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葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

アニメで最も難しいと言われる自転車を描くためか、今期随一のクオリティを発揮 『南鎌倉高校女子自転車部』

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南鎌倉高校女子自転車部 視聴19分

 

またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。なんでしょうか?今季ではかなりクオリティを何でここに発揮しているんでしょうか?その理由を考えるに、そもそもの「自転車」というモチーフがアニメにとっては大きいからかもしれません。

 

企画的には『ばくおん』とか女の子と趣味ネタ。一見してそこそこだけ興味をもてる内容なんだと思うんですが、そのデザインは相当にタイト。やけに綿密な背景美術、手前から奥移動で使用されるCG背景の自然な使い方によって自転車が疾走するアニメートを徹底しているのです。

 

 

 国内のアニメータ―を代表する一人、北久保弘之氏はaskにて自転車をアニメで描くことの難しさをこう語っています。これをパッと読むだけでも、自転車がメインのアニメって長編で実現していくのは実はものすごくしんどいことなのでは…「茄子~アンダルシアの夏」とかヨーロッパのアニメ「ベルヴィル・ランデブー」とか劇場版アニメのクオリティのものが目立ったと思います。

 

 現在では3DCGが発達したおかげで自転車もセルルックで表現できるようになり、作業量の困難さで連続アニメ化が困難であっただろう「弱虫ペダル」のアニメ化まで実現できるようになりました(もう少し詳しくリサーチすれば、弱虫ペダルがTVアニメ化することのエポックさもあるのかもしれませんね)。

 

 とはいえ、自転車という題材をメインに据えることは、おそらく技術的な要素が多分に強いのはあるかもしれません。日本アニメ(ーター)見本市の「HILL CLIMB GIRL」などは特にそういう自転車の描き方をしています。

 

 さて「南鎌倉高校女子自転車部」なんですが、早い話「女の子&趣味」系の企画と考えるとクオリティが不当なくらい高すぎるんですよ。バイク業界の活性化とかも担ってたらしい「ばくおん」でも、こんなにクオリティは高くない。というか、企画の広がりを考えるとゆるくしているくらいでいいんです。事実、原作漫画はほどほどのゆるい感じを保っています。

 にもかかわらず、美術や演出、自転車が疾走する描写は異常なくらい力が入っています。これはやはり、アニメで自転車を描くことの困難さと闘うためと見ました。『ガールズアンドパンツァー劇場版』が「女の子と戦車のネタ」という企画ものから、実は本編は戦車そのものが轟音を発して激闘を繰り広げることそのものがメインになってしまうように、これももしかしたら「女の子と自転車」を超え、TVアニメという枠内で本当に自転車がかなりリアルな世界観のなかで、疾走していくことそのものがメインになるように挑戦しているのかもしれません。

 

 今期は企画的にぜんぜん心惹かれないタイトルは多いと思いまずが、水面下でたぶんチャレンジングなことをJCスタッフ&A.C.G.Tはやろうとしてるんだと思います。自転車の「ガルパン」になるか否か。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

 

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