月影のトキオ 視聴フル 制作:神風動画
須田剛一。あまりゲームに触れていないならこの名前は聞かないかもしれません。日本のゲーム界シーンにおいてまるで映画におけるゴダールだとかデヴィット・リンチのような存在であり、実写映像からアニメ、グラフィックデザインとあらゆるメディアを掛け合わせながら、現代を取り扱った舞台で死や混沌いやいや悪ふざけをぶち込むことで家庭用ゲーム界の中では異質の存在となっています。
氏の資質が発揮された代表作に「シルバー事件」「花と太陽と雨と」「Killer7」があります。個人的には家庭用ゲーム界隈に絞れば1999-2010年のおよそ10年の間に為した仕事は非常に興味深く、当時の既存のビデオゲーム表現でモチーフから方法まで衝撃的でした。2015年現在でも、以上の作品は誰であれ強く通ると思っております。
そんな須田剛一作品ですが、近年では家庭用ゲーム界隈の制作はなかなか難しい現状があるゆえなのか、本人がディレクションを取る形のものはなかなか見なくなっており、コンセプトやラジオドラマ、アニメなどの原作・脚本という仕事のほうで名前を聞きます。
さてそんな流れの一つと思われる「月影のトキオ」なんですが、どんなキワ物かと思いきやこれがまたぼくがここまでにずっと書いてるような「京騒戯画」「ローリングガールズ」系統の「日本アニメの持ってる俗悪ぶりを俗悪ぶりのままデザインする。無意味の意味」系統です。
まじに村上隆のフィギュアネタ*1を思わせるばりばりのツンツン頭に嫌がらせであるかののように目に光を入れまくるトキオのデザインから、90年代初頭みたいなウゴウゴルーガ風の他のキャラ、唐突なダンスシーン。何の意味があるのかさっぱり謎のCGアニメでのロトスコープみたいなカットまで徹底して様々な手法をぶち込み、そして皮肉り、カオス。無意味です。ストーリーもいっさい帳尻をあわせないあたりが素晴らしいです。これは皮肉じゃないですよ。
もうこっから須田剛一関係なくて日本商業アニメでもうそろそろ何か出来んじゃないか、いや違うのかなってギリギリのデザインの何かが生まれねえかな?と思ってしまいます。高レベルのアート・デザイン視座から日本アニメの持ってる俗悪ぶりを(どのような形でも)再デザインするファレル・ウィリアムズのPVみたいなそれを上手くやれんじゃないか?細田守「バケモノの子」って「少年が化物に育てられ一人前に」みたいなあらすじではなく、いかにあらすじに意味が無くなるデザインやるかに期待してるんですが…
さて「京騒戯画」ー「ローリングガールズ」路線のアニメが好きで好きでたまらないくらい好きみたいな人が読んでるならば、須田剛一作品でそんなアート・デザイン視座で俗悪もサブカルもオタクも再デザインするセンスが爆発してた作品をお勧めして終わりにします。wiiでリリースされた「ノーモアヒーローズ」シリーズです。オタクの殺し屋がスターウォーズまがいのもの、FF7の野村哲也キャラもどきをぶち殺したり、突如8BIT風味になるなどその他いろいろのファクターを投入した無意味ゆえのパワーが強烈な作品です。観たアニメも、ゲームも忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、そろそろ次のモードが現れるのを待ちましょう。
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