ファッションとアニメネタ。なにかとファンレベルでは荒れやすい話題のようですが、 ここのところのデザインネタを書き散らしながら思うことは一見離れ小島であり交わることのないだろう二つのジャンル、意外にファッションとアニメネタが奇妙に近寄っている感じがあります。
それはさりげなくアニメのキャラデザから映像の変貌まで意外と無関係ではなさそうな、アニメとファッションのデザイン関係の書き散らしです。
1・まずベタなところで、やけに頻発するファッションブランドとのコラボ
まどかマギカからFREEなどなどとのコラボを行うBEAMSや、過去にけいおんとearth music&ecology Japan Labelコラボなどなどはじめ、そのほかにもキルラキルがhaco.とのコラボを行っているなどなど、ファッション界隈がアニメとコラボするなんてことは少なくなくなりました。
しかしコラボアイテムを取り扱うSuper Groupiesのサイトを眺めていてもアニメの持っているデザインの目的とファッションの目的のすれ違いぶりが凄まじいです。
すれ違う理由に、ファッションの方は元のアニメの記号的で色数多くギラついてる、情報量の過剰さの側面をほぼ捨て、ファッションの目的である色数は絞りトーンに合わせる情報量を絞る方向性にあることです。多くのアニメは情報量過剰でナンボで多くのファッションは情報量抑制してナンボ。ラーメン二郎とプラダはすれ違います。
極めつけは「JAM HOME MADE presents SPACE☆DANDYファッションコーディネイト原画展」という、8つのファッションブランドのアイテムをスペースダンディのキャラが着るって企画です。もう上の画像を一目見ればさっき書いたアニメのデザインの目的とファッションのデザインの目的が明後日の方向へ行っている厳しさに溢れています。ダンディが最もおしゃれにハマるのはスカジャンだよ!特にセル塗りが丸見えで、配色でトーンがほぼ作られない記号的なデザイン方向のこの作品は、現実のファッションとの合わなさぶりは半端ない。*1
アニメの作品内容とコラボ先が埋められない溝を永遠に象徴し、突きつける画像
それにしても他分野のこうしたコラボはいつ、どこで誰が始めたのか?まさかパチンコ?(コラボと違いますね)まあ単純に広告戦略の一つが様々な遍歴を辿ったゆえ、と思いますし、コンテンツホルダーがアートやデザイン方面とのコラボをしたがるというのは少なくありません。現在では異業種をコラボレーションするコラボ・コンシェルジュという商売まで出てきています。
アニメはローソンからピザハット、それから髭剃りはじめ、なにやらファッション関連にまで広がるまでに至りましたが、ことこのコラボに関して両者のデザインにかかわる根幹に抵触しているかに見えます。
コラボとはまたズレますが、書店いったら宝島社のブランドムック系などなどでデザインやファッションの方向性からアニメにアプローチしてる雑誌をちらほら見かけます。
MODE GURREN LAGANN: 天元突破グレンラガン 5周年記念MOOKだぜ! (Gakken Mook)
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こういうかんじのムック なんか意外に見かける
あれは売れているのか?と疑問ですが、客層があるからこうした企画は実現し続けているわけで、こうしたファッションやデザイン方面からのアプローチが有効な客層が形成されているのでしょう。
とはいえ、「ファッションとのコラボ」はアニメのデザインの影響とはまた別の話です。やっぱ気になるのはアニメのデザインそのものがファッションを代表としたアート・デザインを指向した場合どういう変化はあったの?ということです。こっから別方向の話になります。
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ LOVE! さやか&杏子ver. (e-MOOK 宝島社ブランドムック)
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2・実際にスタイリストを利用して作中の人物の衣装を決める
アニメ制作サイドはファッションの価値をどう捉えていったのでしょうか?
