URAHARA 視聴フル
アニメーションとは劇場版の長編やTVアニメだけではありません。アニメーションという表現を極限まで突き詰めた分野として、短編のアートアニメーションがあります。ですが、この二つの間はあまりにも隔たりがあります。けいおん!にハマって壁じゅうをあずにゃんのポスターで埋め尽くすファンが、同じようにドン・ハーツフェルト(現在非常に評価の高いアメリカ人作家)に熱狂している現実というのは想像しにくいです。こういうとき英語圏ではうまいこと区切りますよね。animationといえば全体のジャンルを意味してるけど、日本式のスタイルはANIMEて分けますから。
ところが、隔たった二つの境界線に立つような作品が現れました。しかもその監督を務めるのは、なんとアートアニメーションニュースサイトtampen.jpの編集長でもある、短編アニメーション作家である久保亜美香なのです。
tampen.jpは本ブログもリンクさせていただいており、長らくチェックしていたのですが今年に入って更新数が低下、月ごとのお知らせになっていたのでなにごとかなと思っていたのですが、あれは今回の『URAHARA』に参加していたからだったんですね。
久保亜美香監督の短編アニメーション仕事。番組のOPアニメなどを主に手掛ける形。手描きのアセットを使い、グラフィックデザイン的にまとめる作風。
そんな短編アニメーション作家がTVアニメの監督を務める「URAHARA」はどんなアプローチなのか?アート短編とTV長編の境界線というのは当ブログでもたびたびネタにしてきたことで、『ノーゲーム・ノーライフ』『プリンス・オブ・ストライド』のいしづかあきこ監督が短編作家から商業の長編に向かうキャリアから、水江未来がたとえば虐殺器官アニメ版にうっかりかかわったりするとかないかなーとかこれまでもちょくちょく書いてましたよ。
その境界線を踏み越えるという意味では「URAHARA」は極大の作品ですよ。それがいったいどんな風なのかというと…あのー、何名か言及しているとおもいますけど、これ『京騒戯画』系、そして『ローリング☆ガールズ』、『フリクリ』系です。
良くも悪くもこう来るか~と感じました。アカデミシャンやら能力高い作家が、ジャパンカルチャーやポップアイコンを俯瞰して見つめて、引用して再構築するってやつ。原宿を舞台にして、一見日常風アニメに見せかけつつ、最終的に魔法少女アニメに着地させるという構成とかそのまんまのスタンスですもん。
というか、作中でちょっと本作のコンセプトを直接言っちゃってるんじゃないのこれ?ってのもでてるんですよ。「襲来する宇宙人がオリジナルのものがないから盗んでいっている」みたいなのって、まんま日本のカルチャーのやり口でよく言われるやつじゃないですか。
ただやっぱり、変な言い方なんですけどちょっとフィジカルが弱い印象ありますね。フィジカルってなんじゃそりゃって話ですけども、要はちょっと商業アニメ側のアニメートやタイミングをアート短編側がまだ熟知してない感じがあるんです。『ローリングガールズ』は国内でも強力な作画力のあるWIT STUDIOですし、『京騒戯画』は東映アニメーションですよね。そんで初代の『フリクリ』もGAINAXです。かなりANIMEの境界線ギリギリのところを狙ってるだろう作品なんですけど、 *1
なのでコマーシャル寄りの短編アニメーション作家の作ったTVアニメということで、村上カイカイキキ『2HP』に近いかもしれません。やっぱりアカデミシャンがポップカルチャーを題材にして、意図してネタとして再構築するというのはフィジカルが足らないことが少なくないんですよ。
ANIMEとアニメーション アートとサブカルチャー
ちょっと話を突っ走りますよ。ここから読みづらくなります。ここがマジで難しい所で、ぼくも現代の表現の前線にあるのがどっかしら粗悪なサブカルチャーをサンプリング&リミックスするのを基調にすることだとは理解してるんです。しかし、アカデミシャンのやる方法論が正しくても、たとえば表現の本質のみで斬りあう舞台であるアートを舞台にアートのみでやるのはぶっちゃけサブカルチャーをネタにするまででOKです。が、アカデミシャンがアートの場ではなく、本当にサブカルチャーの枠内でやるとして、フィジカルが足りなすぎる場合、ちょっと質が悪く見えるのでむずいですね。いや「(商業アニメ的で一元的に)面白くする、気持ちよくする」ということをあえて放棄する作りもアート側の仕掛けとして大いに結構ですけど、それ用のフィジカルがないと、意図して面白くしないとか気持ちよくさせないとかできないですよ。
例えるとプロレス(ANIME、サブカルチャー全般)とその他格闘技(アート、アカデミズム)の関係といいますか…プロレスがいくら格闘技としては非本質のものとは言っても、本職の格闘家がプロレスをフルタイムやるのはやはりそれ用のフィジカルがないとコンセプトが面白くても観てて盛り上がるかというと難しいですよ。プロレスを理解したうえで、格闘技側のざらついた部分を出す、といいますか。
思ってるよりもサブカルチャー側に培われている技術とモードの蓄積は厚い。アカデミシャンが非本質のサブカルチャーを舞台にする場合、本質を突くふるまいをする場合どれだけサブカルチャー側のルールで動けるようになったうえで、なお崩していくか?というのはあると思います。でないと、稚拙なサブカルチャー作品に収まってしまいます。これはもうコンセプトをわからない客が悪いとかそういう次元じゃないですよ。
どうあれ、アニメーションとANIMEの境界例としか言えない奇妙なTV長編にあらたなラインナップが加わりました。『ロリガ』『京騒戯画』『フリクリ』それから『URAHARA』とうまくまとまれば同人誌とか本にでもまとめたいと思います。観たアニメは忘れましょう。それから培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。
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*1:ちなみにフリップフラッパーズもこれらのラインっぽい作品で、意外にも少なくないひとが評価してたんですけどまだあれは作画一辺倒のわかりやすさ、キャラ立ちのわかりやすさがあったから食いやすかったのではないか、と思ってます。