17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

日本最低のブログが選ぶ2015年アニメーションベスト10

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セックスか戦争を知ったガキのモード2015年ベスト

 

 あけましておめでとうございます。基本1話5分くらいしか見ない最低の書き散らしによる2015年のアニメーションベストです。

 

 次点・μ's紅白出場時のラブライブ新作カット

 

 アニメ紅白の企画のトリだったんですが、ややパステル寄りの色彩設定、細やかなアニメートの質はTVシリーズから劇場版全部含めて最高のクオリティでした。さすがアニメ紅白です。

 

 ちなみに劇場版に当初期待してたのはこれくらいのクオリティでした。

 

10・おそ松さん

 

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 日本の漫画アニメ特有の表現をアートやデザインのサイドから再構成する手法は、現代美術からCMに至るまでここ10何年の間に繰り返されました。その手法がまた漫画アニメ側に帰ってくることで、ちょっとした前進があると思います。

 

 

 

 今年は実はそういうデザインがけっこう多くて面白かったんですが、どうしても売れにくかったです。そのなかでも商業的なレベルで大きく成功させたのが本作ではないでしょうか。赤塚不二夫の原作絵を、ビビットな色彩のデザインでまとめ上げました。

 

 一方、客層に合わせた笑いのレベルってこんなんなんだ…という絶望。パロディやってる時が超強くて、それに頼らずその他になると超ゆるいという。よく「芸人は内輪ネタばかりでなにも芸やらないじゃん」みたいな批判あるけど、そういう笑いのアニメ版な感じ。

 

 こうしたデザインを取っているだろう他の作品がなかなかヒットしない中、第一話からバリバリのパロディで話題を呼びつつ、冒頭のアイドル学園ネタで「これ実は女子向けなんですよー」みたいに誘導する戦略がすごかったです。ぼくの今年のベスト1もこれくらい周到にやってたら違ったのでしょうか…

 

9・月夜&オパール(シシヤマザキ

 

 

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 自らをロトスコープにしたアニメートによって、ノイジーなアナログTVの画面の中、不気味な歌謡曲の中で蠢く。すでに商業のルミネCMなどでポップなイメージを確立しているのですが、その裏側の禍々しさがこの作品に凝縮されています。

 

 そして星野源のバックにて紅白デビュー、おめでとうございます。さすがアニメ紅白です。

8・ガッチャマンクラウズインサイト

 

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 すばらしくコンセプチュアルな内容ながら、テキストもアニメートもそれに追いついていないのが残念でした。とはいえこれも「日本のアニメマンガ特有の表現をデザインで再構成再評価したものを逆輸入」系で上手くシナリオに繋げたもののひとつです。SNSをテーマにフラットデザインと隣接したとこの良さは前作からでした。

 

7・コングレス未来学会議

  

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 こっちもコンセプチュアルな部分がぶっちぎりで強すぎて、実写部分もアニメ部分も保守的なとこあるのが意外に抜けが悪かったりするのですが…質を作りこまない方がコンセプチュアルの強さが伝わるってあるじゃないですか。ハンターハンターでネームで出されたほうがテキストそのものが率直に伝わっていいじゃないですかみたいな。

 

 押井守あたりと比較されるかと思うんですが、皮肉さと虚無感がまぜこぜになった感覚が全編を支配しています。いまや実写映画も合成やCG調整なぞあたりまえであり、すべての現実が何なのかもわからなくなった後に広がる幻覚として展開されるアニメパート。アメリカの「ベティ・ブーブ」のフライシャー兄弟のようなそこには

 

6・ニンジャスレイヤー フロムアニメイション

 

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 精微なデッサンによってリアリスティックな方針だけがアニメの正解というわけではないでしょう。特に大真面目にリアリズムを追う作りにすることは、膨大な労力がかかるものなのです。

 

 トリガー&今石洋之は屈指の作画集団と見られがちだと思いますが、実際は作業量をいかに減らしながら、なおアニメとして成立させられるかという日本式のリミテッドアニメーションを追及

 

5・I can Friday by day!

 

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 アニメを1話5分だけ見るってくそスタンスは結局すべてのアニメを短編のアートアニメを観るようなもの…とか言い出すから、ここは最低なのです。

 

 商業アニメーションのデザインの最先端は日本アニメ(ーター)見本市で見ることができると考えているんですが、その中でも本作の鶴巻和哉のちょっとした距離を取ったデザインぶりが魅力的でした。

 

4・未来はヤ○イ

 

 

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 異色の映像制作ユニットAC部がまさかの西友CMに起用!スパイラル・カミガタの奇妙な6つの予言が炸裂し、西友にどれほどの経済効果がもたらされたのかは謎のままです。

 

 そして関ジャニ∞のバックにて紅白出場おめでとうございます。さすがアニメ紅白です。

3・ルパン3世

 

 

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 山本沙代・小山健らが70年代のファーストルパン・原作ルパンの猥雑さを救い上げる試みが、本家に戻ってきました。

