17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

アニメ炎上と鎮火のシンクロニシティ

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シンクロニシティの話をしましょう。単なる偶然に何か意味があるのではないか?という考え方のことです。

今年は消防士が主人公、ないしはメインキャラクターである商業アニメが集中しました。『プロメア』、『炎炎ノ消防隊』そして『きみと、波にのれたら』ですね。

最初、アニメで消防士をやけに見かけることを気にしていなかったし、モチーフの連鎖についても、『炎炎ノ消防隊』の作者である大久保氏が、『プロメア』で題材や切り口が似通いすぎており、近い人物に構想を話してしまったことに後悔するコメントが話題になったくらいでした。

アニメに次々と消防士たちが現れ、それぞれの出火と鎮火に挑む姿に思うところはなかったのです。7月18日までは。

本物の放火事件が、まさかのスタジオで起きたことには驚きました。京都アニメーションが放火された事件と、その後のネット上に溢れた言説によって、炎上と鎮火を取り扱うアニメの捉え方が変わってしまいました。

いずれもハイクオリティなアニメーションかつ、複合的な構成を持ったアニメであることも、意味のある偶然と言えるでしょう。7月18日になる前のレビューと、そのあとの変化について少し書きましょう。

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アニメ『炎炎ノ消防隊』は『プロメア』と放映がぶつかったほか、事件の余波を受け、3話の内容を変更しての放映など、実際にいくつかの影響をうけています。ただ実際の内容は、炎上と戦うだけではなく、祈りのようなものも描写されており、今この段階では優れた作画やアクションでできたもの、とも言い切れないのではないでしょうか。

たとえばKAI-YOU様に寄稿した『プロメア』では、トリガーのリミックスの現在を音楽シーンとなぞらえて評価しています。記事公開は事件後の7月22日ですが、執筆は6月末~7月上旬です。

トリガーが過去のアーカイブをサンプリングしたりリミックスすることから、一歩押しすすめて現代ならではのテーマを描いているのもあり、『プロメア』の炎上と鎮火にはいくつかの読みが出来たと思います。それはネット炎上からマイノリティが自らの声を上げることみたいな。

「炎上と鎮火をテーマに、敵味方に分かれた陣営が戦い、さらに黒幕とも激闘を繰り広げる。だけど誰も死ぬことはないし、最後に全員が引き分ける」ということは、非常にしっくりとくるのです。

IGN JAPAN様に寄稿させていただいた『きみと、波にのれたら』では、海や水のアニメートをテーマにまとめています。ですが、これも炎上と鎮火が本編に描かれており、そのトラウマを払拭していく内容なんですね。

『きみと、波にのれたら』はシンクロニシティがとても大きい作品です。とくにアニメートを中核にしているからかもしれません。このアニメは波や水だけではなく、花火や炎上みたいに、火が禍々しく描かれているんです。

そしてストーリーも、失われたアニメートとその回復についてをそのまま描いているといえるでしょう。火が原因ではないものの、消防士の恋人が亡くなり、トラウマを追った主人公が、歌によって水の中に恋人の影を見出そうとしたり、ほんとうは生きているんじゃないかと、必死に面影を探すんです。最後、初めて恋人と出会うことになったみたいな火事の場に出くわし、主人公がトラウマを回復させるようなアニメートは圧巻です。

いずれも炎上と鎮火によって、悲劇を乗り越えていくという内容です。

もちろん揃ったことは偶然です。しかし現実の炎上から、いまだに続くネット上の炎上まで含めて、鎮火するというアニメートからは、何か意味を見て取れるでしょう。優れたアニメートを持つスタジオが焼かれてしまったことに対して、優れたアニメートを表現できるスタジオが、あらゆる炎上を鎮火させる物語を用意したことに、ささやかな意味を読み取れるでしょう。

すいません、『指先から本気の熱情-幼なじみは消防士-』を忘れていました。観たアニメは忘れましょう。培った技術はまとめ直し、モードが過ぎ去るのを横目に、次回にお会いしましょう。