17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

日本の巨匠が運営するアニメ・ストアに行く

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  ひっそり注目のアニメーション作家の原画展がやってるというのでいつか行こうと思ってたアニメストア「Au Praxinoscope」へと行ってきました。

 プラクシノスコープと初期のアニメーションの機械の名を冠するここは、「バベルの本」「頭山」「マイブリッジの糸」を作り上げた日本のアート・インディペンデントアニメーションの代表である山村浩二が運営しているアニメーションストア&ギャラリーです。そこで凄まじいアニメートを発揮する作家・ジョルジュ・ジュヴィッツゲベル展を見に行ったのでした。

 

 アート・インディペンデントアニメーションはぼくが思うにアニメというジャンルにて映像史的にも美術史的にも双方に踏み込んだ領域を掘り下げ続けてるところなのだと見てますが、なかなか映画の上映企画だとか、美術館の企画展という形で映画とも美術ともやや違うアニメという表現の立ち位置そのものを大きく取り上げるケースはあまり多くはないように思います。…いやいや、知ったかぶりのぼくがわかってないだけかもしれません。

 

 ともかく、山村浩二は日本でアート・インディペンデントアニメーションの表現や本質を掘り下げる仕事を行い続ける一方で、世界のアニメーション作家の紹介を日本にて行っています。ブログなどで紹介を行う他、もう更新を停止してしまいましたがアニメーションのクリエイター紹介&批評・評論のサイトを作るなどアート・インディペンデントアニメというジャンルの価値を確立させていこうとする仕事を多数行っています。

 

Au Praxinoscope」もそうした氏のこのジャンルの価値の確立の一つなのだと捉えているのですが、その場所はどこか作家のイメージに近いとさえ感じるところで運営されていました。

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 「Au Praxinoscope」は街の大通りでオシャレなもの、アートなもの、ましてやサブカルチャーとして、みたいに目立つようなショップではなく、自由が丘の閑静な住宅が立ち並ぶ中に溶け込むように運営されています。ぼくが行った限りでは、駅から歩いて向かう中ですれ違う人々は殆どどんな住宅街にもいるような人々とも変わらない、帰宅途中のサラリーマンであるとか、買い物へ向かう人であるとか、まるで日常生活の延長のようです。

 

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 建物の前にはフェナキスティスコープをあしらった看板、店内に入るといきなり目にするのは原語版でのウィンザー・マッケイの仕事をまとめた書籍があり、店員さんはトレース台を使ってアニメーションを一枚一枚描いています。ポップには「2014年はノーマン・マクラレン生誕100周年」と飾られています。当然のことなのですが、あまりにも濃密なアニメーション史の正史ぶりが眼前にあることに少々驚きながら簡単な立ち読みをしたりしていたのでした。

 

 

 店内の書籍やDVDはそのほとんどが英語・原語そのままの洋書が揃っており、それをやはり世界的なものを取り扱う本拠地ゆえの充実だと思う一方で、なかなかアート・インディペンデントアニメ界隈に関して作家ごとに翻訳はされにくいものなのかな、日本はアニメ漫画大国と言われる一方、漫画でもまだ全然日本で翻訳されてこないヨーロッパの作家の作品とかおおいよな、アニメもそうなのかなだなんて思ったりしたのでした。

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 またギャラリー内では山村浩二が担当したNHKアニメ「パクシ」のキャラクターの大きなフィギュアがあったり、来場者がゾートロープを使って自分で簡単なアニメーションを作れるという企画が行われています。

 

  とても静かな場所で、金曜日と土曜日という週2日だけ運営されているお店。しかしぼくが観た中ではとてつもなくアニメーション史の正史と言える文脈を踏まえた品ぞろえであるし、そして世界的な作家の特集を行っているのです。

 

 ということで次回はいよいよ山村浩二作品、そしてここで観てきたジョルジュ・シュヴィッツゲベルの書き散らしになるでしょう。読んだ書き散らしは忘れましょう。でもインスタグラムあたりで当たり前にある謎のセピア調アート風味写真の氾濫はそのままに、次回にお会いしましょう。