17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

ラブライブの絵柄の変化でわかるアニメキャラクターデザイン7つの傾向と、絵柄のトレンドの変化や関係

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 キャラクターデザインの傾向と、それらが影響し合うことで生まれる流行り廃りのトレンドは、いかにして出来上がるのでしょうか?それを見取るひとつの叩き台になりそうなのは、あのラブライブのキャラクターデザインの変化の過程です。

 

 ラブライブの初期から現在までのキャラデザインの大きな変化の歴史は、そのままプロジェクトが拡大するにあたって、ここ5年くらいでウケている様々な傾向のキャラデザインのトレンドやクラスタを横断していった歴史と思われます。その横断はそのままキャラクターデザインの様々な傾向や、トレンドの変化を表しているとも思います。

 

 前にやった映像・演出デザインの8つくらいの傾向のメモを補填する形の、今回は雌のキャラデザイン中心のデザイン傾向の実験メモです。暫定7つです。本当はもっと細かく傾向ありますが、とりあえずわかったふりしやすくいきましょう。

 

 

R18含むギャルゲー界隈・トホホフェテッシュ&キッチュ

 

  サンライズ・『G's magazine』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)・ランティス・による共同プロジェクトとしてスタートしたラブライブ。3社合同のプロジェクトの中、観客参加のポイントには電撃G's magazineがありました。

 

 もともと読者参加企画で名を成してきたというこの雑誌界隈では、過去にこうした形でプロジェクトを成立させてきました。

本誌を特に有名たらしめたのは、読者参加企画『シスター・プリンセス』である。1999年3月号で始まった『シスプリ』はまたたく間に主力連載となり、2000年3月号からは「妹」たちが表紙を飾るようになる。そして読者の圧倒的な支持のもとにゲーム化・アニメ化と順調にメディアミックスを展開。

ウィキペディアソース

 AKB48が「会いに行けるアイドル」つってしかも接触(握手)が可能、さらにファンの自分が応援することとかどうので秋葉原を拠点に観客参加を主としたとこからスタートした戦略を思い起こさせるかのように、その層の欲情からデザインがスタートしている界隈からでした。

 

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 この界隈はかなりキツいデザインレベルです。女の子の造形は四角ー鋭角系のシルエット、目は巨大な黒目が白目を無くすほど覆い、さらに顔面を覆います。赤ちゃんか幼児体型の欲情のロリコンデザインから、巨乳や肉付きのマザコンデザインに至るまでの欲情がデザインベースです。

 

 もともとがノベルゲーム形式で静止画で即刻伝わるデザインが先なゆえに、動画になった際の空間や自然な動作を見越した造形の意識がないために、一枚絵でもの凄くわかりやすく極端にする傾向あると思います。そして着てるファッションは当然のように現実のデザインやコーディネートは無視、迷ったらフリルつけとけ、リボンとか目立つアクセつけまくれのデコり感覚で情報量を過多にし過ぎてぐちゃぐちゃです。

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左端 2列、ltからdk、ltgからgの「彩度が低く明度の差の大きいライン」でありながら、
まるで全色使うかのように広範囲の色を使う。
これが多くのR18系の「子供みたいなわかりやすさ+薄ら暗い淫靡さ」の欲情を引き起こす

 

 

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 この界隈からの当初は、欲情を引きずり出すような微妙に明度をそのまま下げた、薄ら暗い色調同時にキャラ全体で使われる色数の多さ、妙に目の表情の弱い顔立ち、もっさりした髪型、太腿に肉付けのある体型のデザインが為され、結果なにやら淫靡な印象を抱かせる色彩・明暗構成です。

 さらに現実の女の子のファッション傾向なんて丸々シカトのR18雌ガキゲームのキャラデザ特有の謎の制服デコラティブが施されております。異常なリボン、謎の花のアクセサリー、特にエリーチカの胸のリボンのデカさと腰のあれはなんでしょうか?

 

 

  時は2010年、さすがに当時ヒットしてる作品のデザインからしても明らかに2歩3歩くらい遅れているトレンドなのは確かです。ヒットさせていくためのデザイン修正は、まずヒットしている作品の様々なトレンドに合わせていくことから始まったかに見えます。この時にはどんな作品のデザインが特徴的だったでしょうか?

