17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード

葛西祝によるアニメーションについてのテキスト

大真面目にアニメを作ると、なぜか他人との距離の話になる

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新作アニメと言えば人気漫画のアニメ化!ラノベのアニメ化!それどころか過去の名作の再アニメ化!ふざけるなよ!アニメ業界の志はどうした!もういい!オレが本物のオリジナルアニメを作る!膠着した時代を…闇に光を差し込むように…切り開く!

か、どうかはわかりませんが、『月がきれい』は気合入りすぎ。入り過ぎているがゆえに、いま商業アニメを大真面目につくることの限界を示しています。

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アニメで町おこし!オタクを聖地巡礼させ金を稼ぐ!という地獄への皮肉

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サクラクエスト 視聴フル

 

オタクの定義とはなんでしょうか?少なくともぼくはシンプルに一言こう思っています。❝一般消費者が持っている属性を100倍にしたもの❞以上です。いろいろ定義について語られてきましたが、今現在はそれ以上でも以下でもないと思います。

さて、ふってわいたアニメ・ゲームの聖地巡礼による特需を狙い、地方ではアニメで町おこしを狙うのは漠然としている一般消費者という存在を100倍にして可視化されている存在を狙いたいからに他ならないのでしょうが、ガルパンで成功した茨城県の大洗のようなケースは実際にはまれです。水面下では地獄が広がっているのです。

 

サクラクエスト』の木春由乃ちゃんがろくに内定をもらえないなか、ふってわいた仕事が地方から。このメインストーリーは「ああ、これはアニメで町おこし!という水面下の地獄への、入り組んだ皮肉なのかもな」と思わせるのでした。

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男が男の髪を触るハードルが極端に低い恐怖

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スタミュ(第2期)

 

 恐怖である……好きな人へのスキンシップに髪を触る、頭をぽんぽんするということを「相手からを行為を引き出す」と思い込んで実行してしまっている人間はまだいるのだろうか……髪に触れるだけで静電気が走って好意の街頭がともったり、花火が発射するスイッチのように頭をぽんぽんすると好意が空に舞い上がってくれると信じている人間はまだいるのだろうか。他人との距離間が壊れていることは、おおよそ最悪な結果をもたらすのです。

 「スタミュ」は男が男の髪を触るハードルが極端に低い、他人との距離間が壊れている恐怖の連続です。距離間が壊れたコミュニケーション。目がうっすらと死んだオーラ。そしてなにより、主人公5人があつまったカットで❝キュピーン❞というSEとともに引いていくカットを前に、ぼくは「ここは時間までも壊れてしまったんだ」と呟きました。暗闇の中、デスクトップの光だけがともる部屋の中で。

 キュピーンという集合カットはぼくの意識を20年だか30年だか前に持っていきました。頭をぽんぽんするとか髪を触るとかのハードルの低い世界…それは少女マンガがさきなんだろうか。「さあゲームの始まりです」「キャハハと笑う三白眼の悪人」のルーツとともに、どこにあるのだろう……

 

 もしかしたら、主演の5人の中にヒロインとなる女の子がいる「うたプリ」みたいなやつだとまた違うんだろうか。男の子だけしかいない世界観や女の子だけしかいない世界観でしかみ作り手側に単純に力が足りてない(表情のアニメートが硬い)とき、他人との距離間が壊れた狂気の楽園が出来上がります。でも女の子がいるだけでなにか他人との距離間が調性されるというのはあるかもしれません。ぼくは、距離間が壊れたまま唐突に踊り出す男の子たちを見ながらこの惑星の未来を案じていました。観たアニメは忘れましょう。それから培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。

 

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 

 

 

ソシャゲの世界観とは金のない人間たちの見る気が狂った世界である

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グランブルーファンタジー 視聴した

 

 そう、どう考えても気が狂っているということを自覚するべきだと思います。まっとふな統一されたルール、整合性のない世界というのは狂気以外の何物でもないのです。なんの話かって?PCで見ているならDMMあたりのブラウザゲーム、もしくはスマートホホンならApple storeGoogle playソーシャルゲームを、とりあえず目についたものを観てみてください。観飽きていても、あらためて。

 低予算で作るために膨大なイラストレーターがたとえばこの戦艦をモデルにキャラを作ってみてくれ、この刀をモデルにキャラを作ってみてくれとかおのおのの作風に投げっぱなしにするのが当たり前です。テレビアニメのように作品世界や画風を統一する作画監督の存在がない。その結果どうなっているでしょうか?

