17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

萌えが生みだす裏の過剰さが怖い

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セントールの悩み 視聴10分

 

 

昔の漫画やアニメを観ると「過剰だ…」と思うことはないでしょうか。梶原一騎作品の大リーグボール養成ギプスしかり、野球の試合で死者が出るまでの闘いになるアストロ球団しかり。泥臭くあがき、人格が変わってしまうまでやりあうそんな過剰さ。子供のころにみて怯え、中学高校でネタとして爆笑に転じ、社会人になってから裏にある悲哀に気付くあれですね。

 

時を過ぎ現代。時代は泥臭さを消した、アニメ基調のきれいなイラストレーションのような画風やシナリオが一般化します。1970年代のジャンプと今のジャンプを見比べればもうそんな過剰さとは縁を切っているのは一目でわかるでしょう。子供の頃から安心、中学高校でも安心。かと思いきや…現代ならではの過剰さが噴出しているのは、まさしく一見きれいなイラストレーション的な、アニメ基調の場からなのです。

 

過剰さの根底にあるのは、萌えに向けられる無尽蔵かつ多様なバリエーションのある性欲みたいな。ほんとこればっかりはどんなにきれいなイラストレーションでもマジで過剰。エロHENTAI界隈では絵はふつうに見せかけてギアは5速に入ったままです。時間が経つにつれ過剰さは増しており、顔は普通なのに精神状態は崩壊寸前まで尋常ではなくなっている人のようになっています。

 

セントールの悩み」は過剰さが常態になってしまった時代が生んだ狂気です。巨乳のケンタウロスがキスしたりお風呂に入っていたりする。馬の胴体の部分も服を着てるってことは、あの世界ではいちおう隠す部位をそういうことだと認識してるってことだよね…あとよく考えたら馬なのに自分で走らず乗用車を運転している。何してんの?「モンスター娘」とかあったけど、こちらはジェネリックなふりをした危険ドラッグですね。

   

過剰さの前に慣れていない人は恐怖を感じることは少なくないでしょう。子供の頃に観たジョジョが怖い、カイジが泥臭く辛いなどあのあたりの漫画がなれていない頃不気味で怖かったという記憶は少なくなくあるでしょう。ぼく個人はあの花やガルパンが地方復興に寄与したり、公共の場にアニメ-ションが関わること自体は大賛成です。が、アニメやら萌えやらを起用する側が「オタクは一般消費者の100倍くらいの効果かある」くらいの短期的な結果以上のことを考えずに安易にやっちゃうと、現代の萌えネタが水面下で煮えたぎらせている過剰さを公共の場に見せてしまい一部ネットでもめるという事案が発生するのでした。

     

そんな日本国内で過剰発達した萌えに向けられる性欲のバリエーションに対応しつつあるのが本作を製作している中国の制作会社・絵夢。ついこの前までは「霊剣山など中国のWEB漫画のアニメを日本でもやって名をあげるぞ。でも日本市場のアニメってどうアプローチしたらいいのかしら」という感じの作品を製作してきましたが、この作品に着手してるあたり何かをつかみ始めているかもしれません。

でもさ、中国の野心的な制作会社が日本の萌えの奥にある過剰さに気付いていくって構図とか仮定してると、なんだかある種の風刺画みたいにも見えて嫌ですね。過剰さはいつも現実の持つ皮肉さの前に敗れるということをおもいだすような。梶原一騎が教えてくれたような。観たアニメは忘れましょう。培った技術やモードが海外流出していくように、次回お会いしましょう。

 

セントールの悩み 15 (リュウコミックス)

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