ロボットアニメネタ&少年漫画ちょいダサトラディショナル

 

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 実際に動画として描かれる1stPVの時点では、まず動かしていて映えるようなデザインに仕立て上げなおされいます。しかしアニメーション制作のサンライズ的なロボットネタのヒロイン風味、少年漫画のヒロインのような一応可愛く描いてる風だけどあんまり上手くない感じ・あか抜けない感じが残っています。まだ全体的に髪の色をはじめ明度がうすーく落とされた色合いでありで路地裏感・地下感があります。

 

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 ぶっちゃけ、作品によると逃げつつ、真ん中のsf ・s・ dあたりのトーンで
使用する色も分かりやすく多め 最終的なトーンの統一とかはそこまで手を加えない感じ

 現行の少年漫画系はもう少しアクションさせることが目的であり、全体的に中肉中背ー細見で尖ったシルエットです。オリジナルアニメだともうほとんど召喚されないしこれを洗練させるようなウェイトはそんなにかかっていない。ヒットした少年漫画のアニメ化という形では進撃の巨人」がこのデザイン傾向を最も洗練させてると見ます。

 とか言って例に出した進撃はd・gあたりで、キャラに構成される色彩絞ってましたわ・・・
 こうやって悲壮感やシリアスさの深いトーンでありながら、
 キャラクターを描く線は太く描き、悲壮に立ち向かうようにデザイン

 

 まだ少年漫画で描かれるヒロインみたいな感じで、あたりまえの美少女って記号のみで、まだポップなデザインは獲得しきれていません。いかにしてポップな印象の絵柄は変わっていったのでしょうか?何をすればポップと感じられるのでしょうか?

 

 

 

 

ラノベ&だらだら4こままんが原作の再構築コケティッシュ

 

 そう、膨大に出版される原作のアニメ化サイクルのガソリンの一つたる、女の子キャラがメインのラノベ&4こままんがネタ。欲情の比重は少なく、まったりめのデザインの界隈(作品によりますが)。これを各々のスタジオがいかにうまくデザインするかを競っていたと見ます。

 2010年前後にはすでに「けいおん」や「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 などなど、さりげなくキャラデザのトレンドが変わっています。

 それは日常情景で細かく演技出来ることが生えるような頭身の高さや体型、色調の配置の他、かなりデカい部分にキャラクターのファッションなどがかなり今の気配に合わせてデザインされています。おっさんのどあほうR18欲情デザインや、少年漫画トラディショナルのデザインでは丸抜けになっているだろう色調やシルエットのデザインの部分を修正していっていると見ます。

 

 京アニなんかは原作のキャラデザインを、培われたデザイン能力によって止め絵でも生きるし、動画ならさらに生きるデザインにしてます。丸く柔らかなシルエットをおもに、足短くてすんどうの体型、5頭身の高さのデザインにし、空間とバランスよく溶け込んだ造形にして動画での演技が生えるような形にしてます。

 

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 京アニの基本トーン傾向はltからd、ltg、gくらい 明るすぎず暗すぎず 色数も抑え
 シックにデザイン
 そのほか現行の4こま発アニメなどはpやltのパステルなトーンで基調にすることで
 バイオレンスや欲情から手を切ったのんびりだらだらな雰囲気を作ってる印象です

 登場人物全体で使われる色彩の数もかなり絞り、中心となるトーンを基調におよそ3、4色からそれ以上を超えないようにデザインしています。配色も暗くなりすぎず、かといってパステルにもなり過ぎない色調でまとめています。だからと言ってキャラそれぞれが地味に埋没しないように、凄いギリギリのところでそのキャラならではの髪の配色を行っています。

 

 もうひとつ、「俺の妹が~」のほうはあれはトレンド変貌って意味でタチ悪くて、さりげなくメインの女の子はすごい細かくティーンズファッションに合わせたデザインしてるし、私服も家着から外出用まで結構な数が用意されてる。しかもよくよく見るとネイルやピアスなどのメイクまで含めて細かくデザインされてます。

 

 アニメネタの中ではかなりファッションにテコ入れされているキャラがR18のキャラデザインのゲームのマニアというのは、オタク趣味のメタの切り口のふりして新しく、精微なトレンドがどうしようもないデザインのものを見下すマウンティングのように思えますがどうなんでしょうか?

