17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

オタの「創発性」ってどうやったら動くんでしょうね

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このはな奇譚 視聴まあまあ

おえらい監督だったり思想地図つくったりする人文学者だったりがオタを差して「もはや作家性や作品性を第一にしない」「二次創作やらメディアミックスなやらしてどうたら」みたいなことを言ったりします。すべてのメディアにそれは適応できませんけども、基本無料のTVアニメの界隈に関してはそうかもなとも思います。実際ストーリー構成がほんと優れててもそんなに当たらなかったりするし、キャラクターの方ですごく当たったりしてるのもあるので若干納得したりするとこもあるんです。映像作品という単一メディアとしての完成度の高さはそんなに気にされてないっすよね。まあ、基本無料ですしね。

当のオタの間でもストーリー性を第一にせずにキャラを優先するというえーっと何?も…もえ?萌えるかどうかだって?(検索中)あっわかりました萌え豚?とかって侮蔑的に言いながらも、実際にはキャラ優先しててもじつはそんなにめちゃめちゃ当たるわけではない。作品を放映しても、ほんとに客が作品をネタにして二次創作やらで盛り上がるかというとなかなかそんなこともない。固い言葉をここで使っちゃうんですけど、いろんなオタの創発性を刺激するのってどこなんでしょうね。

創発性とはなんでしょうか。「予測や計画、意図を超えて、予想できないようなシステムが構成される」ということになるんですが、もうすこしこのエントリに合わせてわかりやすくすると「オタが勝手に考察したりキャラクターの二次創作したりしてコンテンツを膨らませていくこと」って意味でここでは読んでいただいてOKです。

 

オタの創発性ということでは、人文系のオタは完成された脚本や監督の意図や作家性ではなく、よく考えるとガラガラで曖昧な作品世界なんだけど、なにか深い意図を想像させる行間を考察させるとこから膨らませてる傾向あるなあと思いますし、創作する側のオタはキャラクターの解釈や行間を埋めるような形で二次創作やったりしてる傾向あると思います。で、そういう考察読むのも二次創作視るのもやっぱ面白いっちゃ面白いですよ。客側がどんどん作品世界の行間を膨らませる流れって予想もつかない部分が多々あるから面白いんですよ。

   

さて「このはな奇譚」ってキャラかわいいんですけど 、これまでの経験上そんなに客側の創発性を刺激する行間が意外にない作品だったりします。女の子を露骨に脱がすシーン入れちゃうと、もうエロに関しての行間がなくなる。行間がなくなるともうそこを想像したりすることは一つなくなるから、オタの創発性がなくなるともいえる。って、「本編にエロ入れちゃうとオタがエロ同人で気持ちの穴埋めすることなくなっちゃうよ」みたいなこと、こんな大そうに言うこともないんですが。この後何が起こるかわからんのですけど、作品の意図を超えて客側が膨らませていってくれるか?というと無い、と言い切りたいとこですけど、わかんないですね。

 

しかしこんなもん、当のコンテンツビジネスをやってる方々がもっとも痛感してることですね。おまけに20年も30年も前から言われてることかもしれません。客側の創発性を刺激する最大の成功例で、ヒットの再現性も少なくないのがいまんとこアイドルアニメで、ブシロードのバンドリがラブライブを追うってのもそういうことかなと思います。そしてけものフレンズはまったく予測できないし、再現性も望めない客側の創発的なヒットだと思います。最初はアルファブロガーのネタとして客側に広まりつつも、回を追っていくうちに世界観の行間を微妙に読み取れ、考察しやすいように作っているのが発覚していくにつれて客側の創発性を大きく刺激していきヒットしていったと思います(この経緯は間違ってるかも 直す気ないですが)。ともかく客側に当時創発性を刺激するような作品がちょうど空席になってたというのもあるのかも。昨年2016年って劇場版の優れた大作が公開され、作品至上主義者的にはいい年でしたけどもオタ側が膨らませられる作品がなかったのもあったりして。

 

実は物語の完成度を高めるほど作品世界の行間ってそんなになくなりますし、キャラクターの行間なんかもなくなるんですよ。作る側が完成度を高めすぎるど、皮肉なことに客側が創発的な膨らませかたをし辛くなったり。だから作品性や作家性第一の人が近年のアニメのヒット作をみると、ラブライブからけいおんけものフレンズまで一見完成度が低く見えるようなことが少なくない。齟齬が生まれる。でも、客側の創発から面白いものも生まれたりします。ラブライブとかすごいですよね、ファンのにこまきSF小説星雲賞とってますからね。

 

 

最後にして最初のアイドル

最後にして最初のアイドル

 

 

そして完成された作品性や作家性を期待するならもう、買い切りの劇場版ですよね。あと、今後はネットフリックスなどサブスクリプションが舞台になるのかも。これだけ基本無料が当然になってると人は事前に金をしっかり払う場所じゃないと作品性や作家性で消費したりしないなとここんとこよく考えます。

なんだかんだで基本無料の娯楽がヒットするのにオタの創発性を刺激するってのはみんな考えているとおもうんですが、難しいですよねーと思ったのでした。いま、けものフレンズがオタの創発性をもっとも刺激する王者の椅子に座っています。ラブライブアイマスが常勝集団です。アズールレーンが追撃を…ってあれはゲームか。観たアニメは忘れましょう。それから培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。