17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

今初めて見たら「アイドルがロボットとアーティストを駆逐する」未来を予言していてしみじみな「マクロスフロンティア」レビュー

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 こんなブログ始めたのついでに今更ながら気を良くして借りて観てみたんですが、これモードって意味のみで見たらぶっちぎりでよく出来てますね。セックス分は突き詰めていってアイドルで戦争は戦闘機からミリタリーで、という必勝の構図を早い段階で作り上げていた「マクロス」ってよく考えたら「ガンダム」などのように必要以上に意味や革新、同時にまったく逆の保守性までも期待されがち(な気が外野席からではしています)なロボットアニメのシリーズの中では日本アニメのモードに最も合わせた作品のような気がします。そう早い段階で割り切っているゆえなのか、ほかと比べて意外に大人びてる完成度のように思えます。

 

 

 まともに戦記部分うんぬんで見出すとコンセプトの時点から、シーンの瞬間の刺激優先の出たとこ勝負で全体の流れ丸投げ気味の脚本などどうしようもなくなるので、完全に意味を排してモードという側面だけで本作を見ているとこれが素晴らしいバランスです。

 

 異常なまでに優れている部分・そして異様なくらいダサい部分の配分によるオシャレ過ぎてファンが引かないようにするのはさることながら、の男の子も女の子もすげえ無邪気なポルノ傾向になってる今のトレンドと比較して主人公たちのデザインや、人間関係を主体としたドラマの進行を見るに年齢水準がやや高めにしてあり、不思議に高級感を感じてしまいました。

 

 その高級感というのもやっぱシェリル・ノームのデザインと3Dアニメミックスでの凄まじい空間表現でのドッグファイトと、そして膨大な楽曲に合わせた歌と戦闘による、思想もメタファーも関係ない、音楽と映像で引っ張っていくアニメーションの根源的なパワーの強さによって生まれている気がします。(音楽とともに歩む動画はディズニーからのアニメの根源的魅力と思いますがどうでしょう)

 

 

  しかし現在トレンドをみるに、いまや音楽と映像がともに絡み合うことで発揮されるアニメの根源的なパワーは結局突き詰めていくと、楽曲とダンスの作画の良さを味わえるアイドルアニメにふりきった方が良くて、多くのロボットアニメはポルノにも振り切れなくて半端になっているという現状眺めていくと「マクロスF」はかなり異質な気もしますね。

 

 アイドルアニメ枠で観てるとシェリル・ノームのデザインの異質っぷりは際立っていて、モデルであるだろうのビルボードチャートのトップに居座るようなブリトニー・スピアーズ的なアーティスト系統のライブシーンが描かれるというのは冷静に考えればほぼ空前な気がしています。でもこれは他に自分がアーティスト傾向の女の子主人公のアニメを知らないだけかもしれません。

 

 しかしこのシェリルのトータルデザインが本作の独特の高級感を9割くらい持って行っているのは確かでしょう。ボケっと調べてたら当初アルトとランカとブレㇻの男二人と女の子一人の関係主体だったという話らしいですが、これマジなら本当に修正してよかったでしょう。ブレㇻのデザインのダメぶりは本作中屈指でヤバいです。

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 しかし皮肉なもんで、アニメ界隈で珍しいアーティストタイプのデザインを徹底したシェリルが途中、やや旧型のちょいダサデザインたるランカにバリバリのアイドル楽曲(松本隆まで作詞起用って)でストーリーライン上立場を奪われるというのも色々予見的だと感じ入ってしまいます。

 

 現実に日本のJPOPチャートを見ても、気が付けば90年代に大量に存在していたはずのカッコいいを売りにする女性アーティストの流れがストップしており、なんと安室奈美恵などをトップとするエイベックス系統も期待の新人だったはずのガールズネクストドアが解散し、浜崎あゆみも衰退傾向。宇多田ヒカルまで活動休止みたいになっていて、代わりに戦国時代だなんて言われるほどのちょいダサいの配分をどれも堅持してるAKBやももクロなどのアイドルブームが話題になっています。an・anまで特集なんかやったりして、気が付きゃ女の子が憧れてたモデルだろうアーティスト傾向の人たちはどうしてしまったんでしょうか?

 

 それはアニメの楽曲を声優が実際にライブで行っていくということさえ飲み込み、アニメの方でも多分格好いいジャンルの大ネタだろうロボットネタが衰退するのに反してアイドルネタが波及していきました。

 

 ただの偶然ですが、なぜなのかアイドルアニメ流れの背景にやけにロボットSFアニメネタが絡んでるケースを割に見かけます。本作「マクロス」シリーズはともかく、なぜかアイドルマスター最初のアニメ化はロボット物だとか、同マクロス河森監督がAKBのアニメ化やってたりと奇怪に絡んでいます。ロボットネタがその戦闘の映像など日本アニメの動画の魅力を引っ張っていたとも思いますが、アイドルネタの実際のライブから単純な音楽と映像がともにあるアニメの根本的な面白さまでフォローする流れは凄まじく、メディアミックス力から実際のアニメの質的にもかなりのものになっています。

 

 そういうふうに完全にアイドルネタが蹂躙し、カッコいいの大ネタだったはずのものが衰退傾向にある今「マクロスF」を見るとトレンド変貌の過渡期が極めて美しく描かれているかのようです。え~っとこれ、2008年の作品なんですか?!いやあ本当にこのあたりを境にカッコいいの大ネタジャンルはやられちゃって、アイドルネタに加速がついて言った気がしますね・・・

 

 今から振り返ると作品の最大の対立だろうシェリル(衰退しつつあるアーティストサイド)とランカ(覆いつくしつつあるアイドルネタ)との拮抗に見られるトレンド変貌の闘いが実際アイドルネタがアーティスト(そしてロボットネタさえ)を上回る現実とシンクロして見えるのが特にスリリングにでした。

 

 

 今にあわせるんだったらレディ・ガガジャスティン・ビーバーをモデルにするでしょうか?アバンギャルドが過ぎて自らが変形するアーティストのヒロイン!10代から有名になり過ぎ実質ネットやら含め衆人監視でイラつくシンガーのヒーロー!「マクロス」の構造にこれ放り込むだけでも面白くなりそうですがどうでしょう。観たアニメは忘れましょう。でも培った技術とモードはそのままに、来季でお会いしましょう。