17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

カナダのアニメーションデュオ、ウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービスのデザイン

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 When the Day Breaks  視聴フル

 

 カナダに National Film Board of Canada (以下NFB)という同国でのアカデミー賞であり、デジタルフィルムのディストリビューターとなっている機関がある。そこではyoutubeの公式チャンネルにて短編のフィルムやアニメーションでアワードを獲った作品を配信している。

 

 今回取り上げるのはそこのアニメーション部門で評価され、多彩なレイヤーによって構築されてる作品作ってるウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービスという二人組による作品。これは日本で「ピンポン」「マインド・ゲーム」「ケモノヅメ」などの湯浅作品などに触れているなら実は近いものがある作風となっており面白いアニメになっている。

 

 

  

 ブタの婦人と不思議な鶏の男の生活とその風景を描いたアニメ。ラフで生きた描線を駆使して、ブラックな絵本のような作風ではあるが基本的には実写映像をまず下敷きにして、その上から線を書いて絵にしたり彩色を行ったアニメートを行っている。こうした実写映像や写真を下敷きにしてその上から生々しい絵具の塗りや描線の生きた部分を含めると言う手法、(おそらくはアニメーション史的に)ロトスコープ技術の変形で実写的な正確さをこうして担保したうえで、絵の生々しい実感を乗せていくって構図だ。リアリティというルールをきっちり知ったうえでデフォルメ、自由さってのが際立つ。

 

 これは日本の湯浅政明作品などでは「マインドゲーム」などが実写の背景をそのまんま色調変化で乗せるとか、実写の今田耕司の顔をそのまま使うなどなどの手法に影響ある気がする(本作から直接じゃなくて、こうしたコマーシャルからインディペンデントのアニメの流れとして)。

 

 When the Day Breaksはそうした結果、ストーリー以上にアニメートの勢いや生々しさそのものをドライブさせていく方向性に向かっていてそれがいい。もうアニメートの流れの勢いを生かし続けるあまり水道の中を通り過ぎたり、異なるイメージがバラバラに挿入されてたりのそれが心地いい。湯浅作品なんかももうストーリーやキャラクター、脚本ってのを超えて映像やアニメートの流れのグルーヴで進めるタイプなので、とくにインディペンデントアニメの場合はまず短編でそうしたこういう方向性にクリエイティヴィティの影響があるのかもしれない。

 

wild life 視聴フル

 

 イギリス生まれの若き青年がアメリカの牧場にて親からの送金で過ごしているのだが、その広大な土地の中でバドミントンやったりバードウォッチングをやったりの無為な日々を過ごす。こちらはナレーションによるストーリーテリングも含まれており、おそらくほぼアクリル絵具で構成されたアニメとなっており、ロトスコープ的なアプローチだったWhen the Day Breaksよりもイラストレーションそのものがアニメートしてる感じ。でも要所要所でロトスコープ的なカットもある。本作で2012年の短編アニメのアカデミー賞のベストを取ったという。

 

 

 そのほかには、多くのインディペンデントアニメーション作家が行っているように企業のコマーシャルのアニメを制作したり、イラストレーションの仕事を請け負ったりしていている。

 ウェンディ&アマンダはこうしたファインアートとしてのアニメ作りとコマーシャルアートとしてのアニメ作りを行う一方、やはり実績を残してきたインディペンデントアニメーション作家のようにアニメーション制作のワークショップを行ったり、それぞれ大学にてアニメを教えていたりもする。

 

ウェンディ・ティルビー&アマンダ・フォービスの公式サイト