様々なアニメが日本にはあります。全体としてはどこかしら客層に合わせて形式的に見えますが、その映像・演出や構成の中に様々なデザインの傾向が出ていると思われます。そんな膨大にリリースされるアニメの中で、特に目立っているデザインの傾向を簡単に区分けした場合どんな傾向に分けられるのか?の実験的メモです。なにやら勝手な横文字使ってここまでやってたので、そのまとめのようなものです。
現行のアニメシーンは大きく適当に分けて8つの傾向でデザイン競い合ってると見ております。
コンテンポラリー(京都アニメーションなど)
現在の14ー21歳のガキの主人公たちの視点を掘り下げていけば、ジャンルがハーレムだろうとロボットだろうと魔法だろうとその多くは(かっこわるい標記だろうが)青春の光と影やガキの頃にしかない日常の情景のささやかな永遠がポイントであるかに見えます。それを脚本以上に映像やキャラデザなど総合したデザインで表現していく現代派デザインです。
キャラクターと背景のバランスを合わせたレイアウトはもちろん、動画も滑らかで空間を感じさせる立体的な演出は当然ながら、その上にハンディカメラ的な画面の揺れやピンボケによるドキュメンタリーのような映像で生の現場の空気感を持たせる。というか、中高生の持つスマホカメラ越しのような感覚でありきたりの日常や青春の感覚を映像に刻印するスタンスが印象深いです。
原作などがあったとしても迷わず今一番デザインの本質ポイントを突き詰めるためにキャラデザインや演出の改変、というか上位互換化などなどをやってると見ます。
「氷菓」や「たまこラブストーリー」あたりは現行のシーンの客層・それに対しての先進性・基礎能力ともに高レベルなデザインを行っていると見ています。
コンサバティブ(A-1ピクチャーズ、JCスタッフなど)
日本アニメ市場の源泉であるラノベゲームマンガシーンの客層を決して刺激せず、常に客層が引かないようなデザインを心掛ける保守派。常にオシャレになり過ぎないように、ジャンルアニメから離れすぎる演出もしすぎないようにする。だからといって古すぎても行けない。客層が食いやすいラインをいかに超えないようにしながら洗練させるか?という戦いをやってる印象です。
当然、原作があったとしたらまずはその再現に力を注ぎ、デザインや演出を改変せず原作の持っているテイストは堅持して客層の機嫌を損ねないようにしながら同時にダサくなりすぎてもいけない、ちょっとダサいように作る感じです。
ドッカンとヒットするのはどうしても何らかの先鋭性のある京アニやシャフトのようなスタジオになっちゃうけど、しかし客層のレベルから常につかず離れずというのもそれはそれですごい気を使っていると思われます。
アクティブ(トリガー・小池健)
キャラクターの面白さやアクションの躍動を主にトータルデザインを行うスタイル。いま作画バリバリでテンポいい展開でワンシーズンアクションばっか描くとこはなかなか難しいですが、トリガーなどはそうした快楽に忠実なスタジオと思います。ガキの青春の光と影の情感に頼らないスタイルなので観ていて楽しいスタイルであると思われます。
また「REDLINE」や最新作「次元大介の墓標」の小池健作品もこうした区分にぼくは勝手に入れております。アニメの前陣速攻でアクションする演出の強さから、アメコミスタイルだったり過去のリバイバルを行ったりするスタイルです。
アドバンスド(プロダクションIG STUDIO4℃ 大友克洋あたり)
実写映画的な画面作りやコンテ構成やデザインのほか、早い段階で3DCGとミックスさせるなど新技術導入を活発・発展させながらトータルデザインを行う技術派デザインです。そうした技術導入や研究スタンスもあってか、SFや未来世界の無機質さ、をテーマにした作品をやるととても映えます。
ストーリーやキャラクターによって導き出されるデザインというより、なによりまず技術が先にあるスタイルで感情移入や没入を呼びにくい弱点ある気がします。80年代から00年代ではアニメに技術導入を進めることとと、進歩する映像の面白さが足並み揃えてた感じありましたが、デジタル製作が当たり前になった近年では周りも当然のように実写的技術や3D導入しているおかげで、古くからこのスタンスであったところは映像デザインに新しさが見えにくくなっている感じはあります。
エレガント(新海誠)
アニメの動く快感は無論だが、人物や背景それぞれの情景の描写を突き詰め、美的な画面や動画の情感をポイントにしたスタイル。アクティブの対称として区分けしてみましたが、今のところは新海誠くらいしか思いつきませんでした。
新海誠作品はそのフィルモグラフィがそれを表しているかのように、当初ロボやSFのようなジャンルアニメからそれを表現していたが、徐々にジャンルアニメの頸木は外れ「言の葉の庭」から企業CMに至るまでに日常情景デザインを発揮している一人と思われます。
アヴァンギャルド(湯浅政明・中村健治)
