17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

『けいおん』『日常』はこのクオリティでもおかしくなかった『小林さんちのメイドラゴン』

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小林さんちのメイドラゴン 視聴10分

 

 またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 ここ数年を振り返っても京都アニメーションが『聲の形』『ユーフォニアム』『ファントムワールド』とどんだけの全力投球してたかを考えると、ほんのすこし凪の時期に置いているということかもしれません。前回取り上げた『南鎌倉高校女子自転車部』が企画に対して異常なくらいの全力投球をしているのと比較すると、ほどほどの原作をほどほどの技術でアニメ化してる本作は、まさに凪を感じさせます。萌えやゆるい日常のアニメ化というなら、『けいおん』はこのクオリティでも十分成立してたわけですよ。

  

 ほんとう、京アニはゆるい原作に対して異常なくらい全力投球してブレイクスルーしてきたんだなあ…本来ゆるめ(に見える)原作の『日常』とか、そんなに情報量を搭載しない、非リアリズムでいける画風を作画の面白さに全力投球するとかさ、あれも企画の規模を考えると『メイドラゴン』くらいのクオリティでもいいわけですよ。

 

 商店街のあっさりした美術とか、過去の『たまこまーけっと』のさりげなくものすごい繊細に計算し、色彩配置を行っていた美術を思い出すとこれも流していますよ。それでも「雑」とかいう印象はないし、商品として成立するレベルを保っています。もともとの原作が肩肘はるものではなく、企画的にはこれくらいのクオリティでちょうどよいのです。

 

 しかしあらためて思うと、アニメ化される多くの原作って萌え&ゆるい日常のものってのがいまだに多いわけじゃないですか。正直、どれがアニメ化されたとしても『メイドラゴン』くらいのクオリティでいいわけです。でも野心的なスタジオはそれで終わりにはしたくはない。そこでスタジオによっては様々な演出や技巧が凝らされるんだと思われます。

 

 京アニが凪の時期にあることで、かえって過去の代表作がいかに単なる萌え&日常をアニメにする程度の企画を大きく逸脱するレベルのものを制作していたかを思い知らせてくれます。でもこうも言えるかもしれません。ほんとはどこも『メイドラゴン』くらいでいいはずなのに、異常なクオリティを発揮しているとしたらなんかスタジオに意図や目的があるんだろうなあと。前回とりあげた南鎌倉高校女子自転車部』は、まさにそんな意図や目的を感じさせる出来でした。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。