 

 

 「けいおん」との比較も少なくはないラブライブのデザインもおそらくこのあたりの影響は大きいと思われ、シルエットが丸くなり、日常風景に自然に存在しているかのように頭身のバランスや体格などなど配慮が為されていると思われます。

 

 

 

アドバンスドスタイル発の劇画的・作画的テーラード

 

 ラブライブがもう最初からなかったかのようにしているのはリアルな顔の造形・体格のバランスでアイドルをやらすようなそんなデザインです。そう、大友・押井守映画的なデザインというのは当然最初から見なかったかのようにします。踊ってる場合じゃねえ!シリアスに描かれる冷たい現実や心象と対峙する絵柄です。いまどきなかなか見られず、他のトレンドと寄り合って「攻殻」の

新作もポップになっています。

 

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リアルめの造形に加えて、左側の彩度が低く明暗で構成するp・dkgトーン
色数はかなり限定的にすることで、薄ら暗い現実や事件と対峙するムードに

 しかしこの劇画テーラードデザインがアイドルを召喚しなかったわけではない。今敏パーフェクトブルー」がそれでしょう。アイドルの現実が歪む暗黒。そして淫靡。ん?今その映画振り返ると意外にリアルな絵柄な割に配色や映像構成は薄ら暗い、結局R18雌ゲームとほほフェテッシュと一緒か・・・?表情を動画で演技させにくいという部分が共通してたりするのかも・・・

 

 ところであと一つあります。男子アイドルなのですが「少年ハリウッド」は、なぜか、このデザインで案の定表情があまり動きません。なぜアイドルを・・・?

 

 

 

アヴァンギャルドスタイル発エキセントリック

 

 アヴァンギャルド派はデジタル製作による利点を生かしたグラフィックデザインを生かすような・または生々しい描線そのものを生かすような形のデザインを行います。

ここで特筆すべきは中村健治デザインのほうであり、例えで出すなら「ガッチャマンクラウズ」でしょうか?

 

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 すでに次の傾向である、キナコ氏デザインの少女マンガ的なフェミニンなデザインが基本ですが、中村作品らしい原色がエキセントリックに配色されるセンスがあります。

 

 例えば主人公のの髪の色彩配置は洒脱でした。髪のハイライトと影になる部分の分け方、ふつう単純に明度を下げて一つ暗くして分けるくらいでまとめます。ですが、クラウズでは同時に彩度もハマる感じでズラすことによって妙味のある配色を実現しています。

 

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vまで極端にしないにせよ、右上からb・s・sf的な彩度を強めた色調を
主要キャラのアクセントや画面構成に利用する原宿のファッショニスタ的なデザイン
ガッチャマンクラウズ」の場合はテーマ上
Windows8以降のインターフェース・ウェブデザインに大いに広まることになった
フラットデザインのイメージもあると思われる

 エキセントリックめな原色を配置したデザインを基調とすることで、キャラを分かりやすくキャラごとに色変えていくという普通ダサくなるところを非常に良いデザインとしています。

 

 クラウズネタで埋めちゃったけど、要はグラフィックデザインのような観点からキャラクターデザインを行っていくというアプローチを湯浅・中村を代表としたアヴァンギャルド枠が行っていると見ています。ラブライブは別にそういう観点はないです。

 

 

少女マンガ的フェミニン

  欲情のスタートから完全に真逆なのが少女マンガ界隈の多くのデザイン方向です。真逆も当然で、デザインの目的は当然10代から20歳の女の子のマジョリティの感情移入先としたいフォルムです。

 

 長身痩躯で頭身の高い、スマートでモデルのようなシルエット、描かれる瞳は白目と黒目の配分バランスが整えられ、はっきりとしたまつ毛で整えられています。全体的に明度の低い色彩配置ではなく、明るめであり色数は絞ってる感じです。

 女の子の目線からスタートするデザインの場合、こうしてはっきりとした人格や性格を表現する形になります。今やってる「アオハライド」から、すっげえ暗い女の子のお話たる「君に届け」でも基本、ここが抑えられています。ちなみに、ディズニーのプリンセスのデザインの構図もほぼ同じでしょう。

 

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左側上部のit、sf、p、ltgの淡さと暗さ、夢と現実あたりが交錯するトーン
キャラクターに使われる色数はトーンに合わせて抑えめ
原色を多用せずスマートなデザインに

 

 ラブライブもだんだんと目を描くシルエットが丸くなっていき、黒目が全体を覆うのではなく白目の配分が為され、瞳にハイライトが加わっていきます。

 

 初期のロボアニメ・少年漫画的美少女の記号感やR18ギャルゲデザインの文字通り薄ら暗い劣情のデザインからの変貌し、少女マンガ~ディズニープリンセスみたいな明るく人格や性格が見えるイメージの方向に寄ったと見ます。

 

