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17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

今季のアニメーションの1話だけを観て今のモード(形態の流行)を全て決める最悪のアニメレビュー

ブラックジャック先生が見たらマジで消したくなる過去「ヤング・ブラックジャック」

2015年秋のモード(復活編)
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ヤング・ブラックジャック 視聴12分

 

 また一つ現れました。瞬間的に熱しすぐさまに忘れ去られ、次なる瞬間に繋げる礎…ってしかし、今季冒頭にも同じこと言っておいてなんですが、本当に過去作品のリメイクや再解釈が多いですね…

 

 ぼくが思うに再解釈再デザイン最大の敵は、安易なクリンナップされた絵作りそのものです。前回の「ルパン三世」のTVスペシャル版がデジタル製作時代の2000年代いかにして原作から全盛期アニメ版のラフさ、猥雑さ、躍動その全てが掻き消えていったのかを考えると、70年代原作作品がこの腐れクリンナップデザインになることが決して得な感じがせず、おしなべてそのパワーを削がれる様を観ることになります。

 

 といいつつ、ヤングブラックジャックは原点の暗黒部分を別の方向に落ち着けてる印象です。ですがそれはトホホでありまして…

 

 原点のブラックジャックはハードボイルドの探偵や殺し屋が主人公の映画や小説の文法をなんと医療ネタに転用したことが異質な漫画です。免許を持たない主人公BJはやはり数々のハードボイルド映画や小説の主人公のごとく、謎の多い孤独な人物なのです。

 

 社会や時代の暗部に関わりながら、同時に遠く見つめる探偵や殺し屋主人公のハードボイルドを今の商業アニメ(そしてヤンチャンの漫画)が解釈した場合どうなるのでしょうか?ハードボイルドやノワールのムードというのは80年代に入った頃にはほとんど霧散していった印象で(印象ね。ここ適当でごめん)、特に日本商業アニメではほぼ最悪の解釈しか導き出せないそれです。

 

 ラフさや猥雑さといったノイズを消すことに注力する、クリンナップされた清潔な画面。そんなの、ハードボイルドやノワールが対峙するリアリズムと真逆だ…にもかかわらずハードボイルドやノワール的な題材を取り扱った際、導き出されるものとは!?

 

 OPでヤングブラックジャック先生は意味も無く脱ぎ、鎖に縛られる。医療は?一体なにをしているのでしょうか?学費を稼ぐために三島由紀夫のところにでも行ったと言うことでしょうか?

 本編がはじまったかと思えば、学生運動を後目にヤングブラックジャック先生は一人で勉強をしている。ほうほうハードボイルドだ…とそこで大事故が起き、ヒロインが「すこしでも助けがほしいの!」と駆け寄る。が、先生は両手を中空に浮かせて何かを一人で行い、「完了だ…」と呟く。なにしてんだ?エア手術でした。

 

 大事故に巻き込まれ、手足が切断された子供。両親は「なんとかつなげられないか…」と泣いて頼む。現場を取り仕切る院長は「命とどちらが大事なんだ!」という。混乱した現場の中でそれはやむなき判断。が…そこでヤングブラックジャック先生がしゃしゃり出てきます。切り離された手足を前に、今度はイメージトレーニング手術。そして…「繋げられる!」おい待てよ!それよりお前衛生状態どうかしてる素手で切り離された手足取り扱うなって!

 

 なんでかなし崩し的にヤク中の知り合いの病院に瀕死の子供のはずなのにダッシュで滑車を動かして移動。ヒロインはどう考えても繋げるのは無茶と不安になり、院長の提言を無視したヤング先生の行動に視聴者のぼくは子供の命が明らかに危険区域に入ったと不安になります。その時先生は…服を脱ぎ上半身裸になり、体中の傷をヒロインに見せつけます。そして言います。「俺自身が…繋げられた実例…だから可能性がないなど…言うな…」視聴者のぼくは子供の命が明らかに危険区域に入ったと不安になるしかありませんでした。

 

 そう、猥雑や歪みを消し去るクリンナップされたデザインによる、猥雑や歪みと対峙するはずのハードボイルドやノワールの解釈それは…無敵感にあふれた中二病でした…それは往年のハードボイルドの主人公に頬を張られる役どころのはず…それが主人公…意味も無く脱ぐブラックジャック先生…これが原作BJの若かりし頃って、ただの暗黒の過去じゃないですか。これが17・5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード、キーボードを打つローマ字入力親指シフトを殺す気がした。

 

 どうでしょうか?70年代にあった躍動や歪みといったものが現代のクリンナップされた視点によって全て封じられ、中二病と謎の耽美にされるという再解釈は。いや、そんなもんじゃないかもしれませんね。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、次回にお会いしましょう。

 

 

 

写真集 三島由紀夫 '25~'70 (新潮文庫)

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