 

 特にヒロインのレベッカのデザインがなにげに凄い。ファーストのデザインのリバイバルみたいな絵柄に合わせつつ、普通に今のファッションで収まってるってのは難しいことです。ほかの作品でも古い原作を今風にしようとして今っぽい要素を投入するも全然センスが分かってないような死屍累々がありましたからね…(「峰不二子という女」のオスカーもキツかったしな・・・)ルパン三世のリブートを決定付けるベストキャラクターデザインではないでしょうか。

 

 

2・インサイドヘッド

 

 

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 単純な哀しみを消そうとするあまり、自分が壊れていってしまったり、初見のキャラクターの印象や、扱うテーマが直感的に面白いかどうかな部分はあれど、ふたを開けてみればピクサーの中でトップクラスに入る屈指の傑作です。人間の感情というものや心というのは脳の反応の一種なのだよ…という視点をベースにして物語を構築しているゆえなのか、不思議にクールな印象があります。

 

 イマジナリー・フレンドとの別れ、そして成長と共に変わる感情の質・・・どこかクールに感情というものを取り扱ったところがあるのに、何でオレはこんなに感極まってしまっているのか?という稀有な感覚を得た作品でした。

 

 そしてアニメート的にはデヴィット・オライリー的な3Dアニメーションの抽象ネタをぶち込むあたりももの凄いのでした。

 

 

1・ローリング☆ガールズ

 

 

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 今年のオリジナルアニメはもの凄くデザイン的にも作画的にも素晴らしい一方で、「この作品は一体どの客層を想定しているつもりだ?誰に見せたいんだ?」「感情移入出来るキャラクターはいるか?そしてその描写は?視聴者に次回を見たいと感じさせてるか?」という、商業長編アニメで重要だろう企画力と脚本力の著しい低さが目立ちました。

 

  ローリング☆ガールズはマジでその極北です。いちおう企画上はけいおん!!みたいなのがベースと思われます。しかし観ればわかるのですが制作陣は美少女を描くことをまったく目的にしていないです。ここ日常アニメを求める観客が脱落していってる感じあったとおもいます。美少女という客層が求めるモチーフを使いながら、制作側が最もやりたいのは

 

 では作画ファンなら…と思いましたが、どうもその線でも黙殺されている感はあります。こちらもあまりぼくはこうした作品こそ作画ブログを標榜するタイプが積極的にとりあげるのかなあと思っていましたが、ざっと検索したところ意外に取り上げられていません。

 

 ぼくは作画について書いてるブログでGOMISTATIONさんを読ませていただいているのですが、やっぱ取り扱って無かったので読んでみたかったです。この作品ならではのアブストラクトな爆発やエフェクトは、手描きとデジタルを組み合わせることならではの面白さに満ちている作画だったと思います。「爆風をアニメレベルでリアリスティックに描く」ではなくて、「どうせリアリスティックなものを追うより、手描きとデジタルのエフェクトならではの現実にありえない爆風を追及した方が面白いっしょ」といいますか。

 

 ストーリーもコンセプトも、まず猛者だとか地方がとか書いてありますが、一切としてそうした内容を描くことも目的になってはいません。おそらく便宜的なものです。ここで物語として、世界観を考察して楽しみたい観客も脱落します。

 

  

 ではこの作品のなにが優れているのかというと、日本のアニメマンガ特有の表現・モチーフ、そしてアニメートに至るまでの全てを高いアート&デザイン視座で再構成しつくし、1クール描き切ったことにあります。ふつう短編で完結する試みだし、実際日本アニメ(ーター)見本市はそういう面で素晴らしいのですが、ローリングガールズがヤバいのは長編の連続アニメーションでそれをやったことです。

 

 美少女・メカ・ロボ・バンド・日本・オタク・サブカル・地方・戦隊もの…あらゆる日本特有のガジェットをフラットに並べ、再構成しています。さらには搭載されているアニメートも宮崎駿的なリアリズムから、時にクレヨンしんちゃんばりのリミテッドぶりな感じなどなど、多種多彩です。

 

 この作品をもっとわかりやすくすると「あらゆる超人が集った世界」という世界観とあらすじに仕上げた「コンクリート・レボルティオ」になります。ですが、アニメートやデザインの切れは悪いです。

 

 しかしこの作品がカルト的に再評価されることも、UHFアニメのカルトヒットというものの代表が「キルミーベイベー」という現実を見る限りなさそうです。凄まじい作品なのですが、逆に一切として客が食いつける点がないのです。

 

 2015年は年度を代表する作品が見当たらない…との意見があります。でも水面下で商業アニメーションのデザインのレベルは変わってきていると思われ、いくつかのオリジナル作品にその傾向がよく現れていたと思います。その中でも「おそ松さん」は多分一番企画的に成功させたのだと思います。

 

 日本の商業アニメーションで、もっとも退屈なストーリーで、もっとも素晴らしいデザインを持った最高の作品です。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。