17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

児童小説原作なのに異常なハード描写。謎の本気度の『若おかみは小学生!』

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若おかみは小学生! 1話 視聴フル

 

えっ…原作は児童小説なのになんで『プリパラ』あたりのアプローチちゃうの…

そう、第一話冒頭から異常なハードさを発揮しています。全然明るくない静かなBGM、全体を貫く精微なレイアウトやコンテ、描写に伴う緊張感、旅館の老女将がふすまを締める瞬間の不気味さ、息が詰まる中で事故を思い出し流す涙。これは本当に児童小説のアニメ化なのか?

 

こう言っては何ですが、両親が事故で亡くなられるという背景って主人公の小学生が若おかみになるという、無茶な設定を通すための無理やりな装置なことが多々です。『ラブひな』(あー古い作品で恐縮です)で女子寮を浪人生にまかせるという無茶な設定を通すのに、祖母が世界旅行に旅立ちます。

ですがこれはどうでしょう。あまりにも本気。少女が両親を亡くした事実を噛みしめるシーンがあまりにもガチ。家族が無くなってしまい、ひとりになってしまったという描写が切実。どういうことでしょうか。なぜか『ラブひな』を読んでいた過去が恥ずかしくなってくるくらいなのです。

 

そしてなにより凄いのは、本作の劇場版の監督を務める高坂希太郎氏のコメント。「物語は11~2歳の女の子が超えなければいけないハードルが有り」、「叡智を身に付けて行く主人公の成長を周辺の人々も含め、悲喜こもごもと紡いで行く。」ここまではいいでしょう。ですがその後です。少し引用させていただきますと

この映画の要諦は「自分探し」という、自我が肥大化した挙句の迷妄期の話では無く、その先にある「滅私」或いは仏教の「人の形成は五蘊の関係性に依る」、マルクスの言う「上部構造は(人の意識)は下部構造(その時の社会)が創る」を如何に描くかにある。

 

ここまでの本気はどういうことかと、制作を確認しますと腑に落ちました。マッドハウスです。「きみの声をとどけたい」……「よりもい」……それを引き継ぐのは「若おかみ」……いいのか……詳しい話は以前noteのこちらにしています。おそらくこの流れにあります。

でもこの原作に限っては大地丙太郎氏や、児童向けアイドルアニメみたいなリミテッド重視、テンポ重視でもよかったと思うんですが…いや、それでもこのスタイルを通したということはつまり、マッドハウスに何かが起きてるのが確定したということでいいでしょう。

「よりもい」ロス勢は見てみてください。あの空気感の続きがある!いえ、嘘です。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

おまけ: なぜか自分がインタビューを受けました。