17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

『タイガーマスクW』 あーっこの平成のデルフィン時代にこそトリガーがリミックスしてたらなあ…

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タイガーマスクW いまさら1話 視聴フル

 

 またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 

 劇場用アニメーションが豊饒な一方、深夜アニメの界隈は飛びぬけたものは今年に限ってはないような気がします。というか、ぼくが今のところ位としてもっとも客筋やたぶんクリエイティブにおいても太いところにあるアイドルネタを観てないだけかもしれませんが…まあそろそろ行くと思います。

 さて、そんな中の『タイガーマスクW』です。昭和の梶原一騎のあのテンションを、今再生させることは相当のリミックス能力が必要とされます。では東映アニメーションはどのようにしているんでしょうか?

 

 キャラの描線がコンテをそのまま描きつけたような粗さを残したもの、というのはオリジナルのタイガーマスクがそうだったのにのっとる形で、今回のアニメ版もデザインされています。しかし、なぜか全体的にダイナミックさに脚本も演出もアニメートも欠ける。もったいねえな…とも。

 

 昭和の漫画原作アニメ特有のダイナミックさって、少量の作画枚数と描き飛ばしみたいなところから生まれてたところってあると思うんですよ。出崎演出とかその最たるものではないかなと思っています。

 

 今、オリジナルのそれを見る場合、「ダサくて荒いだけのもの」とみるか、「ヤバいこれ、今の基準から外れまくっててクールじゃねえの」とみるかでリミックスの自力に差が現れます。前者があんまりわかってない東映アニメーションで、後者が『キルラキル』などで過去のそうした粗さをリミックスしなおしているトリガーです。

 

 見てて「ああこれをトリガーがやっていたらな」と思うことしきりでした。ぼくはローリングソバットを放った瞬間「ここ一枚絵になるタイミングだな!来るぞ来るぞ!…あれ?来ないのかよ!」となってしまいましたもん。そのほか、なんかテンポがグダグダしてますし。

 

タイガーマスクW』の真の目的とは

 

 しかしアニメ単体で見てもしょうのないことかもしれませんね。今回の『タイガーマスクW』は、近年新日本プロレスに関わり、活躍めざましいブシロードの仕掛けが特にデカいです。どちらかというとメインはアニメの内容の充実というより、往年の梶原漫画自体が漫画と現実の格闘技のリングをリンクさせるという試みを行っていたことそれ自体をブシロードがリミックスしようとしているのだと思います。

 

 当初からGWM(グローバルレスリンモノポリーレスリングの独占)って、WWE(アメリカ最大のプロレス団体。ショーとエンタメに徹することで現代型のプロレスを構築)の当てつけですもんね。ブシロードは社長の発言を読んでいてもWWEへの対抗心ってはんぱないんです

kakutolog.cocolog-nifty.com

 日本一のプロレスブログ・カクトウログさんのエントリではこのあたりのプロレスとアニメのリンクに関して詳しくつづっています。要は、往年の梶原漫画的な展開をアイマスとかラブライブで描かれるキャラクターやストーリーが現実の声優のライブとリンクしていく、みたいな流れとしてリミックスするのが目的であると考えられます。が、今この時代、アニメのほうの出来が突出していないとリンクによる虚実皮膜効果ってそんなでないとこあるんですよね…

 

 まったくささいなことですが、当初GWMに対抗する日本代表のレスラーとして選ばれた三笠というキャラは、現実のプロレスにおける「ずっとエース的な期待をかけられるけどブレイクスルーしきれない30代くらいの、ノアや全日本あたりの選手」をシミュレートしたキャラとして登場から撤退まで完璧。完璧すぎて、哀しくなりました。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

タイガーマスク DVD-COLLECTION VOL.4<完>

タイガーマスク DVD-COLLECTION VOL.4<完>