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17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

今季のアニメーションの1話だけを観て今のモード(形態の流行)を全て決める最悪のアニメレビュー

実はディズニーのハードボイルド「ズートピア」感想

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 ディズニーが長い暗黒期を経て、1989年の「リトル・マーメイド」の成功から立て続けに「美女と野獣」「アラジン」などなどのクラシックをほぼ毎年のように生み出していた時代を「ディズニーのルネッサンス期だ」というそうです。

 

 ところがその後のディズニーはまたピクサージョン・ラセターがディズニーのクリエイティブ・ディレクターに就任して以来、ここのところの「アナと雪の女王」「シュガー・ラッシュ」「ベイマックス」などなど立て続けにまったくの別ジャンルの作品で、それぞれ意味深い傑作になっていることを持って「ディズニーの新たな黄金期ではないか」と言われています。

 

 いままさにそう呼ばれるにふさわしく、「ズートピア」は(たぶん)ディズニーでは珍しいだろうシナリオ構造で作られていると見ました。

ハードボイルドもしくはノワールの効果 

 

 そのシナリオ構造とはハードボイルドもしくはノワール映画と呼ばれる、探偵や警察、はたまた殺し屋などを主人公とした物語です。これらは一般の所属や社会から少々外れた位置にいる、気難しい探偵なり刑事なり特命係なりを主人公に、とある事件を担当していくというのが主です。

 

 しかし、所属や社会から外れた主人公がそうした事件を追っていくうちに、単なる一事件に収まらない、社会全体の大きな問題にかかわっていくというふうに話が広がっていくのです。

 

 「ズートピア」ではすでに「とても社会派な作品だ」という感想がいくつも見られるのですが、ハードボイルドやノワールはもともと一般から外れた立場にある主人公だからこそ、社会からすこし外れたところからものを見つめる形になるために、事件を追いかける中で社会全体の歪みに関わっていくことが少なくないのです。

 

 表向きはディズニー的なあらすじではベタな「誰にも叶いっこないって夢を実現しようとするうさぎのジュディ」なんですが、実際の内容は逆転して「ズートピアの慣例から完全に外れた新米が、この都市の歪みに関わることになる」というハードボイルドやノワールの王道の展開になっていくのが痛快でもあります。

 

 ところがハードボイルドやノワールは単なる「一般から外れた主人公が事件を追う中で社会の大きな歪みに関わる」というだけではありません。主人公たちが一般から外れた立場であることから社会を一歩離れて見通す形になるように、もう一歩進んで、メタな話になりますがジャンルそのものさえも一歩離れて見通す形になっていることです。

 

ディズニーの動物もののジャンルも定義しなおす

 

 そう、「ズートピア」のハードボイルドの効用は、現在のアメリカの社会を模した問題の描写、というだけではなく、ディズニーのお家芸でもある「バンビ」から「ダンボ」などなどの動物アニメーションに対しても、これまでステレオタイプの性別や人種の偏見を動物に当てはめていたことに対して批判的になっていることです。

 

 ちょっとレビューをお借りさせていただくと、映画批評ブログ「SUPERBED-ASS」さん(早い段階で「ズートピア」の優れた点について書かれており必見です)で言及されているのですが、かつてのディズニーではカラスなどのキャラクターにはまんま黒人のステレオタイプが当てはめられていたり、第二黄金期のディズニーであっても「ムーラン」などアジア圏を舞台にしたものでも偏見から作られてしまっているところはあったとのことです。

 

 そうした動物アニメーションの方法を洗い直したというだけに留まりません。ディズニーで女の子が主人公のアニメの慣習すらいじってるのです。ちょっと前の「アナと雪の女王」までもネタにしてるのがヤバいところですよ。ズートピアの警察に就任したジュディに対して「ミュージカルのように歌って何もかも解決するものじゃない。ありのままにいろ」というセリフ(間違ってたらすいません)を言い放つ署長のシーンはもういろいろ取り沙汰されてるのだと思うのですが、この辺の間合いの取り方がちょっと凄まじいですよ。

 

 これはジブリで言ったら宮崎駿のやってるアプローチに一言申してるようなもんですよ。「純朴な少女がなにもかもを解決してしまうとかウソだろ、大人の女が怖いのかよ」みたいなことを作中で言わせているみたいな。でも日本で「一般から外れた奴が活躍し、ジャンルごと批評しちゃうようなハードボイルド作品」つったら結局、押井守の「パトレイバー2」あたりなのかなあ…とも思います。あれも当時の日本のアニメの手法からもともとの「パトレイバー」というタイトル全体に批判的な作りでしたね。

 

 かくしてハードボイルドの方法を持って、ディズニーをはじめ、ありきたりになりがちだった動物アニメーション映画ではっきりと人種や多様性ってことに落とし込んだ点で現代的で一歩推し進めた内容になったし、またそれが行き過ぎてこれまでのディズニー映画にも批評的なところまであるくらいです。

 

 話が長くなったので一言で言ったら「はーねずみのマフィアのゴッドファーザーかわいいな」という映画です。まあー今回完全にテキスト批評でしたけど観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

 

ディズニー ズートピア ビジュアルガイド
 

 

 

 

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