17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

中高生を南アフリカより治安の悪い人格に変えるらしい「カゲロウプロジェクト」の「メカクシティアクターズ」

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メカクシティアクターズ 第一話 視聴フル

 

 どうやら昨今の中高生はなにやらフードを被っているというだけで「蜻蛉がどうのこうの~」と呪術を唱えながら人に蹴りを入れたりするという話を見聞きしますが、どうやらボーカロイドのネット発のうんたらプロジェクトに心奪われた人たちがそうなっているということです。

 

 オタクとヤンキーは紙一重。なにか心酔するネタを中心にちょっとしたことで絡む。中高生ならなおさらって書きながら、絡んできたってマジの話なのでしょうか?気が付いたら秋葉原が昔の歌舞伎町のようになり、今の歌舞伎町の方がずっと治安がいいなんてことになっているのでしょうか?両方の街ともここ5年くらい行ってませんが。

 

 というわけで中高生を南アフリカや南米などの特に治安の悪い地域の同年代のように変えてしまうコンテンツらしい「カゲロウプロジェクト」のひとつ、「メカクシティアクターズ」です。現モードを引っ張ってきた雄・シャフトによる今回アニメ化があってるのかあってないかは僕には全く分からないためニコニコのコメントの皆さんから判断していました。

 

 京アニ&シャフトによる2極というのは少なくないアニメファンたちが見立てていましたが、これは動画を動かして生き生きとした画面を見せるサイドと、動画数を減らしてカット毎の演出やデザイン、モノローグによって完成度を高めるサイドの対立ですよね。

 

 もっとさかのぼればそれは宮崎駿押井守の対立感です。片方は少女とメカニックをいかんなく動かす冒険活劇を動画にして、片方は作画枚数を抑えたカットによる情景やバンクの多用、モノローグなどでアニメの構造を崩すことを考える方向に向かうという日本商業アニメならではの対立です。

 

 シャフトはどう考えても商業アニメの根源的魅力と真逆の作りでありながら、ほぼ毎シーズンなんらかの作品をリリースしており、これは日本式商業アニメならではの作画枚数を絞っても演出だけで持っていくスタイルに、デジタル製作によってさらにアート・デザインな領域にまで持っていくことを完成させたことで異質でありながら量産体制を敷いている奇怪な制作会社です。

 

あんま観る側のコンテクスト無しでも皮膚感覚で感動をもらえる「動く」宮崎駿作品よりも、ちょっとジャンル全体の構造だとか批評性どうのだとかを好むサイドは「動かさない」押井守作品を好む傾向があると思いますし、「けいおん」が動画と音楽の魅力を軸に実は大衆的になれる部分があったのに対して、ほとんど動かさない「化物語」はポルノなのにかなり脱構築的なムードの作りでちょっとしたインテリまがいサブカル崩れが引っかかるような作りになっています。なお、まどかマギカに関してはまた別格なので例に上げません。

 

メカクシティアクターズ」はどうあれ気取りたい中高生のファンが多いだろうカゲロウプロジェクトと、シャフトの「動かない」演出→普通のアニメの構造と違う、アートデザイン的な映像→これ分かるほうが凄いわからない奴はカマドウマという半端なスノッブの気取りというのとマッチできているのでしょうか?

 

 シャフト演出もカゲロウプロジェクトもちょっとものを分かってるならばネタが知れている中途半端な気取りで、半端な気取りの中高生から半端な気取りのアニメファンらを引っかけています。マジもんの気取った中学生は実は気取りのまったくない「魔法戦争」みたいな中学生の全能感ものは否定していて、ちょっと背伸びして気取れるものを欲しています。それがたぶんカゲプロ。マジもんの気取ったアニメファンはやたらに宮崎駿を否定して押井守を肯定したり、「シャフト演出の独自性が~」などとのたまいそうです。

 

 ですがオタクは実はヤンキーを証明するかのような方向性であるカゲプロと、いかに労力を使わず自分を良く見せようとする似非インテリ的な方向のシャフトというのは同じ気取りでも相容れない、磁石の同じ極のような気もします。ある種の中学生やある種のアニメファンが気取りを持てる取り合わせなのか?とりあえず、本作でまどかマギカでおかしな解説に至るまでのアホインテリは食いつかないだろう、ということは確かでそれは朗報か悲報でしょうか。

 

 潜在ヤンキーのオタクはカゲプロにはもっと話も動画も動いてほしいだろうし、ほんとは女の子しかいないポルノを観てる自分を肯定したいだけのアホインテリ勢は小規模ヤンキームードのこれには近づかない。「メカクシティアクターズ」は気取りたい奴が気取れない食い合わせになっていると見ます。

 

後頭部にあるフードは被りましょう。でも培った護身術と威圧感はそのままに、ガキに絡まれたら返り討ちにしましょう。ウソです。絡まれたらまず逃げましょう。

 

カゲロウデイズV -the deceiving- (KCG文庫)

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