17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

今季のアニメーションの1話だけを観て今のモード(形態の流行)を全て決める最悪のアニメレビュー

京アニの『聲の形』とシンクロを果たしているとしか思えないシャフトの『3月のライオン』

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3月のライオン 視聴フル 制作:シャフト

 

 またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。20時更新を保つためついに来ました、シャフトの『3月のライオン』です。

 

 長らく京アニとシャフトを現行の日本の商業アニメ界のツートップとして語ってきており、なににもまして『けいおん!』や『化物語』、『まどかマギカ』の上手く既存ジャンルから2歩先のデザインを為してヒットした作品は、いまだに現れていません。*1

 

 アニメートや演出の方向性も京アニとシャフトは正攻法と邪道と綺麗に対照的となっており、これまではその対照も面白がってみておりました。しかし両者が現状の商業アニメーションから2歩先を行くデザインを続けていく一方、徐々に先述のような大ヒット作は遠ざかります。

 

 前回も書いたように客層や市場の欲望は下に向かうのに対し、クリエイティビティは上層へと向かうわけですからかみ合わなくなるのです。京アニもシャフトもすげえクオリティなのになぜか一部に凋落した、という残酷な評価を下される理由はそこではないかなと思っています。ですが上層を目指し続けた両者が、奇しくもまったく同じテーマのデザインにたどり着いているように見えるのが今回の『3月のライオン』と『聲の形』です。

 

 

teenssexandwarmode.hatenablog.com

 

 両者の共通点は、高校生の主人公がまったく他人や世間との距離の取り方がわからない状態にあることを、まるで水の中にいるみたいだというデザインにすることを徹底している点です。実際、冒頭の零くんが夢から目覚め、朝の支度をはじめるまでに音楽に合わせた日常動作のシークエンスの中に、水が流れていくこと・水面の揺らめきが零くんの顔に反射すること、そしてアクセントのように水泡が上がるカットが差し挟まれるのは、『聲の形』での冒頭での石田が自宅で後始末をして橋から落下して水の中へ入るまで、と似通っていると言えます。

 

 また、どうしようもない挫折感や屈折感を美しく見せるデザインも共通しています。パステルの色彩設計をされたキャラクター、そして水彩画的な背景美術などトータルのデザインも水を意識したものになっております。水の中に素足を晒しているEDもまさにそのままですよね。

 

 羽海野チカ大今良時それぞれの原作は全く違うんですけども、京アニとシャフトがアニメにデザインする際の方向性がこうして一致しているかに見える点が今回はあまりにも面白かったのでした。山田尚子監督が比較的シビアなテーマに向かう際にとったのが水の中にあるかのような演出に対して、シンメトリーのレイアウトや奇想の演出の多い新房監督が今回は可能な限り抑え込み、感情移入しやすい演出に向かうときに水の演出に入ったという点でシンクロを起こしているのです。

 結果、青春の挫折や屈折という露悪的にいくらでもなれるところを、何か美しい感覚に変えているのです。京アニとシャフト、その方向性は対照的でしたが、ここに来てまったく同じテーマでデザインしたシンクロニティは興味深かったのでした。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

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*1:2歩先のデザインをしている作品自体は少なくないが、ヒットに至ってない