キャラクターデザインの質を高めるために、「その登場人物の性格や生活、背景までどうやって見えてくるか」のデザインを研鑽するという実際にデザイナーやスタイリストを起用するというケースは散見されます。いくつか例を挙げましょう。
GONZO・前田真宏作品の「巌窟王」では最終話にてファッションデザイナー・アナスイとのコラボレーションが実現しました。「巌窟王」のテクスチャーを生かした豪華絢爛なエレガント・かつサイケデリックで退廃的なムードに、アナスイのデザインというのは映えたと思います。
本格的なところでは、新海誠の「言の葉の庭」が27歳の主人公ユキノのキャラクターデザインを、より現実の同年代のリアリティを描くためにスタイリストを起用し、実際のブランドのアイテムを作品に登場させました。
現代の東京を舞台にした同作では、アニメーションとしては珍しく、キャラクターの靴や服などに、実在するブランドの商品やロゴが登場する。
靴・バッグの専用店「ダイアナ」やスポーツブランド「FILA」、日本のアパレルブランド「TRANS CONTINENTS」など。制作の段階でスタイリストを起用し、登場人物のファッションコーディネートも行うなど、キャラクターの魅力と現実感を深めることにこだわった。
テレビ番組や映画の中に実際の商品を登場させるのは、プロダクトプレイスメントという広告手法のひとつだが、同作においてはスポンサーのように企業の宣伝効果を狙ったものではなく、「現代の日本をリアルに切り取るため、作品世界が要請するものとして、なるべく現実の商品をそのまま使いたいと思いました」と新海監督は話している。
「おおかみこどもの雨と雪」ではスタイリストとして数多くの映画に関わった伊賀大介を起用しました。「アニメでファッションにこだわるのは作画が大変だからでは無理ではないか」という疑問もあるようですが、極めてシンプルな形でも登場人物の性格や生活が垣間見えるファッションをここでは実現しています。伊賀大介のスタイリングの方針はこちらで読むことが出来、ファッションでどうやって登場人物の性格や生活までを表現するかに触れられておりとても面白いですよ。
ここの項目まとめるときに適当に検索やってたんですが、その他にもスタイリストが関わってるみたいな作品がみたいなツイートを見かけたのですがどうなのでしょうか?
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3 実際のキャラデザもファッションやデザインを意識して意外に変貌してる?
振り返れば2000年代あたりからのデカい変化は無関係ではなさそうです。確証はないですが、ポイントになりそうなのを書き散らすと、
- まずアニメ制作がデジタルが主流になったことで、そのことによりアナログ時代よりも繊細な配色が可能になり、また修正も行いやすいことで、色調をまとめ上げる画面処理も容易くなったことでトーン作りを行いやすくなったからか?
- そして2005年のノイタミナあたりを代表にした、20-30代の女性の客層(えーっとF1層ってやつですか)の開拓はバカにならない気がします。けっこう「アニメ制作も女性スタッフが増えたからおしゃれに~」という意見も目にしますが、R18ゲー界隈で西又葵さんとか少なくなく女性スタッフがいてあのデザインだったりするわけだし本当はあんま男女関係なく、要求されるお客さんの層の欲望からすべてのデザインは始まってます。お客さんの変化がデザインを変えた?
シーンの変貌はもっといろんな要素が含まれるため、全貌はなかなか捉えられません。以上のことも当然適当です。
しかし気が付けば、アイドルマスターなんかは「最悪にダサく、美少女の記号のバリエーションレベル」でスタートしていたはずの初期コンセプトからアニメ化を通過した現在、相当なまでにファッションやデザインの方面へのテコ入れが為されています。スマホで膨大なキャラ入れてる「シンデレラガールズ」も意外にキャラや年齢性格に合わせたファッションのチョイスをやってたりします。
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あとキッズアニメ関連ではラブ&ベリーあたりのゲームが実際のファッションまで取り扱うみたいな流れで、「アイカツ」などゲームやアニメで着てる服を実際に「アイカツスタイル」で販売してるなど、こっちは子供の客層ってことでゲームやったりアニメで実際観たぞってのを着れるみたいなことやってます。情報量過剰で記号的なのが受けるこどものお客さんが結局アニメゲームファッションのデザイン差はないじゃんというオチになるかもしれませんね。
大抵のアニメデザインは色相多め+シルエットも過剰目と、情報量を多くしてクドくするのは変わりませんが、意外に繊細な配色やデザインの詰めが少なくない近年はファッションデザイン感のなさや美少女って記号だけでOKってデザインでもなくなってきてるような気がします。
そういやノイタミナ「残響のテロル」なんかもよく観りゃ主人公二人の服装は1話中に着替えられていたりとここまでにかなり用意されてたりします。脚本芸術面があまりにひどすぎるのですが、表層のデザインって点では詰めております。*2
ファッションとアニメ。この二つはデザインの目的上、日本とブラジルくらい遠いようでいながら、実は両者は少なくなく近づいているのでしょうか?水面下で制作環境や客層が変化していってる中、萌えやらなんやらを目的とするデザインの感覚も意外にゆっくりと書き換えられてるような気がします。アニメの服装はそのデザインの目的上ダサいもの。しかし、思ったよりはダサくはなっていない感じです。
なんつーか実際のファッションのデザイン方針とアニメのデザイン方針の擦れが意外にデザインの変貌があるような、とここまでの与太話は忘れましょう。とりあえず技術とトレンドはともかく、来季にも会いしましょう。
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