ゾンビランドサガ 視聴フル
「アイドルアニメは当たらなくなってきた時代に突入したのか否か」こう書いてから1年が経ち、事態はもっと入り組んだところへと進みました。『ゾンビランドサガ』は現実のアイドル事情もアイドルアニメ事情も飽和状態になった末に生まれた、蟲毒です。
ついにこのジャンルは戻れないところまで来てしまった。その意味で今季必見の作品のひとつです。
アイドルの飽和……地下アイドルの地獄……そんな現実を反映するのか
蟲毒。そう思ってしまう要素をひとつずつ書き出してみましょう。まずベースはアイドルを目指す女の子が主人公。いきなりトラックで即死。ゾンビ化する。その状態でアイドルになる。
ここまではまだいい。あくまでアニメ内の設定だから。問題は細かいネタです。
まずひとつ、現実のアイドルが飽和のあまり、細かいネタでビルドされている事情の反映です。ベタですがヘビメタを取り入れたBABYMETAL、そのほか仮面女子とか無茶なキャラ付けで成立させるとか見ましたよね。本作の「一見ゾンビアニメにしか見えない導入」でアイドルアニメをやるということは、現実のそうしたアイドルがやる奇襲攻撃みたいなプロモーションに近いですよ。
そして地下アイドルの隆盛。しかも今、地下の運営であまりにもひどいケースではアイドルの月給が数千円程度という異常な話が流れてくるではありませんか。それと照らし合わせると本作の「地下アイドルがゾンビ」って、現実へのとんでもない皮肉になってしまっています。その意味でもリアルタイムで観る価値はありますね。
しかもその制作がMAPPA。『この世界の片隅に』を作ったところであり、TVアニメでは『神撃のバハムート』から『バナナフィッシュ』といった作画に定評がある作品を排出したスタジオですよ。気鋭のシェフに作らせた闇鍋なんです。
企画優先のはずの共同制作が闇鍋を作る
一番すごいなと思ったのは複数制作会社によるプロジェクトでやっていることです。一瞬、作画に定評のあるスタジオならではのオリジナル企画かと思ってしまいましたよ。WIT STUDIOの『ローリング☆ガールズ』みたいな。あれも皮肉っぽいとこすごいですからね。
ところが本作では錚々たる顔ぶれが名を連ねています。Cygamesとエイベックス・ピクチャーズです。
アイドルアニメと言えば、アニメによっては複数の制作会社も関わるメディアミックスが主流です。現在はブシロードがメディアミックスで目立った活動をしていまし、過去にも『ラブライブ!』はアスキーとランティス、サンライズの共同プロジェクトでしたよね。
というか、企画優先にならざるをえない合同プロジェクトでこれが通った時点で、ほんとうに現実のアイドル&アイドルアニメ事情の飽和状態を狙っても行ける、と判断したってことですよね。飽和状態を面白がる層が狙われているんですよ。そしてその層とは……
アイドルの飽和状態で狙われた層
そう……おそらくサブカル趣味寄りの層です。
アイドルをべたに萌えや楽曲で楽しむオタク層がメインの一方、「どこまでが現実か虚構かわからない」みたいな部分を面白がるサブカル趣味の層はけっこういました。
わかりやすい萌えの時代は過ぎ、意外に長生きしているのがむしろサブカル趣味な部分の気がしていました。メタルとかプログレとかをアイドルにやらしたりとか、そういう試みをサブカル趣味な人が面白がって行ってると言いますか。
本質を偽物にするパワー
オタクとサブカルの共通している点は本質を避けて偽の部分を面白がることなんです。その違いはわかりやすい萌えか、過激な露悪さというくらいで一緒です。長いアイドルブームは結局のところ、オタクとサブカルがニアイコールで繋がるものだと証明したとも思います。
余談ですけどオタク≒サブカルにいま一番対立してるのが、本質一点を掘り下げるアカデミズムと思いますね。ここ10年のオタク≒サブカル層が声上げるパワーの増加にともなう、アカデミックなアートや文学といった芸術表現への蔑視ってすごいですから。
本質を偽物にするパワーはものすごい。本質を掘り下げる側も偽に迎合しなくてはならないという時代をどうするのかな、みんな日本を出たりしているのかな、そんなことを思います。話がそれました。観たアニメは忘れましょう。でも培ったプロモーションとサブカルはそのままに、次回にお会いしましょう。
- アーティスト: 仮面女子,アリス十番,武村大,永田雅規,宮下浩司,佐々木久夫,Rookie Fiddler
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- 発売日: 2015/01/01
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