17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

アルジェヴォルン1話&アルドノア2話 ロボット架空戦記がアイドルネタや日常ネタに完敗する単純な理由

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白銀の意思 アルジェヴォルン 第1話「遭遇」 視聴17分 制作:XEBEC

 

 「アルドノア・ゼロ」と並んでロボットネタの架空戦記ラインです。ちょっと気になることがあるのですが、作品の顔となる主人公格の少年少女のデザインに注力して、その他の中年や老人、そしてエキストラになるにつれはそのメインデザインと比較して絵のテイストがぜんぜん違うという現象があります。

 

 これは少女マンガとかによくあるのですが、もともとキャラクター本人のの自意識や世界観にフォーカスする場合は別にいいんです。アイドルネタならみんな男の子女の子のデザインが最重要ですよね。

 

 夏のロボアニメ架空戦記二題はとりあえず2つに分かれた国家が戦争…という構図でそれ自体全然現代ではないのですけど、ぼくがキツいなというのは登場人物のデザイン統一が無いことがです。

 

 これ案外バカになりませんよ。アルジェヴォルンでいきなり萎えるのは軍本部の中年軍人たちが今のアニメで適当に描きがちな三白眼デザインで、しかも現場の苦労を分からない上層部という類型的な描写。架空戦記は現場から上層部、敵対国、戦火に晒される一般人に至るまであらゆる登場人物が並列に存在する状況こそ重要なんですが、いきなりそれを期待させないです。それにしてもなぜこの手のキャラは三白眼に?誰か謎を解明してください。

 

 ガンダムアムロとセイラだけすげえデザインに凝って、あとのブライト以下のキャラは投げやり。ジオンなんかシャアだけ頑張ってあとのキャラは適当で無軌道で粗雑な敵という記号描写。もしもこんなんだったら戦闘メカ・ザブングルの方にサーガが生まれる未来になったかもしれません。Zザブングル。機動武闘伝XザブングルザブングルSEED。

 

 民間人が敵に!ほっとけ任務があるだろ!いやだ!僕は助ける!からのー、主人公がロボに乗る流れ。そこで出てきたのは…今の仮面ライダーとかエヴァンゲリオン系の、人造人間的フォルムのメカです。これはちょっと面白かったです。周りは割とモビルスーツフロムソフトウェア的なメカニックに対して、人造人間系が相対するというデザイン構図。

 

 この巨人系の面白さは技術を持つ主人公が兵器を操るというか、本人自らの無意識的な力の放出みたいに見えるわけで、古くはウルトラマンからエヴァ進撃の巨人にいたるまで巨人的デザインはちょっと兵器という部分と意味がズレていく感じあります。この辺の「兵器vs無意識的な力」というデザイン差異を逆に意識して物語が展開されたなら…でもそんな気遣いができるなら最初から上層部もちゃんと描くよな…

 

アルドノア・ゼロ EP02“地球の一番長い日”―Beyond 視聴16分

 

 これと比較して「アルドノア・ゼロ」の方がいいってのもありますが、あれも志村貴子デザイン起用というのが実はマイナスに働いているのか、主要人物とその他のデザインの乖離あります。っていうか、架空戦記という状況が重要なジャンルのデザインでなぜこうした内面や心理を描くことに注力してきた作家を起用するのでしょう?ハゲ&ヒゲなんて主要人物の11%くらいの力しかデザインの力かけられてないって!そして火星側の三白眼の悪辣キャラが地球を攻撃…

 

 もう老害になってやる!昔の架空戦記の優れたものはそりゃどのデザイナーも老若男女均一に描いたもんだろうし、現場分からない上層部とか無軌道な悪なんてなく登場人物それぞれがそれぞれの状況で最大限できることを競い合う中でドラマが展開されたはずではないか。

 

 じゃあ今そういう老若男女の配分上手くやってるのはどこだよ?って、ざっと見てると新海京アニ(まただよ!もういいよロボネタ叩いて彼らを上げるクズに成り下がってやる!)はじめ日常情景モードが良くやってると思います。そりゃ男のキャラクター出さないようにするとかあるよ、脚本の面で全然だめな描写とか薄ら甘さあるんだよ、でもまだあれらは街や日常を生きる大勢の中の一人というデザインであるし、映像構成という面でもその辺がデカいんだよ。それが架空戦記が日常ものに負けるたったひとつの冴えた理由だよ。弱点は全部少年少女の情感や内面になにもかもが集約されちゃって、人間性の呪いなんてかけらも見えないことだがな!

 

 なあなんで三白眼なんだ?どうでもいいキャラや適当に悪辣で狂気なキャラ三白眼なんなんだ?なあなんでだ?なんであの手のはハハハとか笑い出して煽ることが多いんだ?誰がやり出した?どこで間違った?そこから何が見える?飛べねえ鳥もいる。謎は忘れられないでしょう。でも培った三白眼と謎の笑いはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

 

成田亨画集―ウルトラ怪獣デザイン編

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