17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

女優・杏を美しく映しているアニメーション『百日紅』

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百日紅 監督・原恵一

 ちょっと遅れていまごろ『百日紅』の書き散らしです。WOWOWで放映されていたものを観ました。

 

 正直なところ、アニメートやデザインは『カラフル』のような緊張感に欠けているし、冒頭近くの唐突なロック系のBGMなどはチョイスがめちゃくちゃです。(『カラフル』ではうまくつかってたのに!あまりにも静かな内容ゆえに無理にいれたせいなのか。)プロダクションIG特有の製品感といいますか、技術デモ的なアニメデザインの手つきが、原作の杉浦日向子が描く日常と怪奇の手つきと真逆ゆえに映像化によるマジックがさして起きていないのです。「百日紅が咲くね…」と一言呟いて映される花の美術も、鋭さが足りず書き割りの域を出ていません。

 

 にもかかわらず、ある一点が並外れて驚異的で、目が離せないのです。それはまさかの主人公お栄のデザインとその声を演じた女優・モデルの杏の演技です。これよく言われるような「本業女優の演技は棒読み。ちゃんとした声優つかえよ」とか「棒読み過ぎて目が離せない。怖いもの見たさ」みたいな皮肉じゃないですよ。マジな話で「実写映画のカメラが俳優のある一番の瞬間を写し取ってしまう、リアルタイムのきらめき」の美しさのアニメ版なのです。

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