昭和元禄落語心中 視聴10分
またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。
前も思ったことですが、本当に題材を生かせる相性のあったスタジオがアニメ版を制作するというケースはなかなかないですね。「僕だけがいない街」は恵まれてますよ。
ものすごく「原作漫画を動かしてみました」というくらいの、テキストの拡張くらいの意味の無い映像がもったいなさすぎます。
動きが少なく、聞かせる題材である落語をアニメにするっての、一見難しそうかもしれませんが実は今なら本当に最適なスタジオがあります。そうシャフトです。
物語シリーズを観れば分かるように、トータルで会話やモノローグの比重が高いです。そこを全然違うグラフィックやタイポグラフィの挿入や杉浦茂パロディのカット、偏執的なくらいのシンメトリーのレイアウトの連続で織りなしています。
この手法は「昭和元禄落語心中」にハマるはずで、寄席の広い空間でシンメトリーになっている絵の良さもここのスタジオよりもずっと上手く生かしただろうなあと思います。ほんと、ジャジーな劇伴と、椎名林檎作曲で林原めぐみが歌うエンディングとか音だけ聴いてるとよりシャフトっぽい感じなんですが…声優が落語をやるという演技の面白味といい、聴く部分はとてもよいのに、映像がその補足程度なのはもったいないですね。
原作の映像化で展開が広がる一方、なかなか本当に原作を生かしたり、また別の可能性を見せてくれるようなスタジオに巡り合うことは、やはり奇跡的なことなのでしょう。「だがしかし」には大地丙太郎がついたらなあと思いましたしね。
どうせだ、落語の世界を本当に映像化してしまった日本の名作・山村浩二の「頭山」で締めましょう。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。