今回は秋アニメ隠し問題作です。地上波放映はおそらくされていない作品なんですが、意外にみんな観ているであろうあの作品です。
そうAC部のアニメです。確かな画力とデザインのバランスより打ち出される、80年代ぽい諧謔まみれキッチュまみれのギャグをぶちまけたアニメーションを制作している、3人のチームです。普段からCMのアニメーションを制作したり、TV番組のカットなんかを担当しているタイプの作家ですね。
美術大学卒でごりごりにキッチュなアプローチっていうと、なんだか漫画家のしりあがり寿を思い出します。キッチュに見えて嫌にクリティカルなところを撃ってくるあたりもとても近かったりします。
未来はヤ○イ 全6シリーズ 視聴フル
未来から来た科学者スパイラル・カミガタによる、様々な方向に分岐した未来を描くCMアニメ。大手スーパー西友がどうして依頼を…というのはどうでもよく、「よくOK出したな」と思ったのは「未来はヤタイ」編。
国民一人一人が屋台持ってる未来なんだけど、そのかわり客はいないってギャグ、皮肉言うつもりじゃなかったのにアゴにパンチ入ってる感じあっていいです。インターネットで個人であっても書籍をkindleで発売、音楽をbandcampなどでリリースなんてできる時代の皮肉だとしたらすごいですけど、裏拳がうっかり急所に入ったか計算して急所を撃ってるのか微妙なところです。
その解決とは、なんと西友が屋台に通う客のロボットを販売。問題は解決した…おいサクラばらまくってかよ!ってオチ、販売業のCMとしていいのでしょうか。さっきのみんながネットで書き散らしイラスト作り散らしをやっている例えを繰り返せば、マジでbotにアクセス数を増加させていたなんて事例は過去にあったのだろうかとか思いました。「未来はヤセイ」「未来はヤバイ」のハイテンションに紛れさせつつ、みぞおちを狙ってきます。
寿司食べたい feat ソイソース 視聴フル
オレンジレンジのソイソースをフィーチャーした楽曲は「昔のディスコの洋楽の歌詞が空耳でこう聴こえた」みたいなネタからネタに走るっての、けっこうやってるわけです。「オシャレ番長」のカツマタ半ズボンみたいなやつね。
そこに乗っかりまくったAC部、よくある回転ずしチェーン店のCMみたいな凄絶なキッチュさを余すことなく表現しております。動画の一枚一枚をわざとデッサンを狂わせまくるの、絵の上手い人特有の崩しかた(ちょっとキュビズムぽいとか言ったりして・笑)なので可笑しいですよ。
脱線しますがオレンジレンジはガチガチ沖縄ヤンキーリア充御用達のバンドでオタクにとってはパクリばかりの消えたバンド、みたいな扱いなんですがよく見ると楽曲製作の中心にいるNAOTOあたりはけっこうオタクやサブカルに受けるような部分ある気すんだけどどうなのかなあ…と思っております。なぜぼくがオレンジレンジ再評価してるのかなんですが。
電気グルーヴから天久聖一みたいな70-80年代アニメ&劇画パロディを基調にってのは90年代ごろにさんっざんやりまくられていて、いまもUHFアニメではダイミダラーとかちらほらあるくらい、あの時代のキッチュさを茶化すのはいまやパロディの安牌になっています。そして当然、笑いが安牌なものほどこの世でつまらないものはないです。
しかしAC部は基本の画力からデザインのレベルがぶっちぎりで高いので、いまや形骸化しまくってる70年代80年代キッチュパロディのフォームの中でもひときわ高いレベルを保っております。
group_inou / THERAPY 視聴フル
それにしてもCMやTV番組でなんと過去にSMAPの番組にも作品を提供していたそうなんですが、「キッチュなパロディ」だけじゃなくけっこうクリティカルなとこ突いている作風なんですがどうなんでしょう。ちょっとイルカネタ使ってるのを見てたら「キッチュなイルカがエアブラシでラッセン風の絵を似顔絵してる」みたいな明らかにクリスチャン・ラッセンのトホホ感・苦笑してる感じをネタにしており、やっぱ悪ふざけやってレベルとは一線を画しております。(作品によってはたしか「風水的に幸運を呼ぶ絵画」のトホホぶりもネタにしていたような。
ナタリー 視聴フル
そんなAC部の作品なんですが、異色なのは「キルラキル」のエンディングテーマでも有名な「さよならポニーテール」のPV。さよポニのメンバーのイラストを使用しながら80年代少女マンガのアニメ化みたいなことやってるんですが、力を鎖で縛られている感というよりも、むしろ綺麗にデザインしている力の強さが感じられるアニメーションになっています。
teenssexandwarmode.hatenablog.com
ビデオゲーム界隈の事になるんですが、さりげなくグラスホッパーマニファクチュア須田剛一作品にも「月極蘭子のいちばん長い日」や日本アニメ(ーター)見本市の「月影のトキオ」に参加しています。須田剛一もAC部もアニメやゲーム、アートやデザインのコンテクストをキッチュにぐちゃぐちゃに…ってところで共鳴しているのだと思います。
この世で最も創英角ポップ体をクールに使えるだろうグループのひとつだと思われ、「なんかキッチュなアニメやイラストが入ってんな…」と感じるCMやTV番組があったなら、その陰には、もしかしたらAC部がいるのかもしれません。観たアニメはわすれましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。
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