また一つ来ました。瞬間に熱しそして忘れ去られるために積み上げられ次の瞬間に繋がれる礎が。マッドハウス系統の新興製作会社MAPPAからもう一発、「牙狼 炎の刻印」です。
ここんところ大変気にかかる日本商業アニメの2Dセル動画と3DCGモデリングの組み合わせ。その違和感。「牙狼」シリーズの最新作の本作は特にそれ強いですね。
このシリーズ、まさに「ほとんど生身にスーツが覆うヒーローネタなのに、変身後がなんと手描きの動画ではなく3DCGモデル」というタイプの走りなんですが、いまだに構成上すげえ違和感があります。
第一にその時間感覚の違いです。2D動画は1秒間に搭載される動画数が基本8枚であり、タイミングやシーンによっては1秒12枚、24枚と描き使い分けるのに対し、3Dは鼻っから一秒間にたやすく24枚の時間を存在しており、手描き動画の時間感覚に合わせてコマ落としをしていくというすり合わせです。
第2には本作の2D動画でのキャラデザと変身後の3DCGの根本的な造形の違いです。それは、特に2D動画の方のキャラデザが「平面ならではのうそやバランス」で構成されており、鋭角的・シルエットを生かす平面ならではのフォルムです。立体面で一切のウソが無い3DCGとこの点でも全く違う空間を生きています。
こうしたスタイルの場合アニメートする際も中割りで大きく動きを見せるように変形したりする2D動画ならではのアニメートが生きる造形なんですが、そのせいで余計3DCGとの誤差が目立ちます。
ヒーローネタで変身後3DCG、なら「タイガー&バニー」です。しかしあれは最初から立体を意識したキャラデザなんですが、しかしなぜ本作はここまで2Dならではのキャラデザに?
変な意味でこれは面白いですよ。「牙狼」に限らずこの手の構成を持ったヒーローネタやロボットネタは、主人公が変身した瞬間・ロボに乗った瞬間、主人公は別の時間と空間感覚に移行することを意味してるわけです。ほとんど無批判に。「新エヴァ」もそうですね。
どう考えても時空間ごとチェンジしてるとしか思えない図
ギリギリ3DCGが2D動画との時間感覚をすり合わせるのに適しているのはやっぱ手前←→奥の空間移動カットに使う際の背景美術だけで、ロボだけでなく車など人間が搭乗する機械であってもぼくは未だに馴染みにくいものがあります。
デジタルアニメ制作のアドバンスドデザインたる3DCGの大幅な導入以降、2Dのアニメがずっと難儀にしていた自由な空間表現や複雑なアクションといったものを低コストで表現するようになりました。がしかし、代償に時間と空間感覚の誤差が生まれました。その時間感覚の大幅な誤差は、未だ「頭文字D」とか「イノセンス」とかのころから埋めきれていないと思います。
余談ながら押井守や大友克洋の2000年代の辛さはここで、実写を目指すタイプなので立体空間の進歩で3DCG空間をフィーチャーしたが時空間がズレまくったままで味わいがなくなり、「スチームボーイ」や「スカイ・クロラ」はダメでした。やっぱ2Dの平面と時間感覚の中でそれでも実写的なイリュージョンを生み出していた80年代後期ー90年代前期のほうがあってたよな、みたいな…
「牙狼」の場合、特に時間・空間的な感覚が2Dと3DCGで離れすぎており奇怪です。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。
EMOTION the Best 牙狼
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