17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

今季のハードコア根性絵柄枠…『バキ』、『トネガワ』、そして『はねバド!』

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はねバド! 視聴12分

板垣恵介福本伸行というジャンルが違えど並べて語られることも多い原作アニメ。一見そこに並ぶような作品はないように思える。ところがよく見ると実質的に同じ枠。それが『はねバド!』アニメ版です。

原作の『はねバド!』は当初は4文字タイトル萌えっぽい、ゆるい印象だったのが連載の中で作風がハードに変化していきました。それがなかなか極端だったのかたまにネタとして連載開始時と現在を比較したりするのを見かけます。

 

ではアニメ版はどんな解釈でやっているのでしょうか? もちろん作品の軸が固まったであろうハード期からなんでしょうが、あまりにも萌え期からハード期への差が大きかったのがあったのか、視聴の質感がほぼ『バキ』です。

 

 おそらくは実写のバドミントンの動きを参照したと思わしき、重たいアニメートで対戦を描くという絵面、全体を覆う影とその質感は死刑囚スペックが警官を殴り倒すのとほとんど変わりありません。ライデンフィルムは『はねバド!』をバキやカイジのような、キャラクターがあちらの方向に行くものだとして解釈しているのだなーと感じました。萌えキャラフォームに、ほぼロトスコープみたいな質感さえある、肉体の量感があるバドミントンのアニメートの不気味な落差を『はねバド!』の連載での作風の変遷と重ね合わせてもいいのかもしれません、

しかしです。描線を太目にして原作の描線の勢いを映像翻訳することや、ハード作風だから全体的に暗いグレートーンで影を落とした絵作りというのは、ほんとは『はねバド!』は避けたほうがよかったのにな、とも思ってます。マッドハウス福本伸行の絵柄を再解釈した『カイジ』とか、WET STUDIOが諌山創『進撃の巨人』を再解釈したアニメ版がそれで、ハード作風はそうした流れを思わせなくもないけど『はねバド!』原作ってけっこう萌えもハードも揺れてるとこありますよね。

 

 『はねバド!』原作ともたまに比較が見られる『ピンポン』もアニメ化されてますけど、あれは基本パステルカラーであんまり重い色を使ってないんですよ。なので『はねバド!』は萌え出自らしいパステル調ベースで、影に黒をそのまま乗せるみたいに色が濁るデザインは避けて作ったほうがいいのにな、とも思いました。パステルだけどハードコアってできると思いますからね。重たい量感よりも作画枚数をある程度限定して、きびきびしたアニメートだけど、印象は重いものがある、というほうがいいかなとも思います。

この辺の原作のリミックスとしてのアニメ化に関して、本当に監督や各制作スタジオごとに歴然とした差があります。抜けてるのが京アニやWET、シャフト、BONES(『ひそねとまそたん』はかなり素晴らしい、またあとで書きます)、マッドハウス。リミックスに好き嫌いが分かれるとはいえ原作から何らかの可能性を引き出そうとするスタイルがある。

ハードコア根性絵柄は商業アニメの中でもその実、デザインが安易なとこあるのでもったいない気もします。観たアニメは忘れましょう。そして培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。