17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

「萌え」は今や失敗しないために保険くらいの時代に自爆テロのようなことをやる『競女!!!!!!!!』

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競女!!!!!!!! 視聴とばしながら7ふん

 

 またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 

 町おこしをはじめさまざまなPRキャラクターにアニメキャラやらその界隈のイラストレーターが起用されるようになり、一部のひとが眉をひそめる程度には世間に萌えキャラがばらまかれています。ではさぞかし当のアニメ界隈では萌え、ないしはさらに行き過ぎてエロがあふれているのだろうと見てしまうとこなんですが、全くの逆で萌え系とされる作品の大ヒット作は限定的になってしまってますし、むしろそれ以外の方向をどこも探ってる印象があります。思ってるよりも実際の商業アニメをワンシーズン流し見してると、どちらかというと作品が固くなりすぎない・ドン引きされない保険のようなかんじで萌えキャラやら配置されてるとおもいますね。

 

 そういう意味で『競女!!!!!!!!』は思うとこあるアニメですよ。パッと見、萌えキャラが競泳水着でドンケツやるという、完全な萌えとエロ。ある意味でアニメやオタクネタに疎い向きから見れば、露悪的なくらい目をひそめるイメージで固められてる。しかしこれ実際には萌えのデザインは二世代くらいまえで、そしてその内容はバカ。今作でオナニーすることは困難を極めることは確かです。人類の尊厳にかかわります。

 

 唐突な必殺技で、極端なパースでキャラの描線がぶっとくなるという描写は山田芳裕の代表作の漫画「デカスロン」をおもいだしましたよ。実際にアニメ界隈で露骨なくらいの萌えとエロをぶちかますということは、それはなんの保険もない、まるで自爆テロを起こすかのようななりふりかまわなさを持っているということを痛感できる作品になっていると思います。毎シーズン商業アニメをチェックしているような方なら直感的にわかってると、今作が覇権をとるとか、莫大なBDを売り上げることはない。しかしこの露悪さは評価できる。「ガールズアンドパンツァー」なみのエクスプロイテーション作品になっているとおもわれます。

 

 インターネットポリティカルコレクトネスにきをつけて頑張ってくださいとおもったところで観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

デカスロン 1 (小学館文庫 やB 11)

デカスロン 1 (小学館文庫 やB 11)

 

 

恐怖感か?生々しさか?『侍霊演武:将星乱』

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侍霊演武:将星乱 視聴8分

またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 

 中国漫画を原作にした作品なんですかこれ。繰り返しになりますが前シーズンから中国(関連)作品が続々放映されている状況はみんなどうとらえてるんでしょうか?商業アニメ市場の進歩?それとも外注していた海外諸国の構図が変わった?ちょっとここまでは全くリサーチしておらず、適当ぶっこいておりますのでこのあたりの変化をうまくまとめた記事を読みたいとこですね。

 

 さて国内のスタジオぴえろ制作の『侍霊演武』は中国原作という部分をどう演出してるのかな、というと、画面に強い鉛筆の線のフィルターをかけたり、また白い液体が画面に飛び散るようなポストエフェクトを多用することで対処しています。もともとがそれほど味わいのない、原作漫画を拡張した程度のレイアウトや絵コンテのところを、エフェクトでなんとか独自性のある部分にもっていっている。もとの肉の質がそんなにおいしくないところをソースとかケチャップ漬けにしてなんとか食えるものにしているといいますか…いや中国的な良さ、ってことででべたべたにしている感じといいますか…

 

ユウキ 四川豆板醤 500g

ユウキ 四川豆板醤 500g

 

 

 

 

 観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

くそまじめな実写映画的な座りの悪さを、最後に一気にアニメ的な自由さで解き放つ『終末のイゼッタ』

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終末のイゼッタ 制作・亜細亜堂 視聴フル

 

またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 

えー、”実写の第二次世界大戦を題材にした映画的な方法を最上位におきながらも、実際に実写的な重厚さをアニメでやるにはリソースが限られるので、アニメ絵や日本式のアニメートの範囲内でできる限りやる。”という、くそまじめ系です。すいません。なんか思いつかないので前シーズンの『91Days』や『甘々と稲妻』に続いてこの言い回しで書き散らさせていただきます。えー、敬語のふりして誰も敬っていないですね。

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町内会の運動会に一人ウサイン・ボルトが混じってるくらい、ぶっちぎりのアニメーターが目立つ中国のアニメ『To be Hero』

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To be Hero (凸変英雄) 視聴フル

 

またひとつ…えーっとこの後の口上なんだっけ?(過去の書き散らしを参照する)またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 

中国製アニメーションというのがじょじょに日本で放映されているケースが前のシーズンから目立ってきております。今回の『To be Hero』はOPのコンテの描線が残ったままの生き生きとしたアニメーションが目を引く、カロリーの高いアニメートだ…と期待し、本編が始まった瞬間に作画はべしょべしょですっころんでしまいました。製作スタッフでアートやデザインの統率がとれてねえ!