キッズアニメ原色&3DCGカジュアル

 

 子供向けの朝に放映されるアニメもまた、「プリキュア」やら「アイカツ」やら眺めるに基本的なデザイン方針は少女マンガ的フェミニン同様の白目と黒目のバランスの取れた丸い瞳に、大きなハイライトを入れた描き方にはっきりとしたまつ毛っていうバランス、ここまでは一緒。

 

 もともとアニメのデザインは極端にわかりやすくする形ですが、子供向けのはキャラクターそれぞれがほぼ彩度の高い原色でキャラは塗り分けられ、加えてすっごい極端な髪型や衣装のシルエットでデザインされ一目で判別出来るようにする傾向は強いです。 

 

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右端v,b, sの彩度の高いトーンに、多くの色彩を使う。
極端なシルエットのキャラごとにそれぞれ原色を配置して
子供に一発で分かりやすいように。

 

 

 「妖怪ウォッチ」は妖怪の方が主なんで、そっちに原色とシルエットを極端にして、人間の方は色彩抑えめと区分にしてる感じあります。女の子向けに至っては、登場人物がガキの女の子で原色塗り分けみたいなデザインも関係あるのか、みるみるうちに子供だけでなくある層までもが視聴層に入ってきたりもします。

 

 さらにここでやたら洗練されてるのは2Dセル画のムードのままに3Dモデリングによるダンス演出です。どっかでキッズアニメのそれがすごいって記事を見た気がしますが、確かにすごいです。

 

 やっぱ平面表現の場合は絵のウソってのは、たとえ立体的な描き方していても生まれます。が、そこが面白さや躍動に繋がってます。ですが3Dモデルにしちゃうとそういう絵のウソのおもしろい部分が違和感になってしまうことは少なくないです。

 ところが上のプリキュアのなんかのシリーズのやつは3DCGダンスで2Dアニメの絵のウソを上手く表現しててすごいなと思いました。ダンスはフルアニメでバックの3Dキャラはここんところのシドニアや009 RE:CYBORGがやってるリミテッドアニメ的コマ落としという2重構成が不思議に印象深いです。

 

 ラブライブは少女マンガ的な方向からキッズアニメの明るい原色のカジュアルさを混ぜ込むほか、実はすごい研究されてる2Dと3Dの混ぜ込みによる映像と音楽のシンクロの面白さまで含めてこの辺も狙って調整していた、と見ています。(でもこっちの3Dモデル、平面の絵のウソまでは表現しきれてないですが・・・)

 

こうした様々なトレンドを横断しただろう絵柄の完成・そして・・・

 

  ラブライブの絵柄の変貌は、様々な客層の要求するキャラクターデザインの傾向と、それぞれのコアなファンにウケてる部分をすげえ計算していきながら今日の形に仕立て上げたと見ます。

 

 3社合同のプロジェクトであり、ウケたものを研究した2番煎じを得意とするサンライズなど含め、さまざまな客層とそれらが要求するデザインのエッセンスを極めて計算高く取り込んでいき今日に至ったように見えます。

 

 絵柄の変化の歴史から現在のアニメのキャラクターデザインを一望する無茶をやってみましたが、当然ながら暫定7つはそれぞれ独立してるわけでなくそれぞれが影響を乱反射するように与え合って変化していると見ます。今や少年漫画やロボットネタであっても、色調は極端に色数多く配置するのではなく、パステルカラー寄りで丸めのやわらかなシルエットでまとめていたり、キッズアニメのプリパラあたりも他と比較して原色は抑えめで丸めのシルエットです。

 

 そうした様々な傾向のせめぎ合いの中でトレンドになる絵柄が形成され、流行の絵柄と廃れる絵柄が出ていると思われ、ラブライブの絵柄の変化はそんな状況をわかりやすく見せているように見えます。与太話は忘れましょう。でも培われた数多くのデザインが、明日もキャラクターを変貌させていくでしょう。

関連エントリ:映像や構成のイメージ編

今のアニメデザイン傾向を8つに区分けする これらがせめぎ合ってシーンは進んでる(追記と修正版) 

膨大にリリースされるアニメの中で、特に目立っているデザインの傾向を簡単に区分けした場合どんな傾向に分けられるのか?の実験的メモです。なにやら勝手な横文字使ってここまでやってたので、そのまとめのようなものです。 現行のアニメシーンは大きく適当に分けて8つの傾向でデザイン競い合ってると見ております。

 

 

 

 

 

色彩デザイン学

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