながらも綿密ではなく、完成形のところでマンガ・アニメ的なお約束の画風や表現で妥協するような半端なリアリティラインの出来を予測していたんですが、いい意味で裏切られる出来でした。

 

 

 人物のデザインややアニメート自体はそこまで泥臭いやつじゃないんですけど、背景美術や色彩設計がけっこう異様なんですよ。ガンガンにグラデーションのかかるフィルターを重ねるし、各シーンごとに全然色彩設計も変わる。登場人物や状況をに合わせて画面が大きく変わる過剰さと、フィルターを多用することで生まれる淡い映像があわさるデザインから生まれる実感はまさに、往年の劇画のもつ過剰さと叙情的な感覚が合わさった感覚を、現代に再解釈した映像ではないでしょうか。

 

teenssexandwarmode.hatenablog.com

 

 ハードな暴力描写・残虐描写の出し入れもちょっと「妖獣都市」とか「獣兵衛忍風帳」の川尻義昭作品的なあけすけな感じもあります。アニメによる劇画の過剰を感じるのは、これも込みだからかもしれません。

劇画のリミックスは貴重

 いま劇画ってなかなか再解釈やリミックスが成されない分野なんで、ある意味貴重な映像作品なんで一回観る意味がある作品になってると思います。やっぱ深夜TVアニメというフィールドほど、ある意味でリミックスや再解釈の手腕が大きいところはないんですよ。ざっくり劇場版長編・短編作品・アートアニメーションを広く観た実感として。劇画という区分が漫画ゴラクさいとうたかをのテリトリーで放置されていたものを、現代のアニメのデザインでいままた再解釈したとしたら・リミックスしたとしたらという、時計の針を思いっきり進めたかたちになってると思います。それは『ルパン三世』を見た感じにも近いと言いますか。

 

 それにしても方法論を現代的にスライドできなかったことで、古臭いままになってるジャンルやタイトルっていろいろありますね。なんとか時計の針を進めようとしてそれが間違ってるものの最たるものは、あのーなんでも美少女萌え化するってやつですね。マジンガーとか。キン肉マンとか。あれ音楽のリミックスでいったらなんでもトランスにすればそれなりに今っぽいでしょみたいな最も質の低い類なわけです。

 

 でもふつうにその手法はいまだに続いているわけですから、「鬼平」も意味不明な美少女化されて萌えリミックスされ、すぐ忘れ去られるという可能性もあったかもしれません。それを考えると、かなり誠実なリミックスだとおもうんですよ。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)

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