 

…が、単なるできの悪いアニメとは言い難い魅力が不思議に溢れているのも確かです。作品イメージの統率ができていないだけに、逆に各アニメーターのスキルの差が明確で、一人すごいやつがいるというのがとてもおかしい。イケメンがトイレになぜか引き込まれて流されるシーンの、アニメーターの一人芝居のような激しい描写とかおかしいですもんね。町内会でやる短距離走ウサイン・ボルトが出場してるようなカタルシスあります。

 

 それにしても、前シーズンから中国や台湾作品の放映が目立ってきているのですが、今期は中国制作の作品がいくつか出て切るようです。なんだか中国アニメを専門的に取りあげるすさまじいブログ「ちゃにめ!」さんみたいな世界観に日本のアニメもなっていくのでしょうか。ぼくは大歓迎です。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

 

これは聴覚障がい者やいじめや恋愛の映画ではないよ。答えは水の中『聲の形』感想

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聲の形 監督 山田尚子

 

 知っての通り、10代そこそこの青春がなんの屈折もなく上手くいくことなんて希少ですよ。上手くいった青春ばかりがシネコンでは毎年映画にされるわけなんですけど、大多数の人にとってはそんなのありえないわけですからね。とりわけアニメの書き散らしなんて最悪で暇なことやってる類にいたっては、世間には希少とされる10代という期間の上手くいかなさの代償を膨大な映画や音楽、漫画やらで埋め尽くし、うそくさく上手くいった青春ばかりを描く有名俳優ばかりがでる映画に唾を吐き、一切観なくなるか、挫折や破綻ばかりを暴く呪いに満ちた青春映画に感情移入するようになるのです。

 

 そして挫折や破綻を描く青春映画というのはほんとうに観終わった後とぼとぼ歩きながら家に帰るような体験です。挫折や破綻を美しく描くことは難しい。だが美しく描く可能性がある作品が現れました。それが『聲の形』です。

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女優・杏を美しく映しているアニメーション『百日紅』

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百日紅 監督・原恵一

 ちょっと遅れていまごろ『百日紅』の書き散らしです。WOWOWで放映されていたものを観ました。

 

 正直なところ、アニメートやデザインは『カラフル』のような緊張感に欠けているし、冒頭近くの唐突なロック系のBGMなどはチョイスがめちゃくちゃです。(『カラフル』ではうまくつかってたのに!あまりにも静かな内容ゆえに無理にいれたせいなのか。)プロダクションIG特有の製品感といいますか、技術デモ的なアニメデザインの手つきが、原作の杉浦日向子が描く日常と怪奇の手つきと真逆ゆえに映像化によるマジックがさして起きていないのです。「百日紅が咲くね…」と一言呟いて映される花の美術も、鋭さが足りず書き割りの域を出ていません。

 

 にもかかわらず、ある一点が並外れて驚異的で、目が離せないのです。それはまさかの主人公お栄のデザインとその声を演じた女優・モデルの杏の演技です。これよく言われるような「本業女優の演技は棒読み。ちゃんとした声優つかえよ」とか「棒読み過ぎて目が離せない。怖いもの見たさ」みたいな皮肉じゃないですよ。マジな話で「実写映画のカメラが俳優のある一番の瞬間を写し取ってしまう、リアルタイムのきらめき」の美しさのアニメ版なのです。

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これまでの作品と完全に逆転してるじゃねえか!『君の名は。』感想 

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 興行収入がすごいことになっていますね。シンゴジラと並べて語る向きも多いですが、ぼくは「メジャーな規模で公開するが、監督作品をみてきたオタクからすると大規模でえらいことになると不安になる」という意味で2作を見てました。そして実際に観て不安を抱いていたこと自体がチンケだったな、と思うに至るとこまで同じでした。これまでの監督作品と完全に構造が逆転しており、しかもそれで面白かったからです。

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