17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

誰も得しない、今期最高クラスで出来のいいアイドルアニメ『アイドルメモリーズ』

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 またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 

 ソーシャルゲームマネーパワーは半端ねえ…正直言って、質に難がある今期の中でもコンテや演出のテンポのよさ、露悪的なアイドルキャラアニメキャラっぷりをうまいことまとめ上げる色調、そしてきびきび動くアニメートのタイミングのよさが際立ちます。ラブライブの後追いやらプロデュースは中国からとか背景美術がデカすぎとかそういった前情報を抜きにしてみてみると、正直出来はいい。

 

 しかし、ひとはそういう質的な高さはそんなに大事だと感じない。前情報として、感情移入できる脚本やキャラクター構築のほうがなによりデカい。『ラブライブ』のアニメートって、正直な話『アイドルメモリーズ』よりふつうに劣っているんです。だけど、アニメを見てて消費していく上では絶対ラブライブのほうがいいんですよね。実力派の無名シンガーのよくわかんない技術よりもなんだかんだでみんな苦労したエピソード持ちなアイドルが好きだよね~って永野のラッセンネタのように思うのでした。

 

 しかしアイドルネタあたりは京アニやシャフト、トリガー、WITのようなデザイン水準の高いスタジオが作るわけではないぶん、特に客層を見つめたトレンドの動向からデザインを調整しなおしていくことそのものが面白いとぼくは思ってるんですけども、その意味では『アイドルネタメモリーズ』はそんなに時勢は読んでない感じありますね。基本のキャラデザインのクドさ、2000年代初頭っぽいとこに日曜朝子供向けのデザインがあいまいに混ざるという、この点において出来の悪いラブライブに見えます。

 

 出来の悪いラブライブ感というのは番組構成もあって、ニコニコで見てるんですけど半分で本編が終わり、残り半分で主演声優さんがトークをするという無茶な虚実皮膜な演出です。あくまで声優さんの楽屋はアニメのサブだからこそ映えるだろうに、むりやり詰めすぎだろ!

 

 このあたりの展開のしかた、誰もがおもう「ラブライブの出来の悪い2番煎じ」なんですが、冒頭で言ったように基本的なデザインの良さや作画のよさ、アニメートのタイミングの良さはほんとアイドルネタ、それどころか絵的なクオリティで評価されてるだろう『終末のイゼッタ』よりも見どころが皮肉にも高いのです。

 

 まいりましたね。テンポやタイミング込みで作画を評価する一群が、本作をアイドルとかジャンルとか脚本やキャラクターとか全く無視し、純粋な作画評価とかしてるなんてことがあれば本作も救われるのかな…実際、1話でのロボットアニメ的アニメートからラストのセルルック3DCGによるダンスにいたるまで、現行の日本商業アニメの面白みが15分の中に凝縮しており、ちょっとだけ『ローリングガールズ』的な無意味を突き抜ける意味のあるアニメ(なんだそれ)になっております。でもこの質の高さ、誰も得しないんですよ。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。