ラノベアニメゲームシーンで主となっているラインから外れる映像構成やキャラデザインを取る。コンサバティブのスタンスと真逆な革新派。オタクに対してのサブカル。秋葉原に対する中野。原色の効いた画面構成や実写や写真の取り込みといった他メディアのミックス、生の描線のままでアニメを成立させることなどを行います。
詳しくは過去に記事をまとめましたが、ジャンルアニメからも離れることが多いため、評価が限定的になりやすい一方でジャンルから解き放たれた自由な絵作りの面白さがあります。映像とともにある音楽という面でも非常にレベル高いことが少なくなく、根源的な面白さに接触してることも多いです。
ミニマリズム(シャフト・新房昭之 幾原邦彦)
作画枚数を少なくし、バンクの使い回しやデザイン的な背景美術やカットなどによって演出していく最少表現スタイル。
演出の独自性を抱えたまま量産を可能にする一方、作品によってはコンセプトが合わなかったり、単純に動画が少なくアニメの快楽があまりにも少ないゆえにデザインに味わいが無かったりするが、もともとがコンセプチャルなスタイルゆえコンセプチャルな原作と一致した時には前衛演劇的な凄まじい意味を発する。こうしたスタンスゆえに謎の的外れ考察を呼び寄せやすかったりします。
エスタブリッシュド(ジブリ、貞本義行)
時代がどれだけ変わろうがもはやトレンドの影響を受けない強固なデザイン。深夜アニメシーンを超え、さらに広い一般に向けた劇場化の成功によって強固なデザインとして確定していく。宮崎駿のデザインは無論のこと、近年ではエヴァはもとより細田守作品で主にキャラデザインを務める貞本義行のデザインはトレンドの波に飲まれにくいレベルに上がっているように映ります。
無論映画化してヒットしてるから絵柄が古くならないという結果論のレベルではなく、堅牢なデザイン能力ゆえです。やっぱキャラクターデザインの方針で客層を相当限定していくというのはあり、広い世代にリーチするバランスがあると見てます。
京アニは多分けいおん!-氷菓、たまラブで完成したスタイルでこうなりたいんだと見えてますが、まだシフトは上手くいかずトレンドに引っ張られる形になってるかに見えます。(まじめに劇場化&世間一般レベルに持っていくならたまラブからさらに一段進歩した絵柄に変貌すると思われます。多分顔のデザインあたりかな・・・京アニはあと一回変身を残している!)
ということでこんな感じの区分けで流し見しております
今のアニメデザインが切磋琢磨してるサイドを眺め、デザインの傾向を簡単に分けるとこんな感じに映ります。まあぼくの気分でばらつきますし、明確な定義や厳密な区分(単純に言っても監督とキャラクターデザイナーを一緒にしてるとか色々)はさっぱりできてないし適当書いていることは申し訳ありません。指摘あればゆっくり直していくかもしれません。文句あればまっすぐに殴り返すかもしれません。キャラクターデザイン傾向編もやるかもしれません。
さらに細かい区分に少年漫画カジュアルだとか少女マンガトラディショナル、リバイバルやリミックスだとかおもいついたんですが、どうあれ適当なのは否定できず、今後も9個や10個くらい細かくするかもわかりません。読んだ区分は忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、来季でお会いしましょう。
あっ、そうだ。ぼくは脚本芸術は丸捨てしてほぼ映像とデザイン、そしてコンセプトしか観てないんですが、どなたか今のアニメシーンの作劇や脚本面を区分けして語ってみていただけないでしょうか?
続編エントリ:キャラクターデザイン版
ラブライブの絵柄の変化の流れでわかるアニメキャラクターデザイン7つの傾向と、絵柄のトレンドの変化や関係
キャラクターデザインの傾向と、それらが影響し合うことで生まれる流行り廃りのトレンドは、いかにして出来上がるのでしょうか?
絵柄の変化の歴史から現在のアニメのキャラクターデザインを一望する無茶をやってみましたが、当然ながら暫定7つはそれぞれ独立してるわけでなくそれぞれが影響を乱反射するように与え合って変化していると見ます。
そうした様々な傾向のせめぎ合いの中でトレンドになる絵柄が形成され、流行の絵柄と廃れる絵柄が出ていると思われます。
最近のファッションとアニメは意外に接近しあってるのか? 服飾で見通すアニメデザイン3つ書き散らし
ファッションとアニメネタ。なにかとファンレベルでは荒れやすい話題のようですが、 ここのところのデザインネタを書き散らしながら思うことは一見離れ小島であり交わることのないだろう二つのジャンル、意外にファッションとアニメネタが奇妙に近寄っている感じがあります。
それはさりげなくアニメのキャラデザから映像の変貌まで意外と無関係ではなさそうな、アニメとファッションのデザイン関係の書き散らしです。
- 作者: オブスキュアインク,野澤真梨子,モタ,名和田耕平デザイン事務所[デザイン]
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