ちちぶでぶちち 視聴フル
正式な公開は4月なので春のモードに回すべきなんですけど、知ったのが最近なのでこちらで……
「この日本映画を誰が見に行くのか。なぜ作られるのか。」がテーマの柳下毅一郎氏の人気連載「皆殺し映画通信」があります。そこで頻繁に取り上げられるのが地方自治体映画で、特に「なぜ作られるのか」という謎の深さが語られております。
駅のホームを歩いていたときに初めて目にした『ちちぶでぶちち』からまず思い出したのはそれでした。アニメで地方が絡む謎の制作が始まっています。大丈夫か?タイトル企画者!ところが実際に観てみると……
アニメと地方とのかかわりはここ10年で特徴ある現象のひとつですよね。アニメがアニメ単体で完結せず、ビデオゲームやライブイベントと絡むことにもウェイトが置かれているみたいな流れのひとつっぽいです。
ブシロードアニメからランティスアニメまで声優本人の音楽ライブも含めてワンパッケージであるという時代ですし、しかもそれが凄いところにいっているようで前回取り扱った『少女歌劇』ではライブイベントとしてどうも演劇にまで足をかけてきてるわけですからね。
聖地巡礼というのはライブイベントの一つとも言えます。アニメで現実の地方都市が映り、その後に聖地巡礼と称してファンが遊びに行く。その後、アニメの経済効果に目を付けた地方側がアニメとコラボしようとするケースが現れてくる、みたいな。この先ブシロードが地方協力までやりだしたら、商業アニメは凄いところに行くと思いますね。
しかし実写の地方自治体映画がいろんな意味でクローズドなのに対し、西武鉄道制作アニメーションはというとちゃんと外部に広めようとしている努力があります。なんと公式サイトは英語・フランス語・中国語に対応、本編にもそれぞれ字幕版が設定されている。
西武鉄道が諸海外のアニメファンにも狙いをつけていることは確か。しかもトータルのデザインもご当地アニメということを考えるとものすごく善戦してます。というか、今期の周辺のものをざっくり見ても平均以上なくらい。
一見普通でありきたりに見えますけど、キャラデザインの萌えすぎない間合いがよいです。ほんとうにこの間合いで成立するものが珍しい。タイトルがタイトルだけにエロかも。とおもいきやタイトルだけで、主人公を北川景子感でまとめられてるのって今はそんなに見ない。多くの男性キャラクターが主人公に迫る内容なので、女性向けアニメ基調なんですけどもそうでもない。
これはマルイのCMアニメを凌駕していると思います。要はキャラクターに耽溺しすぎない。西武鉄道制作、地方活性PRが逆にこの間合いで、しかもかなり見れるデザインにしてるな、というのが良い方向に起因していると言いますか。もちろん要所要所はPRならではの謎の演出が差しはさまれますし、鉄道会社らしいラストシーンはずっこけすぎてしみじみしますよ。
そんな西武鉄道&トムス制作アニメにもどうやら過去には本当に地方アニメらしい時期があった模様。それが2014年に公開された以下の作品のようです。
「アニメのことはよくわからない」「とにかく老若男女を問わないように」という陣営のまま始まった気配がサムネイルから伝わってくるすごいデザインです。これを踏まえると西武鉄道サイドは本当に考え抜いて作っているんだなあ……制作側に近年のアニメの傾向や地方ビジネスということも含めて、本当に理解ある方が入ったんだということがよくわかるのです。
地方アニメという謎を追うはずが、実際にはものすごく西武鉄道が本気であるといういい意味でのこの熱意の謎、といういい話で落ち着きそうです。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。