また一つ現れました。瞬間的に熱し忘れ去られるために生まれ、次の瞬間に繋げるための礎です!…とはエヴァンゲリオンをなりませんでした。あそこまで監督本人のパーソナルにも注目が集まったにも関わらず監督本人の作家性という面からキャリアが継続していったわけでもなく、日本におけるアニメや実写、特撮の関係みたいなところも自意識とともに横断した作家性を評価してるのはぼくのような少数派にとどまってます。
場合に寄っちゃスイスに移り住んで映画という定義を問い壊し続ける映画を作り続け、ハイソな映画祭とか信者に支えられる作家的な監督になってもおかしくなかったと思うんですが、結局エヴァンゲリオンというコンテンツに引っ張られ続けるのは果たして幸福でしょうか不幸でしょうか?結局監督はこんなことになってしまいましたし…
そういう状況をどうかと思うのは嫌がらせ書き散らし派のぼくだけではないのではないか?と思わすのがこの見本市企画にて2作目を投入した前田真宏作品「Kanón」です。
原作にカレル・チャペックの戯曲とついており、すべてのクリエイターが抱える矛盾や苦しみを描くテーマであるといいますが、これをスタジオカラーの企画でやることはどうしたって先述のエヴァに関して当て書きのようにしか見えないわけです。
聖書ネタを使ってる…明朝体タイポグラフィを存分に使用してる…などなどいちいちビリビリくるわけですが、根本のあらすじがどうしてもエヴァの現在までの成り行きの皮肉みたい見えます。アダムが世界を一度壊し、もう一度作り変えるんですが、新たに作った男も女も言うことを聞かない。ならば自分のコピーを作るんですがやがて高速でコピーがコピーを増殖していき、コピーの王国と戦争が起こりオリジナルのアダムがコピー達に追いやられる…という。
本作の公開は3月半ばであり、先の庵野秀明の「シン・エヴァンゲリオン」の進捗に関する一文が公開されたのが4月1日*1。その後にぼくが本作を観たせいかどうしても作中のアダムが一度世界をぶっこわし新たに何か生み出そうとするも思い通りにならず、そしてコピーを量産するも逆にオリジナルが苦しむという過程は庵野秀明にダブります。
前田真宏は今回の見本市企画ではトップクラスに生き生きとした短編を作っていると思いますが、庵野秀明とエヴァンゲリオンの現状とも照らし合わせるとこの短編の皮肉さ、いや愛の部分といいますか、それらがハーフになっている感じが凝縮されている気がします。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。
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*1:誰もがエイプリルフールとおもったでしょうが最近「ウソだろ?」と思わせる深刻な本当のことを織り交ぜる奴が多くなってきてる気がします。