17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

バディコンプレックスに見るロボットアニメというジャンルの衰退・弁魔士セシルの悪意・2014年冬モードレビュー最終

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 アニメが日常とかいって萌えやら百合やらばかりになっただなんて聞かれますが、そういやガキの戦争のモードの最高峰ジャンルたるロボットネタはどうなってるんでしょうか?ここまでにノブナガザフールだとか眺めてガキの冒険や戦争というのは一様に一つ昔のデザインによる古さが抜けきらないのですが、ではロボットアニメの大メジャーであるサンライズなどは今どう作っているんでしょうか?

 

 

ウィザードバリスターズ 弁魔士セシル 第3話 視聴17分

 

 梅津泰臣作品はガチで18禁界隈にて質の高い作品を作っていた経緯があり、セックスと戦争を知ったガキのモードよりやや上の露骨なセックス&バイオレンスが基調です。例えれば少年ジャンプのパンチラ程度でなくヤングジャンプのマジのセックスも暴力も許容された領域です。面白いもんでこういうセックス&バイオレンスの作風って意外にいないっすね。青年誌には「GANTZ」の奥浩哉などうようよいるんですが。

 

 魔法&法廷。ガキのモードでこれやられると途方もなくトホホになるケース多々ながら、セックス&バイオレンス解禁状態が基本であるこの作家の目線ではとくにその欲求が露骨になってるがゆえにもはや設定が設定を意味しているレベルではないかに映ります。法廷がどうでもよくなるというのも前振りです。

 

 トータルデザインがまた露悪的なまでに魔法少女然としたデザインやロボが出てくる世界といい、ガキのモードで好まれている要素をわざと引っ張ってきている感が強いです(魔法少女ネタに出てくるお付きのペットみたいなの、あれがあそこまで可愛くなくてセクハラまがいとか嫌がらせのレベル)。そのせいか、なんというか悪意の気配をより強く感じます。

 

 「萌え」とか言って直接的なセックスから迂回して百合かBLに行ってるのが今のモードを為している中、ガチでガキのモードで流行ってる魔法少女やらロボやら引っ張りその欲求を露骨に表現するゆえに作品全体に漂う悪意や露悪的な気配が強いです。

 

 

 

 

バディ・コンプレックス 第1話 視聴フル

 

 割とヒーローネタは「ガッチャマンクラウズ」とか「TIGER & BUNNY」など今のこの社会環境、とか言い出すとよくいるバカの哲学・思想系評論みたいになっちゃうのでほどほどにしておきますと、単純にキャラデザからメカデザ、そして画面構成などに至るまでのトータルデザインが旧態依然のフォームに頼ることなく、かなり今の様々なグラフィックデザインの水準を意識して合わせていることで優れた作品が出てきてるように思えます。

 

 対してロボットネタはなにか古いフォームに引きずられ続けている気がしてなりません。「バディコンプレックス」は異様なほど古臭い原色分けの幅の広くパーツのデカい旧態依然の主要メカデザインを見るとここまで今のデザインに合わせる気がないか、とビビります。「TIGER & BUNNY」作りだしたサンライズなのに!一歩進んで2歩下がる、むしろそれこそ老舗でしょうか?

 碌にフックがないままなのですが、しかし本当の掴みとは別にあるようです。主要メカのシステムとか2話のタイトルが「ベストカップリング」で、メインキャラ二人が揃うというようでつまり腐女子狙い!男の子ポルノ方向です。ヤバいですね。

 

 それにしても現実では二足歩行ロボの研究開発とデザインがオンタイムで進んでいたり、いよいよ自動車も自動走行システムの実用化に向けた開発だとか、そしてまた少しヤバいネタになりますが福島原発の作業ロボが強い放射線の中で無力になりみたいな出来事が次々起きているわけで、ロボデザインの環境ってすげえ激変し続けているわけでリアリズムも変わっているのは違いなく、デカいインスピレーションになるはずなんですが、意外にどこもそのあたりのところまで研究してデザインしているふうではないですね。「パトレイバー」は早すぎた気がします。(実写版あれはなんなんでしょうか)

 

 現在のアメリカによるロボットの軍事利用を簡単にまとめたニュースを眺めても、露悪的に言って現実の方が完全に面白いのは確かで、泥沼の中東の事態の中で膨大な軍事費や、戦線に送り出される兵士たちが負うリスクゆえに無人の兵器が前線に送られるみたいな現状が今のリアリズムのレベル、いやそんな大層なこと言わず今の気分でしょう。

 

 

 とはいえロボットアニメにそんなリアリズムなんて言い出したら即、話が成り立たなくなるからそういう面を追いかけないんだ、というのもわかりますが、ではロボットやメカニックの存在は何らかのメタファーとしてのパワーがないと作品に強さを発揮しないのですが、その辺も「エヴァンゲリオン」とか「エスカフローネ」くらい追ってない気がします。(両方90年代ですね。この時代は特に世紀末で行き詰った世相により、アニメに限らず内面や精神をメタファーとする作品が多かったです)

 

 では架空戦記としての説得力でしょうか?ガンダム銀河英雄伝説はあらゆる第2次世界大戦ドラマを架空戦記化したものでしたが、その後になるとベトナムから湾岸戦争、そして同時多発テロ以降の対テロ戦争という新概念が提唱されるなど現代になるにつれ戦争の意味は変貌。現代戦争を架空戦記化するのは「コードギアス」が上手くやっていたんでしょうか?(全く見てない)

 

 ロボットネタは実はエヴァンゲリオンよりはるか前に死んでいるのか?ロボットアニメネタははるかに環境の激変してる現実面にデザイン世界観共にすり合わせる気もなく、ロボットの存在のメタファーとしての力も弱い。そして根拠の無い少年少女の架空戦記まがいというのを見てるとそら日常アニメのほうがずっと女の子のデザインから空気の表現に至るトータルデザインやってるのに負けるわなあ、女の子と綿密なミリタリー知識のミックスに負けるわなあと思いました。

 

 ヒーローものの方がもう少し現行の環境にあわせていってると思うのもやっぱ「ダークナイト」から「キックアス」「スーパー!」「マン・オブ・スティール」などの影響があったからでしょうか?「サムライフラメンコ」なんてまんまですね。

 

 洋画の外圧って意味で振り返っても「パシフィックリム」とか日本シンパのデルトロの日本カルチャー引用のあんなんでみんな大喜びですし、ロボットアニメは新しくなるチャンスを膨大に抱えているにも関わらず、本当にモードが半端なく古いものになってしまってます。

 観たアニメは忘れましょう、というがこれはマジで忘れそうで、培った技術はともかくモードがヤバすぎます。来季でお会いましょう。