17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

ポップに見えて暗黒を予感させる「ラクエンロジック」感想

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ラクエンロジック 視聴フル 

 

 またひとつ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げるための礎です。

 

 カードゲームとのメディアミックスとのことですが、一見キャラクターデザインもシナリオも既製品のようで味気ないはずなのに、不気味な印象が残ります。これなんなんでしょうね?

 

 

 基本は瞳を丸めに描き、ハイライト多め&白目も多く描くのに加え、髪の毛ツンツンだったりリボンはウサギの耳みたいになるまで極端なシルエットを加えるというデザインです。それはたとえばアイカツとかとりあえず子供向けの客層を狙うデザインでよく見られるそれです。いまやそういうフォームのトップはラブライブ!でもいいかもしれませんね。

 

 「アイカツ」や「ラブライブ」なんかでは基本的に原色に近い色ではっきりとキャラデザインされていて、素直にその客層向けにわかりやすくなります。ところが、そういうポップさってのは一歩視点を変えれば地獄に転じる可能性というのもよくある話なのです。

 遊園地のピエロが殺人鬼ねたなんてほんとよくある話だし、去年の「コングレス未来学会議」でもフライシャー兄弟のポップなキャラクターと言うのがアメリカ映画産業の何もかもフィクションになる暗部と表現した瞬間、えげつないほど不気味に映るような感じです。

 

 「ラクエンロジック」がポップさから転じて地獄に感じる理由は、まず彩度が薄く、陰鬱な色彩のトーンが関係あるかもしれません。タイトルロゴに使われてもいるエメラルドグリーンが随所に使われる中で、キャラクターデザインに使用される色調は意外なほど彩度が抑えられ、色がフェードアウトする形でグラデーションが髪色などにかけられています。制服がグレーってのもまた意外に明るくない印象のを使ってますね。

 

 変身後の戦闘シークエンス、たぶんここはセルルック3DCGで人物もアクションさせているのですが、2D手描きのシークエンスとの境界があまり感じられないようになっています。ふつうこれは技術的に高いね、で終わるんですが、これがまた不気味な印象に一役買ってるような気がしなくもありません。

 

 ラブライブからガルパンまで2D手描きとセルルックの違いは素人目にもバレバレでしたが、それはそれでよかった。なんかこのあたりの巧みさも、意外に暗鬱とした色彩設計と、メインカラーのエメラルドグリーンとも相まって不気味さに一役買ってる感はあります。

 

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 結果、ポップなフォームのふりして不気味で憂鬱な感じが、意外に手塚治虫の持つ空気にも接近してる気がします。「おそ松さん」があんな感じでポップかつグラフィックデザイン的なら、今多分鉄腕アトムなどなどを再アニメ化する際の色彩構成はこれがベストなのでは。

 

 

 なんとなく動画工房は去年の「プラスティック・メモリーズ」など商業アニメーションのケレンをケレンのままに、別の美的な視点に変えるとか、視点をズラすようなデザインをちょこちょこやってる印象有ります。京アニはアカデミックな技術で距離取ってて、シャフトは省力でデザインして、トリガーが日本商業アニメのリミテッド部分を美や面白さに生かそうとデザインしているのと比較するとですが。

 

 あとはそんな別の意味に変わったポップなケレン味に、脚本や企画がついていくことがあれば、意図的な違和感を作り出すデザインがいろんな人に伝わりやすい気がするんですが…あっそれやったら輪るピングドラムになるのか…生存戦略!観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。