17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

今の30代が子供の頃に観てたアニメをまた観るのは本当に嬉しいのか

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魔法陣グルグル 視聴フル

ここのところ子供の頃に観たアニメやら漫画やらが今になってリメイクされてくるのが頻発しています。ついこのあいだも「封神演義」がリメイクを発表。アニメ化がこれまでされていなかった「寄生獣」や「うしおととら」という名作が近年になって映像化されただけではなく、子供アニメ寄りな「少年アシベ」「ぼのぼの」も再アニメ化。それどころかなんと「笑ゥせぇするまん」までも再アニメ化します。

80年代末~90年代後期という、今の30代が小中学校時代に観ていたテレビの気分が商業アニメでやけにやりなおされているといってもやりすぎでしょう。今季に至っても「最遊記」「魔法陣グルグル」とガンガン系列の作品が再生してますし。

いや、TVのバラエティでもおそらく30代全般に向けただろう昔の「学校にいこう」とか「LOVELOVEあいしてる」とかありますけど、あくまで単発ですからね。マジでやってる深夜アニメでは深刻な気もします。「魔法陣グルグル」がプロダクションIGに非常に丁寧なアニメ化をされているのを見ながら、思わず今の30代が深夜商業アニメで金を落とす太い層なのだろうかと思ってしまいました。

 

このあたりの理由をざっくり探すとabema newsにて記事になっており、こんなふうにまとめられている。

90年代後半はDVDの売り上げで制作費を回収し、利益を出せる作品も多かったのですが、最近は作品に人気声優を起用しBlu-rayやDVDの1巻にその声優が出演するイベントの抽選券をつけるなど、苦肉の策を講じてもパッケージだけで制作費を回収できない作品が多いのが現状です。原作がないオリジナルアニメはもちろん、コミックやライトノベルなどである程度実績のあるタイトルを原作とするアニメですらパッケージの販売に苦戦することが多い中、リメイクアニメや続編はやはり手堅いんです。(中略)

 

 他にも往年の人気アニメを見ていた世代が、アニメを作る側に回ってきたことも関係しています。自分が以前、熱中していたアニメを今度は自分の手で作ってみたいと思うようになり企画を出すパターンです。『宇宙戦艦ヤマト2199』を監督した出渕裕さんは『ヤマト』のファンとして知られていますし、同じく出渕さんが関わった作品では原作グループのメンバーとして参加した『機動警察パトレイバー』が、"日本アニメ(ーター)見本市"というイベントで『パトレイバー』ファンの吉浦康裕さんによってリメイクされています。

 

このアニメ業界に詳しい記者ってなにもんだよとはおもいつつ、随所の解釈は本当かなあ…という気がしてならないんですが。

   

ぼくが甚だ疑問なのは今から20年前の原作に対して再解釈ではなく順当な原作再現を心掛けているという姿勢そのものです。だって20年も立ってるんですよ?さすがに当時とは何もかも違うわけじゃないですか。リメイクアニメが何よりもひっかかるのは、時間経過による再解釈よりも原作に忠実であろうとすることでもあるんですが…

 いやいや、漫画とアニメは別のメディアであり、さらに尺が決まっている中で原作に忠実であることがどれだけ難しいことかも承知していますし、作家性を試みようとした監督が原作を奇妙な再解釈をして地獄を見るような出来にしてしまった例があることも承知しています。リスクヘッジ感が強すぎるのが嫌、というのがぼくの感情ですね。

とか何とかいいながら、「魔法陣グルグル」は随所に同90年代に流行ったアニメネタなんか(最近のエピソードではセーラームーンとか)も混ぜてるあたり、90年代当時の気分の懐かしを意識して組み込んでいるからまあそれなりに嬉しいのかもしれません。クローズアップのカットで線が荒くなるのを、ピクセルアート(昔のファミコンあたりのドット絵のスタイルの総称)みたいに解釈しなおすとか、地味に芸が細かいことがやれるくらい、さすがにプロダクションIGのトータルデザインがうまく、もともと原作者の衛藤ヒロユキ氏がDJも作曲もやるくらい音楽趣味が良いことに配慮したのか音楽もよかったりで観ててけっこう嬉しい感じはあるか…とか書いてたらここまで書いてきたこと、ちゃぶ台返しですね。本気で観てるわけではないけど、こういう細かいとこを嬉しいと思ってしまうからリメイクアニメがある。観たアニメは忘れましょう。それから培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。