17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

セックスと戦争が悦楽で繋がることを、遠くから見つめるアニメーション”Pleasures of War”

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 あけましておめでとうございます。

 

 新年一発目は当ブログのタイトルの語句の要素が全面に含まれたアートアニメーション・「Pleasures of War」です。戦争の喜びと題された、Ruth Lingfordによるこの作品はその喜びに何をアナロジャイズしているのでしょうか?

 

 

 まるで木版画がそのまま躍動しているようなアニメートに重なるように、数々の現実の戦争の行進の実写フィルムが重なるという構成。複数の表現のレイヤーを重ね合わせることによって強調されるのは暗示や象徴の多重構造です(例えるのもあれですがまどマギ蒼樹うめキャラの本編部分とイヌカレーのコラージュアニメ部分を重ねることで浮かぶ暗示の強さといいますか)。

 

 現実の戦争のフィルムと並走するかのように、木版画で中世のどこかの国が城へ進行し、人を切り裂き城門を開け放とうとします。だがそのアニメートには(あまりにも直喩すぎますが)ナイフで人を切り裂いた傷は膣のように変形しますし、城門を開けようと多数の兵士で木の柱で打ち付ける、はそのままいきり勃ったチンポでピストン運動しているそれです。

 

 やがて一人の娼婦が王の元に訪れセックスするシークエンスに入ります。イラマチオを済ませた後に騎乗位という流れ、AVならば当たり前のこの流れは陰鬱なBGMとともに展開され、上下する娼婦の身体を通して戦争の群集か、それとも死体かが映し出されます。膨大な死体や群衆がまさか、特に妻でも愛する女でもない女とのセックスで膣内に射精される王の精子の直喩だとしたらわかりやすすぎでかえってギャグな気がしますが、悦楽とその禍々しさを見出そうとしているのでしょう。

 

 セックスはやがて倒錯し王は自分のアナルに異物をぶち込んでもらうところにまでいってしまうのですが、ここで娼婦の目つきが一様に変わります。王が前立腺を刺激されたかでイった隙に、剣を振り下ろし首を掻っ切ります。流れ落ちる膨大な血。その赤い色が画面を覆い、戦場へ向かうどこかの兵士か、ゲリラか。あるいはホロコーストの映像なのかが映ります。娼婦は王の首を高らかに掲げ、戦争とセックスがある種の悦楽で繋がりそしてグロテスクであることを象徴します。

 

 Ruth Lingfordは他にも古いPCであるAmiga1500によって製作した「What she wants」など地下鉄内で急速に禍々しい性欲に取り付かれた女を描き、バッグの口がやはり膣口に見えたり隣の座席のハゲをそのまま包皮のずる向けたチンポに見出したりすると言う作品も作っています。

 

 暗黒のような作風であるかに見えますが、しかし僕にはある意味では王道のテーマである思います。それはなにか?というと、生と死とセックスを巡る内容であるから。案外多くの面白さも問題も何もかもそこに集約されはしないでしょうか。新年一発目からこんな内容ですが読んだ記事は忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、今年もよろしくお願いします。

 

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