17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

オタクアニメが結局「ライフスタイルのインターネット」を一番表現してる

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 「エロマンガ先生」をざっくりみていますと、伏見つかさ作品の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』に続いてライフスタイルにオタクネタがすんなり入り込んでいるという点が毎度印象深いです。A-1のアニメのムードもライフスタイルとしてのそれを描いている感じです。

 そのなかで改めて思ったのは「ああやっぱりインターネットの扱いがすんなりライフスタイルとしてうまく描かれているのは結局深夜アニメしかないのかな」ということです。

 

インターネットの扱いがこの世で最もダサいのが邦画と純文学 

 前回は商業アニメを本気で作ると結局岩井俊二みたいな邦画になる、みたいな話をしたんですが、そこで出た結論は下手に邦画を目指すと商業アニメの粗悪な面白味がなくなるとも考えたのでした。

 なにより、邦画ってある題材を扱うのが一番ダサいメディアでもあるんですよ。インターネットの扱いなんです。だいたい『匿名で傷つかない位置から誹謗中傷する心無い連中のたまり場』という扱いで、登場するサービスがおおむね2ちゃんねるニコニコ動画Twitter。作品世界のライフスタイルとは切り離されてるんです。なんとかLINEが自然にライフスタイルに組み込まれているくらい。

 SNSとか動画サイトとか取り扱うのが最もダサいところが邦画。純文学がネットを取り扱うのも同じくらいきつい。邦画や文学はリアルタイムで進行してる先進的なメディアを取り扱えない。せいぜい、メディアの浸透期に一時的に描かれたくらい。思い当たる限り、邦画だと90年代の「リリィシュシュのすべて」(あっ岩井俊二ですね)とか黒澤清の「回路」とか。純文学だと村上龍の「共生虫」とか、綿矢りさの「インストール」とかでしょうか。それ以降、邦画や純文学で描かれる登場人物ではコンビニで働き続けたり、中卒で職を転々としたりの「貧困」「破滅」あたりがライフスタイルに描かれるが、インターネットは登場し辛くなる。

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 昨年観た邦画でベストの一つに「ディストラクション・ベイビーズ」という、柳楽優弥主演の素晴らしい邦画があるんですけど、やっぱこれもある意味典型的な邦画的な、純文学的な面白さであって、インターネットはライフスタイルから完全に切り離されているんですよ。

 

 

 アメリカのメジャーな実写映画が比較的オタクやナード、ギークに関係なく、ふつうにライフスタイルの中にインターネットが組み込まれているのと比べてけっこうな差を感じるのはそこです。邦画でインターネットが「匿名の暴力」ではなくライフスタイルで描かれたのって、結局オタクが主人公の「電車男」の実写が最大の成功作っていうのはどうも…

伏見つかさ&A-1アニメのライフスタイルとしてのインターネットとオタク趣味の描写の自然さ

 一番うまくやってるのが結局ラノベ・アニメ・ゲーム。オタク界隈とインターネットが密接に結びついている。インターネットがライフスタイルとして普通に描かれている、ある意味唯一の媒体なんです。

 

  伏見つかさアニメのなにが優れてるのかってあんまり特異な、とか異常な、とかではなく、ライフスタイルのなかでふつうにアニメやゲームやインターネットがすんなり収まっていることではないでしょうか。ティーンのファッションモデルがオタク趣味、という「俺の妹が~」なんかは今見るとぜんぜんその趣味から遠いように見えるファッションモデルとかがふつうにオタク趣味を公言する時代を先行してた気がします。

 それに比べると「エロマンガ先生」は引きこもりでペンネームでなんとか仕事柄交流していたなんて、インターネットやオタクで描かれがちなネガティブさがあっていささか後退した印象はあるんですけど、やっぱりインターネットを介してライトノベルイラストレーターがタッグを組んでいくという流れがすんなりはまっています。

p-shirokuma.hatenadiary.com

 これを書いてる時にちょうどはてなで話題になっている記事で似通ったのが出てきました。ぼくは逆にオタク趣味がインターネットを通してみんなで楽しむというライフスタイルに自然に溶け込んでる現実を思った以上に描けてるとおもうんですけど、ある現実の描写を志向するはずの邦画とか純文学などはそんな現実に反応できてなさすぎる。

 ホントはもの凄くインターネットはヤンキーだろうが貧乏だろうがライフスタイルに入り込んでいるはずなんだけど、なかなか描ききれてないのに対してオタクネタ、とりわけ伏見つかさアニメはライフスタイルとしてのオタクやインターネットを描くことに優れてるのではないでしょうか。

 意外に「ありそうでない」のが「俺の妹が~」の実写化なんですけども、死屍累々のライトノベルアニメの中でももともとの原作が意外に先進的なライフスタイルを描いてるもんでもある、とおもうので、池田エライザと野沢周平あたりを主演に据えてめっちゃうまく作ればライフスタイルとオタクとインターネットの現在を邦画でわかりやすく描けるかもしれません。おっと、TMAのはカウントしませんよ。観たアニメは忘れましょう。それから培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。