サクラクエスト 視聴フル
オタクの定義とはなんでしょうか?少なくともぼくはシンプルに一言こう思っています。❝一般消費者が持っている属性を100倍にしたもの❞以上です。いろいろ定義について語られてきましたが、今現在はそれ以上でも以下でもないと思います。
さて、ふってわいたアニメ・ゲームの聖地巡礼による特需を狙い、地方ではアニメで町おこしを狙うのは漠然としている一般消費者という存在を100倍にして可視化されている存在を狙いたいからに他ならないのでしょうが、ガルパンで成功した茨城県の大洗のようなケースは実際にはまれです。水面下では地獄が広がっているのです。
『サクラクエスト』の木春由乃ちゃんがろくに内定をもらえないなか、ふってわいた仕事が地方から。このメインストーリーは「ああ、これはアニメで町おこし!という水面下の地獄への、入り組んだ皮肉なのかもな」と思わせるのでした。
水面下に広がっている地獄の隠蔽。商業アニメ業界が実際のアニメーターに対してろくな賃金が支払われていていない現状がさまざまなサイドから語られる中、明るいアニメ制作現場を描きながらも随所ではぶすぶすとその匂いを漂わせていた「SHIROBAKO」。お仕事アニメという名目で実際には現実のものにならなさ・しんどさが背景にあるものに続く形が今回の「サクラクエスト」だと思います。
❝主人公キャラとモブで絵柄が違う❞がもたらす残酷な現実
しかしアニメで町おこしネタを取り扱うのはなかなかメタで、辛い構図ですよ。アニメでは「主要キャラとモブのおっさんばあさんたちで、全然絵柄がちがう」というのはほんとうにありがちなんですけど、「SHIROBAKO」に続いてこれがまたいやなメタな効果を出しているんですよね…
地方パートで半端にリアルなデザインのおっさんたちがなんとか町を売りにしようとしてる試みがほんとにどうしようもない代物の中、なんとか現状を打開しようと依頼したのがピンクのショートボブで意味不明な前髪のヘアピン付きアニメ顔美少女。それは現実の地方での町おこしの悲惨さや、付け焼刃でオタクに米やら酒やらをかわせるためにラベルするアニメキャラクターの雑さそのものですよ。
一般消費者ならうすくちに舐めたアプローチでもそれなりに行くかもわからないですが、オタクは一般消費者の持つ100倍の性質を持ちながら2分の1くらいまでに舐めているという地獄。『サクラクエスト』にはそんな枯れた空気がぶすぶすと漏れ出しているのです。よくよく観てみてください。アニメで町おこしを描くことで、現実でアニメをつかって町おこしをすることにまつわるどうしようもなさが重層的にありますから。観たアニメは忘れましょう。それから培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。
サクラクエスト (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
- 作者: 原作:Alexandre S. D. Celibidache,漫画:古日向いろは
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2017/05/12
- メディア: コミック
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