キズナイーパー 視聴フル 制作・トリガー
またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。岡田麻里脚本って面白味のコアが対人関係のあやにあるから、これまでは情緒的というか、間延びした演出の多いスタジオや監督と組んでる印象があるんですが、このハイスパートなスタジオと組むと言うのは明石家さんまとバカリズムが組むドリームマッチみたいなトンデモさを感じたのは確かです。
さてトリガーの2本目です。こういう中二病人間ドラマが基調のデザインって、あんまりテンポを考えたカットの切り変えってやらないものだと思うんですが、そこはトリガーなので通常の中2病よりもテンポが詰まっており、カットの切り替えなどがかなり軽快です。こういう内容のわりにあんまり主人公たちのしょうもない感情や自意識に耽溺するような瞬間が無いです。
「ルル子」のときに書いたと思いますが、なんだかんだでトリガーのデザインは日本式とアメリカ式のリミテッドアニメーションの技術を結集したところと思います。そういう技術は、自意識に耽溺しちゃうような方向と真逆なので自然と距離を置いてくれるんですね。
これはアニメ・マンガ・ゲーム界隈でデザインを行ってる三輪士郎のキャラデザインの間合いもけっこう大きいかもしれません。がっちがちの萌えとか耽美みたいなところよりももう少しデザイン的な比率や色調のルールに合わせてるキャラクター造形というのは、現在コザキユースケやコヤマシゲトらがトップにあると思うんですが、彼らの手法に三輪士郎が近いことも、中二病的人間ドラマのグダグダに耽溺することから離れてると思います。
そのおかげか、テンポ良く進むだけで一転して、ラノベやアニメに慢性的にある中二病的な部分をパロディみたいにすら見せているかと思います。スローテンポのバラードをBPMを早めにしたパンクでカバーしてるみたいな感じでしょうか。「ウィクロス」(まあこれは優れてると思いますが)みたいな中2病人間ドラマ特有の情緒的でダラーっとしたグダグダな感じが観てる人間にへばりつくかのようだったんですが、まあそれとちょっと距離置いてる感じありますね。
つまりは岡田麻里包囲網が制作スタジオやキャラデザインと共に出来ていると思われ、ワンクールかけて中二病の人間ドラマグダグダ脚本が勝つのか、それとも中二病的な部分を強いデザインが突き放してしまうのかという戦いが始まっているのです。
もちろんぼくは「ここ数年来の中二病人間ドラマが高度なデザインで演出されることで、逆にパロディに見えていく」ようなトリガーの勝ちを願っております。まず泥仕合になることも見えつつ観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。