17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

長期化した漫画の公式パロディをアニメ化までする意味

Ads

 

中間管理録 トネガワ 視聴8分

 

板垣恵介福本伸行という、ジャンルは違えど並べて語られることも多い二人の原作がちょうどアニメ化されていますし、並べる形で今回はカイジを……ってちょっとまてよ?トネガワ? 公式パロディ? 原作者は萩原天晴? しかもこの漫画がすごいオトコ編トップ?

本当は『北斗の拳 イチゴ味』『ガラスの仮面ですが』で気づくべきだったんですが、気が付けば80年代や90年代に見ていた作品の公式のパロディ漫画、しかもエニックスが公式で4コマ漫画劇場みたいなしょっきりや別物として扱われてるものではなく、オーバーグラウンドのものとして取り扱われているのが頻発する時代……すごい時代ですね、

 

本当に公式パロディで、しかもしょっきりではなく意外に本気であるというのが増えました。『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』とか、『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』とかどんどん出てきています。

しかし、その中でも『中間管理職トネガワ』の公式パロディだか受け取られ方はガチである、という態度は比類ない。本編の『カイジ』のアニメ化とまったく変わらないデザインからそれは明らかです。川平慈英にナレーションさせるということで「パロディである」という体裁を保っているのですが、ガチ感すごいですよね。原作自体が福本伸行の絵柄やネームをそのまま反映してるように作ってるのもあるのでしょうか。

 これ違うかもしれないですけど、家庭教師のトライでハイジを壊しにかかるじゃないですか。あれを公式で許していて、しかも場合によっては正史の中にすら入りこんでくるみたいな。ぼくはそう思うんですけどどうでしょうか。

 近未来、『バガボンド』の半ガチパロディものが出る可能性

 これ前も書いたみたいな「子供のころ観た原作を何度も作り直される」ことの亜種といいますか、長期化しすぎて新展開が見出しにくくなり、膠着が始まった原作が半分公式のパロディネタをやることでガス抜きしてるのかもしれません。

 

カイジの長い膠着をファンがものすごく感じてるのをユーザーレビューから感じられますし、『ガラスの仮面』が停滞のあまり妙になってしまっているゆえに公式パロディが出てしまっているのかもしれません。『金田一少年』もやはり停滞しているということかも。『コナン』は順調そうなので『北斗の拳イチゴ味』みたいなものだと思いますが…

 

この筋で行くと、次『バガボンド』が意外に危ないかもしれません。長期連載を追いかけてる読者はフラストレーションがたまる瞬間に遭遇しており、原作者のテンションが落ちてきた段階からずっとフラストレーションを抱えて読むことになる。そのフラストレーション解消先がほしくなる。

バガボンドは筆絵による美術館の展示などを経て、いち漫画から日本画の文脈にもシフトしようとした作品ですが、(肯定的な意味で捉えてほしいのですが)つまるところは漫画です。あいまいな美術的な価値に移行しようとしたことが、実際の展開が膠着していることに対しての批判を寄せ付けないようにしているのだと思われますし、また『トネガワ』のようなパロディのガス抜きも起きにくいことになっているのではと思います。

 

『トネガワ』を観てるとみんな心のある部分では面白かったころのカイジに戻ってきてほしいのかもな、ということを思います。いろんな長期連載が完結せず、長期連載のなかで膠着していくという、面白かった漫画がつまらなくなっていくことに直面していくことが頻発する時代を読者は視聴者はどう感じているのでしょうか。

 

膠着した野球の試合のフラストレーションを、観客席の応援団とか一部の客が煽ったりネタにしたりしてフラストレーションを抜く。近年の公式のパロディは球団が公式で応援団を雇い、「試合の流れが悪くなったとしても他の観客を楽しめるようにしてくれ」と指示しているようなもの、ととらえてます。観たアニメは忘れましょう。そして培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。

 

 

 

中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)