 キャラごとに世界観はバラバラ。トータルで見れば広い世界観の整合性を放棄したガラクタの世界です。基本無料がもたらす世界というのは、キャラ単体で見ればそれでいいがトータルでみればほんとうにガラクタなんです。金を出すことを惜しんだ時代が作り出したスラム、それがほとんどのソーシャルゲームの(ゲーム部分を度外視した)作品内の世界観です。

 ある作品を観るとして、金を最初から例えば何千円か、いや何百円でもいいです。前金を支払ってから触れるということは、観客はその作品になんらかの統一された世界や、作家性といったものが保証されているのを期待しているからですよね。ところが基本無料の世界に近づくにつれ、そんなものはないウェイストランドになるのです。

 それよりも、あらかじめ金を支払わないスカベンジャーまみれのでは世界観の統一や作家性はむしろ邪魔であり、ガラクタであることの方がウケるのです。ガラクタならば隙ができる。隙があるからオモチャにできる。ガラクタだと思っていじっていたら、むしろ全然使えることが途中でわかる。それどころか予想以上だとしたら大儲けではないでしょうか。

 そんななか『グランブルーファンタジー』はソシャゲ特有のキャラクターデザインの統一の無い、世界観がキャラごとに分裂していると言っていい気の狂いから脱した作品です。事実、アニメだけみると大作RPGの忠実な映像化といっていい、作品世界がかなりのレベルで保障された世界です。(ただ回を追うにつれ気の狂う可能性は、いつも脚本にありますけど。)Cygamesのアニメは『神撃のバハムート』の続編も今季用意しており、狂気のスラム街であるソシャゲのなかでも唯一作品内の世界観が統一されていることが保証された作品をリリースしていることで気を吐いています。

 しかし一方、この完成度の高さには隙がまったくない。スカベンジャーが略奪を行うにはドアにも窓にも固い施錠がほどこされている。スカベンジャーがこれをガラクタとしてしゃぶりつくり、他の仲間に号令をかけることはないのです。

 去年はあらかじめ金を支払い、確かな世界観と作家性を見ることのできる劇場版の長編大作が話題になりました。いっぽう、あらかじめ無料である深夜アニメの世界はというと…観たアニメは忘れましょう。それから培った技術とモードも投げ捨てて、次回にお会いしましょう。

 

 

 

 

GRANBLUE FANTASY グランブルーファンタジー GRAPHIC ARCHIVE III

GRANBLUE FANTASY グランブルーファンタジー GRAPHIC ARCHIVE III

 

 

ディズニー、欧米から離れた舞台だと弱体化する説『モアナと伝説の海』レビュー

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 『モアナと伝説の海』は2010年の『塔の上のラプンツェル』から続く、3Dアニメーションルネサンスを迎えていると言っていいディズニーの中では、脚本の質が低いのが気にかかります。それはキャラクターの造形やコンセプトといったレベルまで含めた意味の脚本なんですが。

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劇場版でもアートでもなく、深夜アニメでしかできないデザインは何か?を実現したアニメベスト5

 ここの書き散らしもなんと3年になりますとのメールがはてなより届きました。第一回は正直ほんと偏見だけのひどいもんだったんですけども、まあちゃんと(10分以内だけで評価するくそ仕様はかわってないですけど)各シーズンを見ていきますと気づきは多かったですね。

  これを機にクラシックからアートアニメーション、アメリカのリミテッドアニメなども併走しつつ、深夜アニメを見てました。アカデミズムからサブカルチャー、アートからコマーシャルまで、広い範囲でアニメーションの表現がありますが、それらと比較して国内の深夜アニメだけが特化してる部分はあると思います。

 今回はその意味で、ここ3年間でもっとも優れていると思ったアニメベスト5です。先に書いとくと、エロとかバイオレンスとかバカ要素はちょびっとで「競女」とかまったくはいってないですすいません。

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