ガッチャマンクラウズ インサイト #1
冒頭の「主人公キャラが朝、目を覚ます」シーン。これは多くのアニメが行っているらしいありがちなシークエンス。そしてありがちなアニメみたいな画面作りで薄いグラデーションのかかった画面、部屋の中での独り言。ある種トレンドらしい地元活性アニメみたいに、わざわざ地名付きでの花火大会のポスターのカット。
導入こそこの書き散らしなら2分で別の作業に映るだろう(もしくは観ながら同時進行で書き散らしていただろう)出来だ。まるで日常どうたらとか、アニメ町おこしだとか地方密着のタイプみたいだ。ところが時間が進むにつれ、むしろそうした日常だとか町おこしだとかみたいなアニメネタを遥か冷たく俯瞰したレイヤーに突入したデザインが浮上する。このあたりに「インサイト」ならではの、早い話のんのんびよりとかあの辺をいきなり刺しにかかってる感じがある。わけがない。
実際新潟・長岡のシーンは嫌がらせみたいに「地方・温かみそののちの癒し?」みたいなイメージに沿うような画面を取っている。背景が水彩風で構成されているのだ。これは前作主人公はじめちゃんたちがいる立川のドライでフラットな街並みのデザインと比較して明白なんだが、このクソ書き散らし的にはわざわざろこドルどうたらとか聖地巡礼とかあの辺を人造的に作ろうとする類のアニメにカウンター売ってる感がいい。わけがない。
とはいえ前作からして立川だけど、あれは別に地域ならではのそれもあったろうが、それ以上に本作を貫くアート・デザインとコンセプトはそうした意味で捉えるものではなかっただろう。SNS・GALAXといモチーフをもとに、まるで最近のフラットデザインを意識したようなカラーリングや背景の無機質さなど、中村健治のこれまでのデザインワークが現代日本の商業アニメのモードを一歩俯瞰して見つめてる映像がよかった。
やがてSNSベースのフラットデザインの感覚や視点を商業アニメに導入していくことは、特殊な感覚を与えるだろう。宇宙人ゲルセドラが唐突に現れ、人々のムードを可視化する何かを行う。結果、田舎のほのぼの地方活性アニメかに見えた新潟長岡は、露悪的で不穏なムードを予感させる。ほら田舎という舞台でこの意匠を使うってことと、前作のGALAXのネタも絡むってことはさ…
まあコンセプトはいい。やっぱガッチャマンクラウズならではのアニメートは、決して動画そのものの面白味というよりもそのコンセプトとデザイン視座により、結果全てが記号的で露悪的になっていくことにある気がする。
そもそもはじめちゃんがキチガイみたいなのもアニメの主人公のおせっかいで純真みたいなやつの、本作のデザインならではのカリカチュアにカリカチュアがぶちこまれたみたいであるし、ところどころ冷たく俯瞰してデザインされているゆえキャラクターへの感情移入はしづらいようなところが多々ある気もする。わけがない。
まあなんだ、日常&地方アニメネタを冷たく見つめたのちに、最終的には田舎&SNSのヒット作たる細田守の「サマーウォーズ」で少なくない人が感じてた違和感を回収する方向にいったならとてもいい。わけがない。観た#1は忘れましょう。でも培ったアートスタイルとコンセプトはそのままに、#2でお会いしましょう。
フラットデザインの基本ルール Webクリエイティブ&アプリの新しい考え方。
- 作者: 佐藤好彦
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