17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

このデジタルアニメ作家の映像はフィルムの記憶を持たない デヴィット・オライリー

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 現在のデジタルアニメーションの雄・デヴィット・オライリーのアニメーションを観て痛感させられるのは、まるでフィルムの記憶から切り離された面白さと美しさ、そして洗練され意識されなくなっているデジタルの歪さに自覚的なことだ。それはたどたどしかった初期の3DCGアニメの感覚を引き継いでいるみたいなレベルではない。 

 

 映像メディアの初期はマイブリッジの連続写真からアニメ上映機械であったエミール・レイノーのプラクシノスコープ、そしてリュミエール兄弟のシネマトグラフによってひとつ確定されることで、長らく美的とされるフォームは培われただろう。

 

 やがてテレビをはじめ様々なメディアの登場によりフィルムよりフレームレートの高いビデオカメラによるつるつるの映像の登場や、再生メディアにVHS、LD、DVDと多様化されたのちに、現在のようなインターネットによるストリーミング配信といった形で映像メディアを受け取る形はすでにフィルムで映像を見るフィジカルな体験じゃない。

 

 初期にはたどたどしかった3Dアニメにしても、やがて培われたフィルムの記憶に馴染むようになっていく。たとえばピクサーダイナミクスは、2D時代からのアメリカ商業アニメ界で培われたアニメートのロジックに加え、実写のブロックバスタームービーの絵作りの双方をもったものになっている。それはフィルムの記憶の延長だ。デジタルであることの違和は洗練され、かき消されている。

 

 フィルムの記憶とは相いれないはずのデジタルの違和や破たんは、洗練の中で観づらくなっている。だが確実にそれはある。オライリーのアニメはそれを突きつける。

 

 

 たとえば一つ意図的に動画データを意図的に破壊して生まれるグリッチを、美的な表現としてしまうことだ。YouTubeなどで起きるストリーミング動画の破たん、ノイズ。これを意識的に使うことでフィルムの記憶から大きく外れた媒体であることを示す(彼の作品のほとんども動画サイトvamioで公開されてるみたいなことすら含めて)。

 

 それだけではない。映像メディアをはじめ、アーカイヴとして残される膨大なアーカイヴや情報のアクセスの感覚もまた、構成に影響を与えている。90年代マルチメディア時代みたいな古臭い言い回しだけど、それに伴う時間感覚や情報の捉え方の歪み方が刻まれてる。

 

  代表作『Please Say Something』にはそうしたフィルムの記憶に一切として近づかない感覚が存分に発揮された作品だと見る。トムとジェリーをパロデイにしたみたいなネコとネズミのラブストーリだが、ま観ての通りカットの切り方、唐突な早送りなどなどはもちろん、ゲームやグラフィックデザインのような俯瞰図のカット、繰り返され分割される時間、シーン…そこには映画のフィルムのダイナミクスや快感から徹底して遠ざかった異質な体験だ。

 

The External World from David OReilly on Vimeo.

 「EXTERNAL WORLD」に至ってはさらにタチが悪い。冒頭こそ厳格な父のもとでピアノを練習するみたいな、フィルムの記憶を持ったような名作風味のシークエンスから始まる。だがしかしすぐさま次のシーンからは多方面に意図して仕掛けまわる愉快犯のようなことをしつづける。ミッキーのお面被った

ピカチュウ。マリオネタ。クソとチンポ。これらの嫌げなエピソードを手当たり次第に貼り付ける。*1

 

 だがオライリーのプロジェクトの中でもう一つ興味深いものがある。それはiosやPCで公開されているゲームプロジェクト『Mountein』だ。山を観察するだけのゲームということで一時一部で話題になったが、これは数あるスマホアプリのようなネタ系として消費されたかに思われるだろう。

 

 しかし前にも書いたみたいにアニメーションはやはり時というものに自覚的なとこあるジャンルと思う。そこで完全に時間(そして線形に展開されるもの)という制約から解き放ったメディアではどうふるまうのだろうか?

 

 オライリーのアニメを「まるでゲームみたいだ」と感じた方も多いと思うが、ことデジタルメディアの先端でもあるビデオゲームに置いてもやはり趣は違う。彼の作品の記憶に忠実なのはデジタル土壌のインタラクティブメディアってことなんだろうか?

 答えはともかく、フィルムの記憶から最も遠い映像作家・オライリーのゲームにこちらに関してはもう一個のブログ「GAME・SCOPE・SIZE」に続きます…

 

*1:ちょっとウゴウゴルーガも思い出したよ。あれもバリバリのデジタル番組でしたね